協同組合と社会改革―先人の思想と実践から―

- 著者
- 北出俊昭
- 発行所
- 筑波書房
- 発行日
- 2012年12月10日
- 定価
- 1200円+税
- サイズ等
- 新書
- 電話
- 03-3267-8599
- 評者
- 自著を語る 北出俊昭
地域社会建設の思想と実践を学ぶ
まず「1 現代における協同組合の課題―社会改革問題を中心に」では、協同組合の目的を決定づけたのは産業革命時における無産者階級の経済的、社会的貧困の改善運動だったことを重視し、現代の協同組合でもそうした認識が必要なことを強調しています。
その上で「2 オウエンの思想と地域共同体建設」は、協同組合の父といわれ地域共同体を先駆的に実践したオウエン思想の検討に当てています。オウエンはニュー・ラナーク(スコットランド)で工場を経営したことで有名ですが、それは単なる「工場経営」ではなく「統治」という考えから、工場のほか日用品店舗、住宅・学校をはじめ各種施設を整備し、協同組合による地域共同体建設を目指したのです。オウエンがこうした共同体を目指したのは経済的貧困の改善と人間性の回復は協同組合によりはじめて可能だという信念があったからです。これは現代の地域社会づくりにも不可欠な理念です。
「3 モンドラゴン協同組合と地域社会改革」では、その指導者アリスメンディアリエタの思想と実践を中心に検討しています。モンドラゴン協同組合は労働者協同組合で、各種組合がグループとして一つのシステムを形成し、スペイン・バスク地方の一大経済組織となっています。ここでは、その発展の歴史にみられた協同組合のあり方や地域とのかかわりで学ぶべき貴重な教訓について述べています。
以上先人の実例を検討したあと、「4 現代社会と協同組合の役割」では現在の貧困、格差、人間性喪失などの実態について述べたあと、アイデンティティからみた協同組合の現代的課題を明らかにしています。協同組合セクター論についても検討し、協同組合の特徴を徹底して追求することが大切なことを強調しています。そして最後の「5 協同組合と社会改革の課題」では、この課題を考え上で基本問題について総括的に述べています。
現在、第26回全国大会決定を推進する上で農協の組織、事業、経営のあり方が改めて検討されていますが、地域社会建設はこれらを集約した課題といえます。農協組織が本来の協同組合としての役割を発揮する上でも、協同組合と社会改革について先人の思想と実践に学ぶことが大切です。本書がそのための一助となれば幸いです。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日