TPPと戦略特区、農地は危うくならないのか?2016年10月20日
◆安保法制より強引なTPP国会、実質審議なしで強行採決?
あまり目にしないので、農地問題をTPPに関連して少し触れて見たい。しかし、国会の情勢が着実に緊張への途を進み始めているので、まずは、そのことから入ることする。
TPP特別委員会の理事・委員を辞任した福井照氏に続き、18日には現職閣僚の山本農相が「強行採決は議院運営委員長が決める。だから駆け付けた」と自民党の佐藤議員のパ-ティで発言した。福井氏に習って農相を辞任するのだろうか?
40時間でと言われたTPP審議は17日までで36時間を費やしたとのことだ。しかし悪名高かった安保関連法案でも100時間以上の審議をしていた。そして、最近の世論調査では、大多数が「今国会で無理にTPP承認をするべきでない」となってきた。それでも安倍首相は米大統領選までに是が非でも可決に持って行きたいと拘っている。
安倍首相が目論んでいるのは10月28日の衆院可決だろう。でなければ31日だ。条約は、衆院可決後30日以内に(土日休日含め)参院で採決されなければ、自然成立することになっている。仮に参院で否決されれば、衆院に差し戻されてしまう。万が一の不安も払拭するためには、一応の会期末11月30日を前に最悪10月31日、ということになる。11月8日の前では駄目なのだ。
しかし、それまでに地方公聴会も参考人質疑もやるとなれば、残る審議時間は今週と来週で、下手をすれば2~3日しか無い。そして未だ国会では入り口と周辺部分のやり取りだけで、中味の議論は全くされていない。これでTPP衆院通過と言われても、いつ、何を審議したのかという気持ちしか残らないだろう。
益々ひどくなる安倍政権の立法府無視だ。
◆TPPと農地所有
ちょうどTPP協定の日本語訳が公表された3日後の2月5日、政府は国家戦略特区諮問会議で企業による農地所有を可能にする方針を確認した。そして先日10月13日の国家戦略特区の区域会議で、兵庫県養父市(限定で且つ5年間の時限立法)で初めての事例が許可された。2月に少し気になって、TPPではどうなっているだろうか探してみた。
9章(投資)の附属書Ⅱの10に「「外国人土地法」(100年以上前から手つかずの法律だ)についての留保措置(例外措置)として、「政令により日本国における外国人又は外国の法人による土地の取得又は貸借を禁止し、又は制限することが出来る。」とあったが、続けて「但し、日本国の国民又は法人が、その国において、同一又は類似の禁止又は制限を課されている場合に限る。」とされていた。つまり、日本人・法人に土地所有を認めているTPP参加国の企業による農地所有は可能ということになる。
国家戦略特区とTPPが一体となることで、更に窓を開けることとなる
養父市以外でも、日本に窓を開けている国の企業は、農地法の制約の範囲で50%未満の株式持ち分50%未満の権利を農地に対して持つことは出来る。しかし、農業特区(養父市)においては、TPP参加国の企業は、内国民待遇により50%超の持ち分を取得することが可能になると思われる。
そして気になるのは、5年間の時限措置として立法化された戦略特区での農地所有だが、5年間という措置と条約としてのTPPとどちらが優先されるのか、という疑問も残る。TPP参加国の企業が5年後の所有も主張あるいはISDS提訴の懸念はないのか、という点である。
さらに、日米両政府とも農業特区もTPP参加国も拡大したいと強い意向を持っているはずだ。既に日本企業だけでなく、ニュ-ジ-ランドのゼスプリの株主ジェイスの日本法人、マイキウイ社のような将来農業生産法人化や農地取得を目指す、予備軍となりそうな企業(15年5月3日日本農業新聞)も出てきている。
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