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生産資材:土づくり

【特集・土づくり】収穫後からの土づくりで高い商品価値を2015年11月13日

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人が土を守れば、土は人を守る
・「土の日」は1日だけか?深刻化する水稲の品質低下
・pH5以下のほ場が消耗している地力窒素
・地力増強は秋に出来秋に石灰窒素による稲わら鋤き込みを
・温暖化防止にも貢献メタンガスの発生抑制効果が
・組織的取組みでプレミア米土づくりの技術的な優位性を示して
吉田吉明氏(デンカ(株)技術顧問技術士)

 高品質な農産物を安定的に生産し供給するためには、しっかりとした土づくりが必要だ。1年1作の水稲の場合は、収穫後の秋の土づくりが、翌年の収量や品質に大きな影響をおよぼすといわれている。そこで、「出来秋の土づくり」の重要性について、長年にわたって土づくり運動に携わってきた吉田吉明氏(現:デンカ技術顧問)に執筆していただいた。

◆「土の日」は1日だけか? 深刻化する水稲の品質低下

JAポスター 今年は、「国際土壌年」である。国連総会(2013年)で、12月5日を「世界土壌デー」とすることと併せて決議された。これを契機に、日本農学会や日本土壌肥料学会でシンポジウムを開催している。全農も10月2日に昭和45年から開始した「土づくり運動」45周年の節目と併せて、「JAグループ土づくりフォーラム」を開催した。因みに、全農が昭和47年に制定した「土の日」は10月第一土曜日で、今年は10月3日である。
 このようなイベントに参加するたびに、平成8年10月15日付「庄内日報」の「土の日は一日だけか」の記事を思い出す。
 「土づくりは極めて地味で、手間暇・労力を必要とするため、敬遠されがちであった。基本的な技術は一年手を抜いただけではすぐ現れない。それがいつしか、庄内の米の一部に品質と食味の低下となって、表面化してきている。『土の日』は、十月第一土曜日に限らず常に取り組まなければならないこと。基本の涵養は、勉強にも、人生にも通じるものがある」と。
 実はこの頃から乳白米の発生がみられるようになっており、平成10年頃には全国各地で乳白米の発生によるコメの外観品質の悪化が顕在化してきた。
 平成12年、全農と土づくり肥料推進協議会が開催した「土づくり研究会」で、当時東北農試の寺島氏が「夏季の高温と米品質」と題した講演会で、出穂期2~3週間後の最高気温31~32℃、平均気温27~28℃、最低気温が23~24℃以上の時に乳白米が発生することを示した。
 その対策として、遅植えなど田植え時期の調整、かけ流しなど水温を下げる水管理、作土を深くするなど、さらに、低タンパク米を生産しようとするあまり、必要以上に生育後期の栄養状態を悪化させる栽培法になっていないか点検する必要があること、有機物施用の減少、耕盤の圧密化などの地力の低下が生育後期の稲体の活力低下を助長することも指摘した。
 あれから15年以上経ったが、その間水稲の品質低下は深刻化しており、収量も変動が大きいことが問題となってきた。筆者は、本紙の「美味しい農産物と土づくり」シリーズ(2070号から2108号まで13回連載)で、主要な土づくり肥料の生産量と堆肥、化学肥料の施用量の推移から、乳白米等による品質低下には、地力の低下による後期窒素不足とケイ酸質肥料の施用量の減少が大きく影響していること、特に水稲にとってケイ酸の役割が大きいことを指摘してきた。


◆pH5以下のほ場が 消耗している地力窒素

主要な土づくり肥料の生産量推移(図1:主要な土づくり肥料の生産量推移(千トン))

 図1に代表的な土づくり肥料の生産量を示したが、いずれの肥料も平成7年頃に半減している。この頃から高温障害による乳白米の発生が顕在化しており、双方の時期が重なるのは偶然ではないと考えている。その後も減少の一途をたどっているのである。
 最近の庄内の土壌分析結果を見て驚いたが、pHが5を下回るほ場が少なくないことが報告されている。

コメ生産量による10a当たり化学肥料性肥料推移(図2:コメ生産量による10a当たり化学肥料性肥料推移(kg))

 一方、堆肥の大幅な減少に加え、化学肥料の窒素施用量も平成10年頃から10kg/10aを切り、ここ最近では6kgを下回る水準で推移している(図2)。
 一般に、収量600kg/10aで窒素成分として12kgが必要とされるが、施肥した6kgが100%吸収されるわけではなく、多くは土壌中の窒素に依存することになり、この状態が長年続いていることは、どんどん地力窒素が消耗していることを示している。


