【特殊報】トマトキバガ 県内で初めて確認 高知県2023年7月18日
高知県病害虫防除所は、県内で未発生のトマトキバガを県内のほ場で初めて誘殺されたことを受けて、7月14日に令和5年度病害虫発生予察特殊報第2号を発令した。
トラップに誘殺された成虫(写真提供:高知県病害虫防除所)
6月19日、高知県中央部の施設トマトほ場の周辺に設置したトマトキバガ侵入調査トラップにおいて、トマトキバガ疑義成虫が誘殺された。その成虫について、農林水産省神戸植物防疫所に同定を依頼したところ、高知県では未発生のトマトキバガであることが確認された。なお、県内では5地点でトラップ調査を実施しているが、他の4地点では誘殺は確認されていない。また、現在のところ県内では農作物の被害は確認されていない。
幼虫と食葉被害(写真提供:高知県病害虫防除所)
同種は南アメリカ原産だが、2006年にスペインへの侵入が確認されて以降、ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、西アジア、アラビア半島、インド、ネパール、東南アジアに分布を拡大し、2021年までに台湾、中国、中央アジア諸国等の近隣地域でも発生が確認されている。国内では2021年10月に熊本県で初めて確認され、その後、計17道県で確認されている。
成虫は翅を閉じた静止時で体長5~7ミリ(前翅長5ミリ弱、開帳時約10ミリ)。頭部にはキバガの特徴である、牙状に発達した下唇髭が見られる。前翅は茶褐色の地色に黒色鱗粉が散在し、中央付近には3個程度の小黒斑紋があり、後翅は一様に淡黒褐色で、前翅後翅ともに細い。幼虫は終齢で約8ミリ、体色は淡緑色~淡赤白色で、頭部は淡褐色、前胸の背面後縁に狭い黒色横帯を有する。
生態は、1年に複数回の世代が発生し、繁殖力が高い。発生世代数は環境条件によって異なり、年に10~12世代発生する地域もある。卵~成虫になるまでの期間は24~38日程度で、気温が低い時期はさらに延びる。成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。雌は一生のうち平均で約260個の卵を寄生植物の葉の裏面などに産み付ける。幼虫は1齢~4齢までの生育ステージがあり、土中や葉の表面で蛹化する。
成虫は飛翔により自力で数キロメートル移動し、風に乗ってさらに長距離の移動も可能。また、海外ではトマトの苗や果実の移動に伴い分散することが報告されている。その他の寄主植物の苗の移動による分散も考えられる。
被害の特徴としては、トマト、ピーマン、ナス、タバコ、バレイショなどのナス科植物が主要な寄主植物だが、マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認されている。トマトでは、葉の内部に幼虫が潜り込んで食害し、葉肉内に孔道が形成され、食害部分は表面のみを残して薄皮状になり、白~褐変した外観。果実では、幼虫が穿孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に数ミリ程度の穿孔痕が生じるとともに食害部分の腐敗が生じ、果実品質が著しく低下する。
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇ほ場内をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
〇被害葉や被害果はほ場から持ち出し、野外に放置せずに土中深くに埋却するか、ビニル袋に入れて一定期間密閉し成幼虫を死滅させるなど、適切に処分する。
〇現在、トマトキバガに対する登録農薬は表1、2のとおり。また、植物防疫法第29条第1項に基づく措置として、表3~6に記載された農薬による防除を行うことができる。なお、薬剤防除にあたっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行う。
表4:ししとう(とうがらし類登録の農薬を含む)
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