独裁化する自民党2015年7月13日
自民党のある幹部が、4日のTVで、安保法制案について、国民の大多数が反対しても、いまの国会で成立させる、と息巻いていた。主権者である国民の大多数の反対を無視して、安保法制を作るというのである。これは、まさしく民主主義の否定である。
同様な考えが、いまの国会で審議中の農協法案にもある。経済民主主義の根幹である協同組合を全面的に否定する考えが、その底流にある。
自民党は、党の名前から「民主」を除いて、「自由独裁党」にしたらどうか。財界とアメリカが自由に振るまうために奉仕する独裁党、という意味である。そのほうが実態に則している。
安保法案を、いまの国会で成立させることに反対する世論は、8割を超えている。そのように、多くのマスコミは伝えている。
8割を超える反対意見のなかには、政府の説明が不十分だ、という意見もある。政府は、この法案は憲法の平和主義と矛盾しない、と説明しているが、しかし、この説明は不十分だ、という意見である。
なぜ説明不十分か。それは矛盾しているからである。説明不十分というよりも、説明不可能というほうが正しい。大多数の憲法学者も、矛盾と考え違憲としている。だから、政府の説明には、もともと無理がある。
◇
それゆえ、説明を重ねれば重ねるほど、矛盾が露呈する。違憲立法であることが、白日のもとに曝される。そうして「説明不十分」の意見は、「反対」の意見に変わる。
だから政府は、いい加減で審議を打ち切って、違憲立法を進めたいのだろう。そうして、憲法の平和主義を放棄したいのだろう。これは、姑息なやり方である。
平和主義を放棄したいのなら、正面から堂々と憲法改正を提案すべきだろう。そうなれば、大多数の国民が反対するだろう。それを怖れているから、政治家としての誇りを捨てて、こそこそと姑息な手段を採って、平和主義を放棄しようとしている。
◇
農協法案も同じである。
政府は、農協法を変えれば、農業者は自由な経済活動ができるようになり、所得が倍増するという。そのために、農協を協同組合でなくしてしまえ、という。
だが、協同組合をなくすことが、所得倍増になる、という説明が全く不十分である。なぜ不十分にしか説明できないか。協同組合をなくせば、所得が倍増するどころか、所得は減少するからである。説明すればする程、所得の減少が明らかになる。
これは、経済的弱者が経済的強者の、自由で横暴な振るまいに、立ち向かう組織である協同組合の否定である。それは、戦後に強化された経済民主主義の否定である。
◇
TPPも同じである。
政府は、TPP交渉が妥結すれば、農業は成長産業になる、といっている。
だが、TPP体制になれば、輸入農産物で国内市場は溢れかえり、農業は衰退する。
それだけではない。世界に誇る日本の国民皆保険制度は破壊される。また、ISD条項で国家主権が奪われる。
だから、秘密交渉を重ね、国民に対する説明が不十分なままで、いや、不可能なままで、財界とアメリカが要求するTPP加盟を企んでいる。
◇
以上のように、政府は安保法制で憲法の平和主義を捨て、農協攻撃で協同組合の助長という経済民主主義を捨て、TPPで国家主権までもかなぐり捨てて、財界とアメリカに奉仕しようとしている。
そうして、一強多弱の政治状況のもとで、独裁色を強めている。いまは、戦後最大の民主主義の危機である。しかし、危機感を表明する財界人は1人もいない。アメリカは、沖縄問題でみられるように、日本の民主主義を苦々しく思っている。
こうした独裁体制は、長続きしないだろう。戦後70年間に培ってきた日本の民主主義は、それほど脆弱ではない。
(前回 ギリシャ問題にみる政治と経済)
(前々回 大連の凛とした女性たち)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日


































