【クローズアップ・タマネギ価格高騰】いつまで続くタマネギ価格の高騰 産地に聞く2022年5月30日
農水省が公表した最新の食品価格調査結果(5月16日~18日)(注1)でも明らかなように、タマネギの価格が高騰し、食品業や一般家庭の台所を直撃している。今後の見通しについてタマネギの代表的な産地に聞いた。
買い物の主婦「1個買いは初めて」
「今日の料理にどうしても必要だから1個だけ買いました。1個180円ですよ。タマネギを1個買いしたのは、初めてですね」。記者の住む千葉県船橋市のスーパーで買い物中の主婦が「いつもは5個とか袋詰めされたものをこれくらいの値段で買っているのにね」と苦笑しながら語ってくれた。
タマネギは、カレーやハヤシライス、煮物や炒め物、揚げ物、スープやサラダと、あらゆる料理分野で活躍する、飲食店や家庭になくてはならない重要な食材だ。
タマネギは、全国で年間2万5500haで作付され、121万3000トンが出荷(令和2年)されている。そのうちの60%強が北海道、8%強が佐賀県、8%弱が兵庫県(淡路島)と80%をこの3道県が占めている。
3月ころから佐賀県の極早生品種の出荷が始まり、4月からこれに淡路島産が加わる。そして夏場になると北海道産が出荷され始める。タマネギの保存性が生かされ、翌年の春までこの北海道産が市場に出荷されるといういわば「リレー出荷」による安定的な供給がされてきている。
北海道産の不作と佐賀の作付け減
ところが昨年(令和3年)は、北海道が天候不順(干ばつ)の影響を受け、生産量が大幅に落ち、全国の出荷量が前年より22万4500トン・19%も減少。今年の春先に品薄となった。さらに3月から出荷されてくる佐賀県産極早生種の作付面積が減少して出荷量が例年より減少して品薄感に拍車をかけ、価格が高騰した。
JAさが園芸販売課の中森係長は、3月の出荷量が減少したのは、令和3年のタマネギ価格が「暴落したことと、生産者の高齢化で極早生種の作付が前年比9割になった」からだと説明する。
これからについては、極早生種以後の品種リレーで順調に収穫されており、「これからがピークです。田植えで一時中断されますが、その後はしっかり乾燥させて保存性を高めたものを出荷。7月中旬をピークに8月上旬に北海道産に引き継いでいきます」という。
夏場以降は平年並みに戻る予測も
4月からは淡路島産も順調に出荷され「これからがピーク」(JAあわじ島営農部)なので、夏場以降の北海道産が順調に生育すれば、価格も平年並みに戻ると予測されている。
その北海道の様子を、北海道産の4割を占める「日本一のタマネギ産地・北見市」に聞くと、「植え付けが終わったばかりで先のことは言えない」(JAきたみらい)が、昨年のような天候異変が起きなければ7月以降には通常の状態に戻るといえる。
病害虫の発生には注意
今年の3月に佐賀県でタマネギの「べと病」で注意報が出されたが、JAや生産者の的確な防除で「大きな影響はなかった」(中森係長)。しかし、既報(注2)のように、大阪府では「ネギアザミウマが媒介するタマネギえそ条斑病」が大阪府では初めて確認されている。今年の出荷には影響がないようだが、アザミウマは越冬するので、越冬させない対策が必要だ。
温暖化の影響なのか、「これまで見たことのない」病害虫の発生も増えている。それらの影響を最小限に抑えて食料を安定的に供給している生産者の努力を消費者にも的確に伝え、信頼関係を深めていく努力がこれからは大事になるのではないだろうか。
タマネギの価格高騰を受け、来年の作付を増やそうと考えている産地もあると聞いたので、佐賀はどうかと聞いてみた。
「タマネギは重量野菜で、高齢化した生産者が作付を増やすことは難しい。後継者も少ないし」と中森係長。さらに価格変動に合わせて作付を増減させれば「反動が来るので」とも付け加えた。むしろ「安定供給で落ち着いて欲しいですね」と結んだ。
(注1):https://www.jacom.or.jp/yasai/news/2022/05/220527-59120.php
(注2):https://www.jacom.or.jp/saibai/news/2022/05/220526-59089.php
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