江戸時代から受け継いだ伝統技術「丹波篠山の黒大豆」栽培開始 丹波篠山市2024年6月5日
兵庫県丹波篠山市で300年の歴史のある黒大豆の栽培が間もなく開始。代々受け継がれてきた丹波篠山の黒大豆栽培は令和3年に「日本農業遺産」に認定された。
丹波篠山の黒大豆が栽培される畝が高く、畝間の広い畑
丹波篠山市の「黒大豆」は、大粒で深みのある香味が評価され、全国から人気を集める黒大豆。正月のおせち料理に欠かせない黒豆として親しまれているほか、成熟前に収穫する「黒枝豆」はグルメの間で人気となっている。
丹波篠山の黒大豆の歴史は古く、約300年以上前から栽培が始まり、江戸時代には将軍家に献上され、江戸時代に出版された「料理網目調味抄」には、「くろ豆は丹州笹山名物なり」 「黒豆 丹州笹山よし 押て汁 煮染」などと記載されるなど、当時から高く評価されていたことがうかがえる。
また、兵庫県による遺伝子解析で、日本の主要な黒大豆や黒枝豆はここ丹波篠山地域の黒大豆を品種改良して作られたものであると判明しており、丹波篠山市で生産される黒大豆が黒大豆の"本家"といえる。
「丹波篠山の黒大豆栽培」は、令和3年に農林水産省の「日本農業遺産」に認定。認定のポイントとして大きく3つの点が評価された。その一つが「乾田高畝(かんでんたかうね)栽培技術」。もともと雨が少なかった丹波篠山では、水田に使用する用水が不足していたため稲作をやめて集落で「犠牲田」を設け、そこで黒大豆の栽培が始まった。しかし、多くの水田が過湿・重粘土の湿地であったため、黒大豆栽培には適さなかった。そこで水田を高く彫り上げて畝を作り、乾燥させることで黒大豆を栽培可能な畑に生まれ変わらせた。畝間の広い畑は現在まで引き継がれている。
2つ目が優良種子生産方式。大粒で品質の良い種子を選抜し育成するもので、始まりは江戸時代後期にまで遡る。大庄屋・波部本次郎らによって優良な種子を選抜育成し、丹波篠山の各地で種子を配り栽培した。現在では市内各所に採取ほ場を分散設置するなど持続的な種子を生産している。
丹波篠山の黒大豆
さらに3つ目は自然循環システム。雨の少ない丹波篠山地域では多くのため池が築造され、希少な両生類が生息している。また、土壌改良や肥料などに用いる貴重な灰を製造・保管するための灰小屋をつくり、山の木々や落ち葉、わらなどを土と重ねて焼き、灰肥料を作っていた。自然資源が循環する持続性の高い仕組みですが現在日本ではほ場整備事業などにより失われつつあるが、丹波篠山では今なお約240か所も灰小屋が残り、全国的に見ても珍しい農村風景となっている。
こうした栽培技術は現在も丹波篠山で受け継がれており、丹波篠山の黒大豆の苗をほかの地域で栽培しても同じような品質の黒大豆にはならない。丹波篠山の自然環境と先人から受け継いできた栽培技術があってこそなりたつ特産品といえる。
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