TPPで半失業社会がやってくる?2014年4月14日
非正規労働者のような低賃金労働者や半失業者を、社会に多く抱えておくことは、資本にとって当初からDNAに組み込まれた欲求である。
半失業者が多ければ賃金を下げやすい。利潤の最大化を図るには、賃金を低くしておくことが、なによりも重要だし、怠け者の資本家にとって、てっとり早い。
だが、それは大多数の国民である労働者にとって我慢できない。そこに摩擦がでてくるし、それでは社会の進歩がない。
このことに、農業がかかわってきたし、いまも農業とTPPが深くかかわっている。
歴史をさかのぼると、日本は後進資本主義国である。
英国のような先進資本主義国は、農業者の土地を奪い、失業させることで、豊富な労働者を農業部門から工業部門に移すことができた。そうして工業を発展させた。
だが、日本のような後進資本主義国は、明治期以後の工業化の過程で、それほど多くの労働者が必要でなかった。すでに先進資本主義国では工業の省力機械化技術が進み、日本はその技術を輸入できたからである。
それゆえ、農業の近代化が始まり、農業部門で労働者が余ると、その一部しか工業部門に吸収されず、多くが農村に滞留した。ここに農業問題の根源がある。
◇
その後、第2次大戦後の高度成長期に、一時、工業部門は農村からの労働者の供給が大量に必要だった。だが、農村は半失業者的な労働者を多くかかえていたので、工業部門は賃金を上げないでも労働者を確保できた。あいかわらず低賃金労働者を確保できた。
それは、老父や老母などがいる一家を支えられるほどの「高」賃金でなくて、都市では、若い新卒の独身者が生活できるだけの低賃金でよかった。また、農村では、半農半工ともいうべき低賃金の工業労働者を確保できた。それが兼業農業者であり、総兼業化といわれた。
こうして低賃金社会がつづいた。
◇
いまはどうか。
非正規労働の規制は進んでいない。それどころか規制を緩和しようとさえしている。そして、いまや非正規労働者は全体の4割になった。
半失業的な非正規労働者を多くしておくことは、賃金を低くおさえておくための最も効果的な方策である。賃金の圧迫は資本の利益に直結する。それを多くのマスコミと政治が支援している。
◇
もう1つはTPPである。TPPは海外の半失業者を、国内の賃金の圧迫に使おうとしている。経済の、いわゆる国際化によって、いまやそれが出来るようになった。
TPPの究極的な目的はここにある。途上国と先進国との間の自由な労働力移動による賃金の平準化である。つまり、日本など先進国の賃金切り下げである。
この目的の実現を阻む勢力、つまり、TPP反対の勢力の先頭に農協が立っている。それは、農業を守るためだが、低賃金社会の到来を阻むことにもなる。だから、資本側から農協への風当たりが強い。しかし、多くの国民は労働側だから、農協のTPP反対運動を支持している。
(前回 日豪EPAで崖っぷちに立つ牛肉)
(前々回 定年帰農者を歓迎しよう)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
米の価格 前週比▲48円 3週連続下落 農水省調査2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(1)育苗箱処理剤が柱2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(2)雑草管理小まめに2025年6月17日
-
米 収穫量調査 衛星データなど新技術活用へ2025年6月17日
-
価格高騰で3人に1人が米の消費減 パンやうどん、パスタ消費が増加 エクスクリエの調査から2025年6月17日
-
【JA人事】JA中野市(長野県) 望月隆組合長を再任2025年6月17日
-
備蓄米の格安放出で農家圧迫 米どころ秋田の大潟村議会 小泉農相に意見書送付2025年6月17日
-
深刻化するコメ加工食品業界の原料米確保情勢【熊野孝文・米マーケット情報】2025年6月17日
-
2025年産加工かぼちゃ出荷販売会議 香港輸出継続や規格外品の試験出荷で単収向上を JA全農みえ2025年6月17日
-
2024年産加工用契約栽培キャベツ出荷販売反省会を開催 旬別出荷計画の策定や「Z-GIS」の導入推進を確認 JA全農みえ2025年6月17日
-
和歌山「有田みかん大使」募集中 JAありだ共選協議会2025年6月17日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第110回2025年6月17日
-
転職希望者対象に「農業のお仕事説明会」 6月25日と7月15日に開催 北海道十勝総合振興局2025年6月17日
-
「第100回山形農業まつり農機ショー」8月28~30日に開催 山形県農機協会2025年6月17日
-
北海道産赤肉メロン使用「とろける食感 ぎゅっとメロン」17日から発売 ファミリーマート2025年6月17日
-
中標津町と繊維リサイクル推進に関する協定締結 コープさっぽろ2025年6月17日
-
神奈川県職員採用 農政技術(農業土木)経験者募集 7月25日まで2025年6月17日
-
【役員人事】ノウタス(6月17日付)2025年6月17日
-
「九州うまいもの大集合」17日から開催 セブン‐イレブン2025年6月17日
-
農薬出荷数量は1.5%増、農薬出荷金額は2.8%増 2025年農薬年度4月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年6月17日