◆地力増強は秋に 出来秋に石灰窒素による稲わら鋤き込みを

 行政も堆肥の施用を推奨しているが、堆肥を作ることが労力的にも大変であるため、思うように進んでいない。そのため、刈取り後放置され腐熟の進んでいない稲わらの春鋤込みが増加しており、特に東北地域では、秋鋤込みでぬかるみが発生し、機械作業がやりにくいこともあり、実態は全体の8割が春鋤込みであるという。
 稲わらの腐熟が進まないことで、(1)代かき、田植えの作業性が悪くなるだけでなく、(2)浮きわらにより苗が倒れやすく、深植えになる、(3)生育初期に窒素不足を起こす、(4)地温の上昇による稲わらの急激な分解で強還元化が進み、酸素不足による根傷み・根腐れを起こす 
等により、水稲の初期生育の抑制が多く見られ、減収や収量変動が大きい要因となっている。
 この対策として、刈取り後、石灰窒素を10a当たり20kg施用し、秋に稲わらと鋤込む(排水の悪いほ場では、浅耕が良い)ことで、稲わらを腐熟させることを薦めている。
 これにより、前述の生育抑制を回避することができ、地力の増強も図ることができる。

稲わら+石灰窒素の効果((図3:稲わら+石灰窒素の効果(kg/10a) )

 石灰窒素による稲わら秋鋤込みは、昭和の時代から県農業試験場の試験で、特に連用することで堆肥と同等以上の効果が認められている(図3)。この技術は、稲わらを微生物分解により土中で堆肥化するため、「土中堆肥」といわれ、ケイカルやようりんなどを併せて鋤込むことで、さらに効果があることが実証され、「土づくりでき秋運動」として普及したものである。
 平成25年10月に、農林水産省から、石灰窒素は「持続農業法」に基づき、肥効調節型肥料に認定され、「持続性の高い農業生産方式」に係る技術としてエコファーマーの認定用の資材となった。併せて、「有機物の腐熟促進のみを目的として石灰窒素を施用する場合は化学肥料の使用量にカウントの必要がない」との見解が示されたことから、エコファーマーの方にとって、石灰窒素による稲わら秋鋤込みによる土づくりがやりやすくなった。
 また、昨年、この技術が、「担い手農家の経営革新(低コスト化・高収益化)に資する稲作技術(通称:担い手農家向け稲作カタログ)」にも登録されたことから、この技術の普及の後押しを期待している。
(図3に関して)
※宮城県古川農業試験所の試験結果
※試験期間:1976~1980年、品種:トヨニシキ。石灰窒素散布時期:秋散布、直後耕起。 施肥量:稲わら600㎏/10a、石灰窒素20㎏/10a、堆肥1000㎏/10a
※()は堆肥を100とした収量の指数


◆温暖化防止にも貢献 メタンガスの発生抑制効果が

 最近、水田転作での大豆栽培で、特に連作により土壌窒素肥沃度が減耗することで、大豆の減収傾向が問題になっている。また、飼料用米生産では、超多収栽培が求められており、稲発酵粗飼料(WCS)では、ケイ酸をはじめ多くの養分が収奪され、土壌養分肥沃度の消耗が懸念されている。一方、飼料用米では、多量の稲わらの鋤込みによる生育障害が懸念され、特に直播栽培では稲わらの残存による発芽抑制が問題になるため、石灰窒素による稲わら秋鋤込みは、腐熟促進と地力の維持・向上の面で極めて有効であると考えている。
 また、石灰窒素による稲わら秋鋤込みは、メタンガスなど温室効果ガスの発生抑制効果があることが明らかになっており、併せて、有機物が鋤込まれるため炭素貯留にも貢献することで環境負荷軽減に役立つ。
 石灰窒素そのものものだけでなく、石灰窒素による稲わら秋鋤込みによる腐熟促進技術は、土づくりの効果に加えて、地球温暖化防止の面でも貢献することを今日的な課題として強調したい。


◆組織的取組みでプレミア米 土づくりの技術的な優位性を示して

 10月3日に開催した日本農学会のシンポジウムで、秋田県立大学の佐藤名誉教授が、収穫後から取り組む土づくりで安定生産、加えて技術的優位性を高い商品の評価、価値実現に結びつけることで、高い労働生産性・労働収益性を向上させることができるとした講演。また、10月22日の「土づくり研究会」で、山形大学の藤井教授の指導のもと、庄内では稲作農家全員参加で、全筆土壌診断・土づくりと特別栽培の推進で環境にやさしい農業を目指しており、さらににプレミアブランド米づくりを目指して組織的な取組みを展開している事例は、地味ではあるが目新しさを感じさせた。
 「国際土壌年」を契機として土づくりの意義を考え、従前の良質米の安定生産に加えて、地球環境にも配慮した土づくりの普及を期待して、筆者の好きな言葉である「肥料は一年の宝、土は末代の宝」、「人が土を守れば、土は人を守る」で結びとしたい。

(写真)土づくりをよびかけるJAグループのポスター、

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