高い温室効果ガス削減能力を有する根粒菌の謎を解明 農研機構2024年7月11日
農研機構は、東北大学と共同で、温室効果ガスである一酸化二窒素N2Oの発生を抑制する能力が高い根粒菌Bradyrhizobium ottawaenseは、N2OをN2に変換する遺伝子の発現が高いことを明らかにした。
根粒菌SG09株、ヘルパー微生物OFT2株を組み合わせたダイズ栽培モデル
N2Oは、二酸化炭素(CO2)の265倍の温室効果を持つ温室効果ガスとして知られている。人為的N2O発生量の約82%は農業生産起源とされており、過剰な化学肥料の使用や作物残さなどからのN2O発生が問題となっていまる。こうした状況から、N2Oの発生を抑制する農業技術開発が必要と考えられる。
ダイズなどのマメ科植物では、根粒菌が根に共生し、根粒とよばれるこぶを形成。根粒菌は根粒の内部で、大気中の窒素(N2)をアンモニア(NH3)に変換(窒素固定)し、マメ科植物に栄養分として供給する。
2020年に東北大学の研究グループが、N2OをN2に変換する能力を有する根粒菌Bradyrhizobium ottawaenseをイネ科植物であるソルガムの根から複数株単離していた。今回農研機構は、東北大学の研究グループと共同でそれらの根粒菌の性質を調べ、特に高いN2O変換能力を有するSG09株ではN2OをN2に変換する酵素遺伝子(nosZ遺伝子の発現量が高いことを明らかにした。
SG09株はダイズにも共生するため、SG09株が共生したダイズの根から発生するN2Oの量を調べたところ、従来の根粒菌が共生した根に比べ、N2O発生量が最大で約10分の1に減少していた。
さらに、SG09株と植物の生育を促進する微生物Pseudomonas属菌OFT2株(ヘルパー微生物)を一緒にダイズに接種すると、SG09株の窒素固定能力が約2倍に向上し、ダイズの生育量も増加した。
マメ科植物は、根粒菌が窒素固定したNH3を栄養とすることができるため、他の作物に比べると窒素肥料の投入量が少なくても生育できる。根粒菌SG09株とヘルパー微生物OFT2株の同時接種は、「窒素固定能力の向上に伴う窒素肥料のさらなる削減」が可能。さらに、老化した根粒の崩壊とともに土壌中に放出されるSG09株は、土壌中のN2OをN2に変換することで、「農耕地からのN2Oの発生削減」も可能にする。
窒素肥料の削減と温室効果ガスの削減は、持続可能なダイズ生産の仕組み作りに貢献する。
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