「諸国民への不信」と「武力による威嚇」2015年7月27日
安保法制についての議論は、今週から参議院の場に移される。いま、国会は、多くの国民の、安保法制案反対の叫び声で包囲されている。
表題の2つの文言は、憲法の平和主義に関わるものである。
憲法の前文では、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」といっている。
また、9条では、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」といっている。
安倍晋三首相は、この平和主義を捨て、「諸国民への不信」と「武力による威嚇」を安保政策の基本に据えようとしている。
この考えは、競争に至上の価値をおき、競争に勝つためには如何なる手段をも使う、という点でTPPや農協攻撃に共通している。
首相は、なぜ安保政策を根本的に変えたいのか。
それは、わが国を取り巻く安保状況が根本的に変わったからだ、という。その結果、「平和を愛する諸国民」を「信頼して」いたのでは、わが国の「安全と生存を保持」できなくなった、と考えている。
だから、外交努力だけでは国際紛争を解決できず、抑止力を強め、「武力による威嚇」で、「国際紛争を解決する」しかない、と考える。
これは、憲法の平和主義の根本的な否定である。だから、堂々と憲法改変を提起すべきである。国民は拒否するだろう。
◇
憲法の平和主義は、平和を愛する全ての諸国民の公正と信義を信頼して、安全と生存を保持するものである。かりに、中国や北朝鮮や韓国が信頼できなくなったとしても、平和を愛する他の諸国民を信頼し、武力による威嚇ではなく、彼らと共同し、外交努力で紛争を解決しようとするのが平和主義である。
日本は、これまでこの平和主義を堅持することで、「国際社会において、名誉ある地位を占め」(憲法の前文)てきた。
今後、日本は平和を愛する全ての諸国民を信頼できない、となれば、逆に日本は平和を愛する全ての諸国民から信頼されなくなる。そうなれば、外交努力で国際紛争を解決できなくなる。
それほどまでに、安保状況が変わったというが、そうだろうか。そうではない。首相が、平和を愛する全ての諸国民を信頼しなくなった、というだけではないか。
◇
平和を愛する全ての諸国民を信頼しなくなったらどうなるか。国際紛争は、外交努力では解決できなくなる。解決するには、武力を背景にした抑止力に依存することになる。それが、首相の安保法制案である。
喜ぶのはアメリカ軍だけだろう。日本がアメリカといっしょになって、世界の正義の警察軍という名前の侵略軍の、一部の肩代わりをするからである。
しかし、東アジア諸国は、平和主義を捨てた日本、武力に依存する好戦的な日本、過去の侵略を正当化しようとする日本、そうした日本に対する不信を募らせるだろう。その結果、日本の安保状況を悪化させるだけだろう。
だから、この安保法案は、廃案にするしかない。
(前回 独裁者を目指す安倍首相)
(前々回 独裁化する自民党)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(1)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(2)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(3)2025年9月18日
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【全中・経営ビジョンセミナー】伝統産業「熊野筆」と広島県信用組合に学ぶ 協同組織と地域金融機関の連携2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
秋の交通安全キャンペーンを開始 FANTASTICS 八木勇征さん主演の新CM放映 特設サイトも公開 JA共済連2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
「いざ土づくり!美味しい富山を届けよう!」秋の土づくり運動を推進 富山県JAグループ2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日