【26年度生乳需給見通し】3年ぶり減産 脱粉在庫はコロナ禍水準に2026年2月2日
Jミルクは30日夕、2026年度生乳需給見通しを発表した。搾乳牛減などから生産量は前年度対比1・8%マイナスの減産となる。一方で、脱脂粉乳は記録的な在庫水準となる“異常事態“だ。26年度も在庫削減対策を継続する。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)

酪農乳業8団体挙げた需要拡大の取り組みで共同記者会見。一段と実効性が問われる(2025年11月12日)
■縮小の「悪循環スパイラル」
全国の生乳生産量は前年対比1・8%減の725万8000トンと3年ぶりの減産見通しだ。生産量が減るにもかわらず、それを上回る需要減で課題の脱粉在庫が26年度末で11万トン超と、コロナ禍で外食需要が激減し乳製品過剰が深刻となった時以来の事態だ。
生産基盤の維持・拡充には、生乳需要拡大に合わせた増産で酪農家の収益性を上げる「需給均衡拡大路線」が求められる。だが今、酪農乳業の現場で起きていることは逆だ。26年度見通しは、減産と需要低迷が同時並行に進む"悪循環"による国内酪農の縮小生産の危機を映し出している。
■「猛暑」予測、カギ握る牛乳消費
26年度用途別処理量は、全体の5割を占める牛乳類は1%減の379万トンと見込む。牛乳は昨年8月の飲用向け生産者乳価キロ4円引き上げに伴う小売価格の1リットル当たり10~20円程度の値上げで前年度対比マイナス消費が続いている。
乳製品の加工向けは、チーズが1・7減の42万トン、生クリームは0・7%減の120万トン、バターと脱粉は4%減の179万トンを見通す。
Jミルク予測は、生乳需給に大きく作用する気象要因を25年度同様に「猛暑」に設定した。「猛暑」は暑さに弱い乳牛にとって減産要因になる一方、需要は乳飲料やアイスクリーム販売増な
どでプラス要因となる。
需要面では飲用牛乳の動向と脱粉需要の約4割を占めるヨーグルト販売をどう底上げしていくかが、在庫削減の大きなカギを握る。
■不需要期の加工増と在庫削減の「難路」
飲用需要の低迷などを受け脱粉在庫対策がなければ、26年度末で実に11万トンの在庫が積み上がる。Jミルクは今年度から需給変動リスクに対応した基金造成を始めた。だが、まだ資金造成が十分でない初年度からの基金発動となった。まずは1~3月に製品換算で1万2000トン規模の脱粉を飼料代替などで削減する。
今後の需給対策実施に当たっての「難路」は、飲用牛乳不需要期の生乳廃棄回避と脱粉在庫削減を並行して行わざるを得ないことだ。学校給食牛乳が停止する不需要期は、年末年始を最大の山に、春季休校となる3月下旬からの年度末、さらには5月大型連休の3段階。生乳廃棄を避ける不需要期の加工処理は、脱粉生産が増えることを意味する。
■Jミルクは在庫削減を継続
Jミルクは同日の記者会見で脱粉在庫削減へ26年度も継続すると明らかにした。記録的な在庫水準を踏まえれば、当然の決断だろうが問題は財源をどうするかだ。
基金造成初年度の25年度は積み立てた基金21億円を使い在庫削減を実施中だ。国内の酪農家と乳業メーカーに生乳キロ当たり15銭の拠出を求め、基金として積み立てていた。それを取り崩しているのが現状だ。
■需給安定問われる「国主導」
農水省は同日の会見で、脱粉の安定供給を可能とする適正在庫を5万~7万トンと繰り返した。果たしてそうか。この2万トンの幅は大きすぎないか。さらに上限に挙げた7万トンはむしろ過剰在庫との認識を指摘する関係者もいる。
渡辺裕一郎Jミルク専務は、1~3月期の現在進行形の基金対応では脱粉過剰は不十分として26年度も継続実施に言及した。半面、同省はあくまで業界の対応を踏まえ、これに一定の支援をする考えを示した。関係者からは、むしろ、もう一歩国が踏み込んで需給改善を図る段階ではないかとの指摘も出ている。
2030年度を目標とした新酪肉近初年度目からの生乳需給緩和と業界の基金発動、26年度の減産見込みは、酪肉近計画実現を土台から揺さぶりかねない。
■年度当初の追加輸入せず
26年度の生乳生産、牛乳・乳製品需給見通しを踏まえ、農水省は年度当初のバター追加輸入を見送った。国家貿易の輸入枠を国際約束のカレントアクセス(CA)枠内にとどめる。
乳製品の追加輸入は、国内生乳需給に大きな影響を与えることから、たびたび政治問題化してきた。24年度のバター大量輸入は国会閉会直後の6月末という異例の時期に決定した。政治的配慮を指摘する声も強い。今回は、生乳需給緩和と総選挙下での政治情勢から、早い段階から追加輸入見送りは確実視されてきた。カレントアクセス自体も、需給緩和時には13万7000トン枠そのものを削減すべきとの指摘が国会議論でもされてきた経過もある。
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