斎藤たきち詩集『富神山ある風景の序章』
- 著者
- 斎藤たきち
- 発行所
- 地下水出版部
- 発行日
- 2014年5月10日
- 定価
- 頒価1800円
- 電話
- 023-645-0373
- 評者
- 星寛治 / 「地下水」同人
山形市門伝の背後に、ピラミッドの形をした富神山が鎮座する。ヒメサユリが咲き、山菜やキノコが育ち、鳥やけものの棲む宝の山は、農民詩人斎藤たきち氏の原風景を成す。麓には縄文の系譜を汲むストーンサークルがあり、また端山(はやま)信仰の象徴としての存在感も留める。
百姓の詩魂が放つ
文明批評の矢
巻頭の「富神の里 四季のたより」は、冬の眠りから醒めた大地の息吹きから始まり、梅、李、桜桃、梨、りんご、かりんなどが咲き競い、花園と化す果樹園の情景はことのほか美しい。感性を育む農の営みが描かれる。 十五の春に「作物をつくりより土をつくれ」と諭した父の言葉を胸にたたみ豊穣の土づくりをめざす行き方は、後に真壁仁氏の薫陶を受け確固たる信条となった。
焼畑の温海カブの理法や、伝播するオリザの一粒に縄文人の心を汲み取る詩人は、遠くインディオやイヌイットの生き様とも共振する。モノ、カネ、利便性に搦めとられた現代人が、終の住処の地球そのものまで壊しつつある時、原住民(=マイノリティ)が護ってきた自然への畏敬の念こそ起死回生の鍵だと訴える。そして「待つ」という哲理を以て、効率とスピードと刹那主義の現代文明に鋭い批判の矢を放つ。たとえば、りんごつくりでは、かた雪の上から剪定にかかり、花を咲かせ、実を結ばせ、完熟した果実を収穫するまで300日も待つ。
人生の師、真壁仁の大きな懐で育った詩人は「百姓真志」の遺訓を魂の支えとして生き続け、表現活動を続けてきた。ほんとうの母の愛をうたう「独活(うど)への思い」、子どもや孫たちが果樹園で祝ってくれた「野の金婚式」など、深く印象に残る詩篇が多く、座右に置きたい一冊である。
重要な記事
最新の記事
-
【畜酪政策価格最終調整】補給金上げ実質12円台か 19日に自民決着2025年12月18日 -
【11月中酪販売乳量】1年2カ月ぶり前年度割れ、頭数減で北海道"減速"2025年12月18日 -
【消費者の目・花ちゃん】ミツバチとともに2025年12月18日 -
一足早く2025年の花産業を振り返る【花づくりの現場から 宇田明】第75回2025年12月18日 -
笹の実、次年子・笹子【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第369回2025年12月18日 -
虹コンのレインボーファーム「農閑期は焼肉ぴゅあに行くっきゃない!」スタンプラリー実施 JA全農2025年12月18日 -
「淡路島産白菜」使用 カレーとシチューメニューをハウス食品と提案 JAグループ兵庫2025年12月18日 -
畜産の新たな社会的価値創出へ 研究開発プラットフォーム設立 農研機構2025年12月18日 -
佐賀の「いちごさん」表参道でスイーツコラボ「いちごさんどう2026」開催2025年12月18日 -
カインズ「第26回グリーン購入大賞」農林水産特別部門で大賞受賞2025年12月18日 -
軟白ねぎ目揃い会開く JA鶴岡2025年12月18日 -
信州りんご×音楽 クリスマス限定カフェイベント開催 銀座NAGANO2025年12月18日 -
IOC「オリーブオイル理化学type A認証」5年連続で取得 J-オイルミルズ2025年12月18日 -
【役員人事】クミアイ化学工業(1月23日付)2025年12月18日 -
油糧酵母ロドトルラ属 全ゲノム解析から実験室下での染色体変異の蓄積を発見 東京農大2025年12月18日 -
約1万軒の生産者から選ばれた「食べチョクアワード2025」発表2025年12月18日 -
兵庫県丹波市と農業連携協定 生産地と消費地の新たな連携創出へ 大阪府泉大津市2025年12月18日 -
乳酸菌飲料容器の再資源化へ 神戸市、関連14社と連携協定 雪印メグミルク2025年12月18日 -
特別支援学校と深める連携 熊谷の物流センターで新鮮野菜や工芸品を販売 パルライン2025年12月18日 -
東京の植物相を明らかに「東京いきもの台帳」植物の標本情報を公表2025年12月18日


































