東京のど真ん中から米の新たな魅力発信 「YANMAR TOKYO」を訪ねて(2)2023年5月24日
ヤンマーホールディングスが、東京・八重洲にオープンした「YANMAR TOKYO」は、地下1階から2階が商業スペースとなり、ヤンマー直営を含めた5店舗が開業している。米の魅力と新たな可能性を発信しようと挑む各店舗ではどんな商品が取り扱われているのか。
生産者の思い伝える「ワインのようにお米を楽しむ」ボトル
KOME-SHIN(米心)で販売されている「RICE TERROIR」
「YANMAR TOKYO」1階に開業したのは、ヤンマー直営の「KOME-SHIN(米心)」。「ワインのようにお米を楽しむ」をコンセプトに、北海道から九州まで、各地のこだわりの米をワインボトルに詰めた「RICE TERROIR(ライステロワール)」が店頭に並ぶ。フランス語で「土地」を表す言葉から生まれた、テノワール。環境への配慮やこだわりの農法に取り組む農家を厳選し、お米マイスター の橋本儀兵衛氏に食味をしてもらって商品化した。
現在、約30種類を販売。パッケージには、産地名や品種はもちろん、生産者の名前や土地の特色、こだわりの農法が紹介されているのに加え、食感や粘りなど味わいの特徴も記されている。さらにボトルのラベルの色を、緑色(肥料・農薬を使わないお米)、黒色(有機質肥料を使用し、化学農薬を不使用)、金色(化学肥料・化学農薬を慣行の当地比50%以下で栽培)と3色に分けて紹介する。
紹介されている生産者の1つ、熊本県南阿蘇村の「O2Farm」は、草原や森林に囲まれた阿蘇の景観を生かした「ランドスケープ農業」に取り組む。世界農業遺産に認定された地域で、約20頭の牛を育てながら自家堆肥中心の有機肥料で栽培したコシヒカリを提供している。燃料もバイオディーゼルを使用する徹底ぶりだ。
夫とともに同農園を営む大津愛梨さんは「ワインボトルでの提供は生産者からは生まれにくい発想だと思います。日本の原風景を保ちたいという私たちの思いとすごくマッチする試みで、お米を通じて阿蘇のすばらしい景観を守りたいというメッセージが伝わればと思います」と話す。
ヤンマーの広報スタッフは「主にプレゼントとしての利用が多く、一時在庫がなくなる反響もありました。例えば同じコシヒカリでも味わいが違いますので、生産者のこだわりを感じていただきたいと思います」と話す。
若い女性に人気 日本酒とアイスクリームがマッチ
「SAKEICE Tokyo Shop」
「KOME-SHIN(米心)」の隣で開業したのは、「SAKEICE Tokyo Shop」。運営するのは、池袋でも「SAKEICE」店舗を営業する「株式会社えだまめ」。日本酒市場が縮小する中で、逆に市場が拡大するアイスクリームを掛け合わせて日本酒文化との新たな出会いを作ろうと事業を始めたという。
店頭には、男山などの日本酒を使ったカップアイス6種類に加えて、お酒が飲めない客のために米粉などを使ったノンアルコールアイスも並ぶ。客の8割は20代から30代の女性といい、日本酒とは馴染みが薄いとされる層に着実に浸透している。
お酒アイスのアルコール度数は4%程度。実際に試食してみると、食べ終えたあとに口の中にお酒の風味が残り、じわっと身体が温まる感覚があった。同社は「日本酒とアイスの掛け合わせは馴染みがないと感じる人が多いかもしれませんが、実際に食べると相性がいいと驚かれる客が多いです」と語る。
来店するたびに新しいお酒、酒蔵と出会えるようラインナップを考えたいという同社。今後の展開については、「アイスを通じた日本酒やお米文化の海外発信を強化していくことを目指しています。台湾、中国、フィリピンなどではテスト販売をスタートしており、他の国でも展開準備を進めています」と話している。
素材と手作りにこだわった海苔弁当
注文を受けて羽釜のご飯が詰められる「海苔弁 八重八」
東京駅から直結の地下通路前に開店したのが海苔弁当を提供する「海苔弁 八重八」。ヤンマーマルシェ直営で、お米を弁当の形でいかにおいしく食べてもらうかを考えて行き着いたのが「海苔弁当」だったという。
弁当は鶏の照り焼きを載せた「とり重」と鮭の柚子塩麹焼きを載せた「さけ重」、両方を載せた「八重」の3種類。素材から調理、提供の仕方までこだわりが詰まっている。
使用する米は、2階のレストランと同じ鳥取県日南町の特別栽培米で、羽釜でふっくら炊き上げる。海苔は愛知県三河湾産の「青混ぜ海苔」を使用、弁当箱を開けたときにふわっと海苔の香りが漂うのが特徴だ。鮭や磯辺揚げなども店内で調理され、時間帯によっては注文を受けてからご飯を弁当箱に詰める。
さらにご飯の中にも一工夫が。食べ進めると、昆布や梅干しなど4品が現れる。同店を運営するヤンマーマルシェのスタッフは「シンプルな海苔弁を食べながら、わくわくする楽しさも感じてほしいとお供をしのばせました」と語る。
店名の"八重八"は、米づくりには八十八の手間がかけられていることと、店を中心に人のつながりが広がってほしいとの願いを込めて命名されたという。同店スタッフは「東京駅界隈ではインバウンドの方も増えてお弁当を買って近くの広場で食べられる方もいます。コロッケの野菜を季節ごとに替えてリピーターの方に楽しんでいただいたり、自治体から要望があれば新しいお弁当づくりなども考えていきたいと思います」と話す。
東京駅直結の立地生かし観光需要取り込みも
「YANMAR TOKYO」の開業から4か月余り。同社は今後の事業展開について、「ヤンマーの情報発信だけでなく、いろんな企業や団体とコラボするなどして、積極的に米や農業の文化などを発信していくことが必要と考えています。日本の玄関口である東京駅直結の立地を生かし、インバウンド向けを含めた観光需要を取り込むコンテンツの企画を検討していきたいと考えています」と話している。
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