農機・資材 特集詳細

特集:土づくり

2014.10.01 
【特集・土づくり】高品質な農作物の生産は土づくりから一覧へ

JA全農肥料農薬部技術対策課
・水田の土づくりとその重要性
・水田の土づくりの方法
・畑地の土づくりとその重要性
・畑地の土づくりの方法

 最近は「温暖化」のためか異常高温や天候不順による日照不足など、水稲や野菜など農産物に大きな影響を与える異常気象が頻繁に起きている。そうしたなかで高品質な農産物を安定的に生産し供給するための方法がさまざまに工夫されている。しかし、その基本となるのは「土づくり」にあるといえる。
 しかし「土づくり」と一言でいっても土壌の化学性、物理性および生物性の診断から改良まで多岐にわたる。緊急度を求められる土壌改良から長期的な視点が必要な土づくりまで様々だが、その重要性はますます高まっている。そこで、水田や畑地における土づくりのポイントを、JA全農肥料農薬部技術対策課に解説していただいた。

【水田の土づくりとその重要性】

 平成22年は異常高温によってお米の品質が低下し、一等米比率は62%となりました。高温障害を防ぐために、品種を変える、作期をずらすなどの対策が行われていますが、「土づくり」はもっとも重要な対策の一つです。異常気象に強い丈夫な稲体を作るためには、それを支える根の健全な発達を促す必要があるからです。

 水田の土づくりのポイントは、
[1]作土深の確保、
[2]有機物施用、
[3]適正な土壌養分量です。

 

◆作土深の確保 稲体支える根量を

 水田に足を踏み入れると、「あれ?作土ってこんなに浅かったっけ?」と思われる方がいらっしゃるのではないでしょうか。作業効率を上げるため、耕うん作業を高速で行ったり、大型機械による締め付けで耕盤層(硬盤層)が発達し、作土深が浅くなっています。
 「地力増進基本指針」では作土深(有効土層)の目標は15cmとされていますが、それよりも浅い水田は多いと思われます。丈夫な稲体を支える十分な根量を確保するためにも、作土深を確保することは重要です。

 

◆有機物施用 土壌の地力の根源

稲ワラをすき込み、健全な土づくり 堆肥などの有機物の重要性は認識されている方が多いと思いますが、近くで堆肥が手に入らない、散布手段・時間がないなどの理由で、堆肥の施用量は年々、低下しています。その結果、土壌の有機物含量も低下しています。
 有機物は土壌の地力の根源です。水稲の吸収する窒素の半分以上は土壌の地力窒素に由来します。高温障害の原因の一つが生育後半の栄養不足(窒素切れ)といわれています。地力窒素は水稲の生育の後半にも吸収されますので、高温障害に強いお米づくりのためにも有機物施用に心がける必要があります。
 結果的にはそうなりませんでしたが、今年はエルニーニョ現象による冷夏が心配されていました。有機物の施用は高温のみならず冷害対策にも有効です。堆肥が発酵する際に、堆肥舎で湯気が立ち上っているのを見たことがあると思いますが、有機物の分解では熱が発生します。
 有機物を施用している水田の地温がそうでない水田と比べて高く推移することはよく知られており、冷夏の年にもその冷害低減効果が確認されています。

(写真)
稲ワラをすき込み、健全な土づくり

 

◆適正な土壌養分量 重要なpHとケイ酸

 ここではpHとケイ酸に絞って解説します。
 pHは作物によって異なりますが、水田の場合、好適範囲は6〜6.5とされています。一方ケイ酸は土壌100gあたり15mg以上とされています。
 図1には平成20〜22年度にJA全農が行った全国の水田土壌の分析結果を示しました。いずれも下限値を下回っている水田が多いことが分かります。
 pHもケイ酸も何も資材を施用しなければ、徐々に値は低下します。灌漑水や降水によって塩基類は流され、pHは低下します。また、稲体はケイ酸を10アールあたり100kg以上(窒素の10倍)も吸収するため、土壌から収奪されるからです。
 全国の様々なところで土壌養分の低下の影響が出始めています。水田転換畑でコムギの発芽障害が起きていることが各地で報告されていますが、その原因が土壌の低pHに起因しているといわれています。土壌pHはとくに生育初期に大きな影響を与えます。
 お米では近年、直播栽培が増加していますが、土壌の低pH化の影響は移植栽培よりも直播栽培で懸念されるため、早急な対策が必要です。
 ケイ酸はお米にとって重要な養分とされています。ケイ酸を多く吸収することによって稲体は直立し、受光体勢が改善します。また、茎葉の細胞にケイ化細胞が蓄積し、病気や虫の害を受けにくい丈夫な稲体になることが分かっています。
 また、近年ではケイ酸が稲体の温度を低下させる「クーラー効果」をもつことがわかってきました。
ケイ酸を多く吸収した水稲のほうが高温に対する耐性が強いといえます。
 ケイ酸資材を施用していない水田では、水稲はもともと土壌に含まれるケイ酸を吸収していると思われます。しかし、土壌のケイ酸も無限ではありませんし、吸収されやすいケイ酸は減りやすいので、土壌分析値が基準値を下回る水田ではケイ酸の補給は必須です。

