【読書の楽しみ】第2回2016年5月10日
今月は廉価な本ばかりですがどれも良い本です。でももっと分厚いものをという方には中路啓太『ロンドン狂爛』(光文社、2268円)を。ロンドン海軍軍縮会議をめぐって政・官・軍が二派に分かれて争うスリリングな歴史小説で、浜口雄幸、山本五十六、東郷平八郎などが華やかに登場し、史実を知るにも格好の力作です。
★樋口陽一・小林節
『「憲法改正」の真実』
(集英社新書、820円)
憲法問題がにわかに騒がしくなってきました。安倍政権は安保法制では満足せず独自の憲法草案によって根本的改正を目論んでいますが、これに対しては圧倒的な数の学者が強く反対しています。
日本を代表する憲法学者である樋口東大名誉教授と、憲法改正論者としても有名な小林慶大名誉教授による対談本である本書では自民党の改正案が俎上に上りますが、自民党案では現憲法の「個人」が消え「人」と表記されていることへの両氏の危機感は強烈です。
緊急事態条項、九条問題、憲法における国民の権利と「義務」、憲法になぜ道徳を持ち込むべきでないかなどが縦横に論じられ、争点がよくわかります。
憲法に他人事ではいられないのは、民法や刑法よりも私たちにとって重要かつ身近なのが憲法だから。この本で知らされる事実は衝撃的で、わかりやすいけれども重い本です。ちなみに私の本は付箋で一杯になりました。また読み返さないと。
★保阪正康
『天皇のイングリッシュ』
(廣済堂新書、864円)
天皇皇后おそろいでの、サイパンやペリリュー島、国内では沖縄、広島、長崎への慰霊の旅、東日本大震災など被災地への精力的訪問には敬服するばかりですが、その根源の一つに皇太子時代のヴァイニング夫人による教育があったらしいことをこの本で知り大いに納得しました。
アメリカの初等教科書を教材に英語を教えただけでなく、夫人が「自分で考えよ」「ストロング・アンド・グッド」「主張せよ」ということを皇太子に伝えたことが、成人後の行動を規定したらしいというのは新鮮でした。
この原則は今の日本のリーダーにとっても重要なはずです。ぶれず、芯の強いお二人の存在は象徴天皇制にとって心強いことではないでしょうか。「自ら考える、強くて良質な人間」を私も目指さないと、と思った次第です。
★中央公論新社編
『教科書名短編 人間の情景』
(中公文庫、756円)
戦後の中学教科書に掲載された文学作品の中から人の生き様を描いた12編を収録した本書は、読者に意外な感懐をもたらしてくれるでしょう。
というのは「中学生が読む程度の」という偏見をこの本は見事に打ち破ってくれるからです。人生の機微、人の生き方、生きる意味など、ただ普通に生きている私たちに「がつんと一撃」的な小説が並んでいます。
司馬遼太郎の「無名の人」、森鴎外の「高瀬舟」「最後の一句」、山本周五郎の「鼓くらべ」など傑作ぞろいなので、親子で話し合うも良し、静かに自らの心に問うてみるも良し、でしょう。短編ながら余韻の残る作品ばかりです。
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