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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

2017.02.26 
第3回 農協改革の基本視点ー6つのP一覧へ

第2回 JAーIT研究会の実践に学ぶから続く

<Production>(生産)

今村奈良臣 東京大学名誉教授 第1の「Production」(生産)は、人、土地と水、技術、資本などを投入して、そこからどんな作物を作るかという問題です。作物には野菜だとかシイタケだとか花も含めていろいろな種類がありますけれども、その他に、作物の質と量の問題がある。それからまた、どういう時期に出荷するのか、生産の目標を立てなくてはなりません。先ほどの黒澤さんのお話のように、365日、周年出荷という問題もある。つまり、生産をどういう目標を置いてするか。政府が割り当てをするわけではないし、何か目標を立てねばならない。何を作るかということの基本は消費者が何を欲しがっているか、欲しがっているもの、つまり需要があるものを作るということです。要するに売れるものを作るということです。そのためには何をしなければならないか、そこから考えてみましょう。
 まず、第1に人について言えば、専業でやってきた人もいるし、兼業の方々もいる。リストラを受けた人もいるし、Uターンしてきた人、人材派遣されてきた人など、さまざまな人がいるわけです。土地もよく耕作されてきた農地のほかに、山間地の遊休地や傾斜地もあるし、傾斜地でも良い土地もあれば、以前桑畑でどうしようもない土地などの違いがいっぱいあるわけです。さらには水。ハウスをやるというと水が必ずいるとか、いろいろな問題が必ず出てきます。
 それから技術、資本。資本はできるだけ節約する。無駄な投資はしない方針ですが、技術だけはそうはいきません。この他に、その他の資源があります。シイタケを作るためのクヌギやコナラの山だとか、牧野だとか、いろいろの地域の資源をあげることができるわけです。
 このように整理しようとしているのは、甘楽富岡を念頭に置きながら他の地域でどうやるかという時に、甘楽富岡の実践をこのような形で一般化した上で、他の地域でもこのような項目についてその組み合わせも含めて考えてみてほしいからです。
 こうして、生産の諸要素を組み立て、組み合わせをしっかり作るとともに、何を作るか。いまの消費者が求めているものを作らないとダメです。農産物はあくまでも食事のための素材です。食事のメニューはこれをいろいろ組み合わせて作り食べるわけです。単品だけを食べない。甘楽富岡が108品目を作ろうとしたのはその意味も含まれています。

<Price>(価格)

 第2番目は「Price」(価格)です。価格は需給で決まってくるわけですが、需給もただマクロの需給だけではなくて、「どこで、誰が」ほしがっているかまで考えなくてはならない。普通の消費者もいるだろうけれども、量販店や外食産業や食品加工産業もいろいろあるわけです。それから「いま、なにが欲しいのか」というのも需給や価格に全部響いてきます。そのうえ売り方もあります。イン・ショップでは100円パッケージというのが多い。消費者が買いやすいからです。その中に、生産者のメッセージが入っているはずです。外食産業や太田市場に出すときは違います。
 このようにいろいろな要素がいっぱいあります。と同時に大事なのは、先ほど「所得率」と黒澤さんはいわれましたが、「所得率」という言葉でとりあえず表現しておきますけれど、実現した価格のうちどのくらいが、生産者の儲けとしてふところに戻っていくかという問題、これも大変に大事な問題です。そこのところがしっかりしていないと拡大再生産はできません。

<Place>(場所)

 第3の「Place」というのは、場所です。JA甘楽富岡にはトレーニングセンターとしても位置づけられている地場の「市」すなわち食彩館、その都市での延長線上に位置づけできる、量販店に設けられた「イン・ショップ」があり、「ファクトリー・モール」という大規模なものの中の売り場も始まろうとしています。これは「工房」という言い方もしていましたが、要するにファクトリー・モールという一つの場所で、ただ野菜など生鮮食品が売られるばかりでなく、米も木工品も扱われる。モールというのは総合性ということをたぶん意識しているわけです。たとえばの話ですが、野菜を買えば、米も味噌もまな板も買うとか、大根を買えば漬物用のタルも買うとか、何か常に関連性がありうるわけです。

<Promotion>(動機づけ)

 第4の「Promotion」というのは動機づけです。売れる工夫を駆使して売れるための荷姿まで考える、値段のつけ方まで考える。あるいはいろいろな創意工夫、もっと言うと英知などとも言います。要するに関係する人々がありとあらゆる知恵を出すということです。この動機づけはレベルによっていろいろとあっていいわけです。例えば、農協の組合長の地域を動かす知恵や提案もあるかもしれないけれど、ごく普通のおばちゃん達からの野菜の選果やパッケージについてもあるわけです。
 お国のためだと考えないけれども、儲けのためだと、それはいろいろピンからキリまであるわけです。しかしこれは全部大事なんです。買う方からみれば、ファクトリー・モールを作って、そこに入ってきてくれるというのは、モールの開設者から見れば客寄せかもしれません。例えば野菜が全部単価100円だというのは、野菜の1袋が意外と他の商品の売れ行きまで影響するかもしれないからです。買う方からの意向もあるだろうし、作る方からの提案も、実は非常に大事です。

<Positioning>(立地)

 第5が「Positioning」。他とは違う際立った特徴をもつ売り場と売り方。他とは違う特色を持ち誇りに充ちた生産地。甘楽富岡という特有の立地条件、自然環境条件、とりわけ大消費地である東京から100km圏という有利性の活用。こういった消費者と生産者をつなぐ自らの位置を認識し、消費者への積極的アクセスを行い、標高150mから840mに及ぶ条件の異なる立地特性を巧みに活かして、それに季節性を重ね合わせ、条件不利地を条件有利に大転換させた英知とその実践に学ぶべきことは多い。JA甘楽富岡、それを指導してきた黒澤賢治営農事業本部長の実践に学ぶべきことは多大であります。

<Personality>(人材)

 第6が「Personality」。個性豊かな多様な人材を活かしているということです。生産者についてみれば農業を専業としてきた人もいます。兼業農家のおじいちゃん、おばあちゃん、おかあちゃんもいます。企業のリストラに会い返ってきた人、定年で退職した人、都会から農業をやりたいと入ってきた人、いろいろいます。その人たちの個性や特技を活かしながら、僅かな土地でも活かし、リース方式でハウスを貸し、さらには技術指導のための「営農アドバイザリースタッフ」を委嘱するなどいろいろなことをやっています。また、「インショップ」では農産物の説明や売り込みをする人々など多彩です。もちろん農協のスタッフは目の色を変えてそれぞれの担当部内でがんばっています。これを指導し、方向づけるリーダーがいります。それぞれの部内にいるだけでなく黒澤賢治さんというトップリーダーがいるということが最も大事です。つまりは、人材とリーダーが何をやるにしても基本だということです。
 以上、P-sixというかたちでまとめましたが、このようなかたちで理論化することによって「JA甘楽富岡は特別な存在だからやれたんだ。我が方は田んぼばっかりで平地でどうにもならん」というような言い訳ができないようにしないといけない。そのためにこういう整理のしかたがあるのではないかと提起させていただきました。どうか全国各地のJAの改革路線に活かしていただければ幸いです。

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