全国の水田土壌の分析結果(H20〜22年:JA全農実施

(全国の水田土壌の分析結果(H20〜22年:JA全農実施)

 

【水田の土づくりの方法】

◆水田での有機物の施用 有効な腐植酸資材の施用

 有機物の投入は重要ですが、堆肥の施用が難しい場合があることは前述の通りです。稲わら(生わら)の還元は有機物の補給につながりますが、次年度作までに分解をさせないと、異常還元による根腐れの原因になります。また、温暖化ガスのメタンの発生も増えます。
 そこで、稲わらを還元する場合は分解を促進する「石灰窒素」などを併用する必要があります。さらに石灰窒素中の窒素は主に地力窒素として土壌に蓄積する利点もあります。
 また、腐植酸資材の施用は少ない量で有機物を補給できる方法です。
 「アヅミン」は腐植酸を大量に含有し、30〜40kg施用するだけで堆肥1トン分の腐植酸に相当します。

 

◆土壌養分の改良 診作くんマイスターを活用

 土壌のpHを上げるにはアルカリ分を含有した資材を施用する必要があります。石灰資材をはじめ、「ケイカル」、「ようりん」などを施用します。
 「ケイカル」と「ようりん」はケイ酸、リン酸、苦土なども含んでいます。
 土壌分析結果から施用量を計算するためには、JA全農が開発した処方箋作成ソフト「診作くんマイスター」が有効です。

 

【畑地の土づくりとその重要性】

◆土づくり資材施用の方労力低減には土づくりと基肥を同時に

 土づくり資材は施用量が多く、散布に労力がかかるため、省略されがちな実態もあると考えられます。
 いくつかの地域ではJAや営農組織などによる請負散布や共同散布の事例があります。JAが農家からの注文を取りまとめ、散布圃場をマッピング化し、オペレーター(散布者)が効率的に散布できるように作業計画を作っている例もあります。
 また、近年は土づくりと基肥を同時にできる肥料が開発されています。施用量が多くなりますが、施用が一回で済むので労力の低減にはつながります。
 特に「ケイ酸加里」は基肥に使用した場合、ケイ酸の効果とカリのゆっくりと効く効果も期待されます。

  土壌の深さ別のpH  土壌の深さ別の土壌硬度 

 

(写真)
育良好および不良のキャベツ畑における土壌の深さ別のpH(左)と硬度(JA全農)

 

【畑地の土づくりの方法】

 畑地では水田と比べて、様々な要因が土壌環境の良し悪しに影響します。
 図2は圃場の生産性が良好な畑と不良畑との土壌pHと硬度を比較したものです。一見すると作土層の表層から20cmまでの土層では、両者のpHは差が小さいですが、下層土は生育が良好な圃場ほどより深くまでpHの変化が小さく、しかも高いことがわかります。また、土壌硬度も生産性が良好な圃場ほど硬くなく、根が深く展開できる土壌環境にあることがうかがえます。このように化学性、物理性ともに下層土も含めた診断・土づくりが重要であると言えます。
 また、畑地では土壌病害の発生は絶対にあってはならないことです。透水性、排水性が悪い圃場は根の生育が抑制されることはもちろん、土壌病害の発生が懸念されます。
 したがって、土壌物理性(透水性、保水性、排水性など)の改良が重要になります。また、土壌病害の発生には土壌の化学性も影響することがわかっており、土壌の低pH化や養分過剰は病害を助長しやすくなります。

 

◆土壌物理性の測定・改良 貫入硬度計で土壌硬度を調査

 畑地での根張りや排水性には土壌の硬度、耕盤層(硬盤層)を調査する必要があります。このためには貫入硬度計を利用するのが有効です。JA全農では価格を抑えた簡易な貫入硬度計を開発しました。また、下層土のサンプリングが可能なオーガーも併せて開発しました(写真)。
 土壌の養分含量、硬度、耕盤層の位置、土壌病害の有無、下層土の状態などを総合的に判断して改良方法を選択します。例えば、排水性が悪く、作土深は確保されており、作土と下層土の混合または反転が不要な場合は、サブソイラーなどの機械を使って耕盤層を破壊します。

 貫入硬度計  下層土のサンプリングが可能なオーガー 

(写真)
簡易な貫入硬度計(左)と下層土のサンプリングが可能なオーガー

 

◆資材の選定 pH等の測定による簡易土壌診断で

 土壌改良にあたって、pHの測定は必須です。ECの測定を組み合わせることで、施肥診断も可能になります。pHとECの測定はZAパーソナルなどの簡易な機械によって現地でも測定することが可能です。
 例えば、苦土、リン酸の補給をしたい場合、低pH圃場では「苦土石灰」や「ようりん」などアルカリ資材を使用しますが、中性〜アルカリ性の圃場では「苦土重焼燐」や「リンスター」を施用します。
 アブラナ科の根こぶ病やキュウリのホモプシス根腐れ病などは高pH土壌で発生しにくいことがわかっています。低pH土壌ではアルカリ資材の投入が必要ですが、高pH土壌では微量要素の欠乏が懸念されるので、「転炉さい」などアルカリ分と微量要素を含有する資材を用いるかもしくは石灰資材と微量要素資材「FTE」を併用します。

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