在庫報告、民間備蓄に「疑問」 チェーンストア協会が食糧法見直しで要望2026年2月2日
政府・農水省による食糧法見直しについて、日本チェーンストア協会が要望書を提出した。見直しの3本柱である米の流通実態把握、民間備蓄制度創設、「需要に応じた生産」の促進のそれぞれについて課題を指摘し、「持続可能な政策の検討」を求めている。
把握困難な295万tこそ調査を
スーパーマーケット、ホームセンターなどチェーンストア大手が加盟する日本チェーンストア協会(尾﨑英雄会長)は1月21日、「米を日常的に取り扱い、消費者に安定的に供給する立場にある業界」として、「食糧法見直しに関する要望」を鈴木憲和農相に提出した。
食糧法見直しの3つの柱に沿って、要望は3点からなる。
第1が「在庫数量等の定期報告制度について」だ。農水省は、事業開始の届出を、現行の出荷・販売に、加工・調製(中食・外食)の事業を行う者を加え、定期的に米穀の在庫数量等の報告を求める方針だ。
今回の要望はこの点について、2024年産米の流通で実態がわからなかったのは、既存の集荷業者から卸を経て実需に流れた291万tではなく、集荷業者以外の事業者等を通じた流通量295万tだと指摘。在庫数量等の定期報告は実態が把握できている前者ではなく、把握困難な後者に焦点を当てるべきである。調べる場合も長期保存が可能な玄米に限定し、劣化が早いため長期滞留することもない精米は外すべきだとしている。
大規模災害では公的対応こそ
第2が「民間事業者による米の備蓄義務化」だ。農水省は需要増による不足にも対応できるよう米穀の備蓄の目的を見直すとともに、民間備蓄制度を創設する方針だ。
これについて要望は、「大規模な地震や水害等が広域に発生した場合には、民間備蓄の放出が通常の商流に影響を及ぼし、かえって流通の混乱を招くおそれ」もあると指摘。コスト負担や放出時の適正な利潤等の議論も必要とし、「こうした大規模災害時の対応については、政府備蓄を含めた公的対応こそが期待される役割である」との意見も述べている。
●「需要に応じた生産」の限界指摘
第3が「『需要に応じた生産』を柱とする政策の方向性について」だ。農水省は、これまでの生産調整に関する規定に代えて、政府は需要に応じた生産を促進し、生産者は需要に応じた生産に主体的に努力すること等を法定する方針だ。
それに対して今回の要望は、「精緻な(需要)予測には自ずと限界がある」「『需要に応じた生産』を政策の中心に据えることが、主食である米の供給や価格の安定にどのように寄与するのか」と疑問を投げかける。そして「生産者が持続可能な価格で出荷でき、かつ国民が広く受け入れ可能な価格で安定的に購入できる仕組みを構築することが重要」と訴えている。政権や大臣の交代で政策の方向性が大きく変動することは不安定さをもたらすとし、「中長期的に一貫性のある、持続可能な政策の検討」を求めた。
「流通目詰まり論」の残滓?
農水省はスーパーの棚から米が消えた2024年夏以降の米不足に際し「米は足りている」と主張し流通目詰まり論を展開したが、それは実態とずれており、25年8月5日、小泉進次郎農相(当時)が米不足の事実を認めた。米卸叩きについては、後任の鈴木憲和農相が11月25日、「(前大臣答弁で)大変不愉快な思いをされたということであれば、私の方からもお詫びを申し上げたい」と国会で陳謝した。今回の要望書が「合理性に疑問がある」とした調査拡大は、農水省自身の調査ですでに否定された「流通目詰まり論」の残滓(ざんし)にも見える。
民間備蓄創設についても、昨年12月24日の農水省・食農審食糧部会で「この仕組みではかえって消費者の安定供給を損なうことが予想される」など、異論や疑問の声が出ていた。
「店頭から米が消える」のは困る
チェーンストア協会では「『需要に応じた生産』は(令和の米騒動で)失敗したのではないか。私たちは店頭に米が並ばないのが一番困る。生産が持続できるためにも、消費者が安定して買えるためにも、あるべき姿を議論し、国も知恵を出してほしい」(広報)と話している。

図:2024年産米の流通実態
2024年産米の流通では、JA・全農や全集連など既存の集荷業者ルート(上段)が前年比34万t減少する一方、実態把握が困難な新興商系業者など「集荷業者以外の業者等」のルート(下段)が49万t増加し、295万tに達し価格高騰を主導した 。チェーンストア協会は、この「把握困難なルート」に調査の焦点を当てるべきではないかと指摘している。図は農水省作成。
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