TPPで1俵2200円の米がやってくる2013年9月30日
ヴェトナム米は、最近1764円(玄米60kg当たり、以下同じ)だという。日本農業新聞が、先週25日に伝えたことである。最近の農水省の資料でみると、国産米の価格は1万6127円だから、これは安い。
もしも、TPP交渉で米の関税を引き下げたり撤廃すれば、アメリカだけでなく、ヴェトナムの米も日本へ洪水のように雪崩れこんでくるだろう。これは脅威だ。
同紙は、こうしたヴェトナムの米の生産と流通の実態を、先週の23日から26日まで、4回の連載で詳しく報じた。まことに時宜にかなった記事というだけでなく、肝心なところを、もれなく報道した。
ヴェトナムの米価は、1kg当たり7000ドンだという。先週は1円が214ドンだったから32.7円になる。これは精米価格だから、玄米価格に換算すると29.4円になる。玄米60kg、つまり1俵当たりでは1764円である。
もしも、TPPで米の関税をゼロにすれば、輸送費を加えても2200円で輸入されることになるだろう。
これに太刀打ちできる農業者が日本にどれほどいるだろうか。皆無といっていいだろう。
◇
こうした実態を知らない評論家は、日本の生産者が採算をとれるように補助金を与えればいい、という。
しかし、この実態から計算すると、補助金の単価は1万6127円と2200円との差額の1万3927円になる。
そうなっても、この評論家はこの差額を補助金として政府が支払えと主張するだろうか。とてもそうした主張はしないだろう。つまり、日本の米は採算がとれず、壊滅するしかない。
◇
この米は、いまのところ日本人の食味にあわない米だ。だが、現地の企業や日本の企業は、日本米を生産して、日本への輸出をもくろみ、着々と準備をすすめている。そのための技術開発を協力して行い、生産体制と販売体制を整備している。同紙は、そうした現地の状況を生々しく伝えている。
やがて、日本人の食味にあった日本米がベトナムで大量に生産できるだろう。日本米だからといって、ベトナム米と生産費が違うわけではない。つまり、日本人好みの日本米が、ベトナム米と同じ1764円で売れるようになるだろう。そして、日本はこの米を2200円で輸入することになる。
◇
いまは、ベトナムでの日本米の生産量は、それほど多くはない。現地の日本人や隣国のマレーシアやシンガポールにいる日本人が買うだけだからである。
しかし、TPPで日本が米の関税を下げれば、大量に生産して日本へ輸出するだろう。なにしろベトナムは世界の米輸出の首位にある。輸出余力は充分にある。
もしも、TPPで米の関税をゼロにすれば、日本の米は壊滅するだろう。ゼロにするまでに猶予期間をおけばいい、というものではない。猶予期間の後には壊滅する。そうした暗い将来をもつ日本の米に希望を持つ農業者はいないだろう。ことに若い農業者は、日本の米に絶望するしかない。主食の米さえも外国に依存することに、大多数の国民も絶望するしかない。
だから、日本はTPPで、米をはじめ農産5品目を死守しなければならない。
◇
ちょうどこの記事の連載中に、同紙は独占インタビューして、マレーシアのマハティール元首相のTPP批判を載せた。彼は、日本を手本にしよう、というルック・イーストを国策にした人である。
彼は、米国ルールを押し付けるTPPを痛烈に批判し、米国ぬきのASEANプラス3を提案している。これなら、各国の事情に配慮できるし、低所得者への気配りもできる、という理由である。筆者も同感である。
(前回 TPPでも国境は消せない)
(前々回 TPPで新植民地主義に加担する日本)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
最新の記事
-
【特集:第66回JA全国女性大会】現地ルポ:輝くJA女性部 愛彩館を核に料理教室で「食選力」 JA延岡女性部(宮崎県)2021年1月22日宮崎県JA延岡の女性部が宮崎県農協中央会の指導で3、2級ヘルパーの資格取得に取り組み、女性部助けあい組織「あゆみ会」を立ち上げて、まずは訪問介護...
-
各地区代表が活動体験を発表 JA全国女性大会2021年1月22日
-
組合員との関係強める 村松二郎全国森林組合連合会会長2021年1月22日
-
(215)中国の豚肉動向と天武天皇の詔【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2021年1月22日
-
農業現場とつなぎイノベーションに挑戦-(一社)アグベンチャーラボ 荻野浩輝代表理事理事長 JA全国女性大会で取り組み紹介2021年1月22日
-
半農半X サポート者も支援を検討-農水省2021年1月22日
-
米のJAS規格の制定へ-農水省2021年1月22日
-
直売所の活気をライブ配信-JCA2021年1月22日
-
好調にスタート「豊橋産食材フェア」 JA全農2021年1月22日
-
「もやしもん×農学原酒」東京農大生による純米大吟醸 限定缶で先行販売2021年1月22日
-
「聖護院かぶ」で新商品 セブンイレブン、JA全農京都と連携 京都府2021年1月22日
-
新鮮野菜と産品をお届け オンラインイベント開催 岡山県笠岡市2021年1月22日
-
みかんの聖地で始める農業「お仕事セミナー」オンライン開催 愛媛県八幡浜市2021年1月22日
-
「アルビ米」に「愛を米て」キャンプ中の選手応援 アルビレックス新潟2021年1月22日
-
サラダの新定番「ペイザンヌサラダ ドレッシング」限定発売 キユーピー2021年1月22日
-
和歌山県古座川を巡る 熊野ジビエレストランバス 無料モニターツアー実施2021年1月22日
-
納豆発祥の地で「伝統×福祉」わら納豆復活プロジェクト始動 キツ商会2021年1月22日
-
地域活性化へ取り組み「三浦市産キャベツ」のハンバーグ新発売 石井食品2021年1月22日
-
食品ロス削減へ 鹿児島県西之表市と連携協定締結 クラダシ2021年1月22日
-
地域産品による新たな産業に向け雪室貯蔵の検証試験開始 新潟県湯沢町2021年1月22日
-
新潟のチューリップを新幹線で東京駅へ 青山フラワーマーケットで本格販売2021年1月22日