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【小松泰信・地方の眼力】安倍ドリルに負けない岩盤をつくる2016年10月26日

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【小松泰信 岡山大学大学院教授】

 今臨時国会最大の焦点ともいわれるTPPの承認案と関連法案が10月14日、衆院TPP特別委員会で審議入りした。安倍首相は今週28日までに衆院を通過させることを狙っている。参院での審議が遅れても11月30日の会期末までに自然成立するからだ。重大な局面にあるTPP審議について、新聞各紙がいかなる見解を示しているか、社説から検討する。岡山県立図書館にある地方紙29紙と全国紙5紙を閲覧した結果、関連内容が確認できたのは全国2紙(産経、読売)、地方15紙(東京、南日本、西日本、河北新報、北國、琉球新報、熊本日日、山陰中央新報、日本海、北海道、茨城、新潟日報、下野、神戸、岩手日報)であった。

◆資本主義経済は自縄自縛(じじょうじばく)に陥っている

 全国2紙は早期批准を求めている。
 まず産経は、「与野党ともに高水準の国産米価格の維持ばかりに目を向ける。TPPが消費者にもたらす恩恵など眼中にないのか」と、消費者重視の姿勢を強調。SBS(売買同時入札)問題については、「SBSでの輸入米流通量はわずかであり、国産米が大幅な値崩れを起こすとは考えにくい。多少の下落があっても、それをもってTPP承認を妨げる根拠とするのは納得がいかない」と、農業者軽視の姿勢。さらに、「高い関税で産業を保護する政策から脱却し、関税を原則的に撤廃した上で必要な国内対策に万全を期す」という、まさに新自由主義の主張を展開する。
 読売は、「貿易立国の日本は、参加12か国の承認の先陣を切ることで、TPP発効の機運を高めたい。...発効すれば、この高水準の貿易・投資ルールが次代の国際標準となる可能性が大きい。各国の保護主義の高まりを抑え、自由貿易を加速させることに寄与しよう」としたうえで、産経同様輸入米問題に言及する。「輸入米市場は国産米に比べ極端に小さい。野党がTPPの影響試算のやり直しまで求めているのは行き過ぎだろう」と、農業者軽視の姿勢で早期承認による自由貿易の加速を求めている。
 社説ではほぼ同じ主張であるが、産経よりも読売は少しだけ知的な香りを残しているようだ。
 読売は自由貿易体制が盤石ではないこと、いや一つ間違えば終焉を迎えかねないことを示唆している。10月21日の国際経済面は〝TPPに保護主義の壁〟との見出しで、自由貿易体制の揺らぎを取り上げている。「震源地」は世界の自由貿易を先導してきた米英、背景は「格差拡大」。自国製造業などを保護する機運の強まりを受け、「劇的なまでの貿易の鈍化は深刻。今こそ歴史の教訓に学び、開かれた貿易を再び進める時だ」というロベルト・アゼベドWTO事務局長の訴えを紹介している。そして「TPPを実現させて保護主義の蔓延を食い止められるか。世界経済は正念場を迎えている」と締めくくっている。
 この記事から伝わってくるのは自由貿易の危機的な状況であるが、誰のせいでもない。グローバル企業の論理に導かれた過度な自由貿易が、自らに危機的状況をもたらしているのだ。これこそが、今われわれが学び取るべき「教訓」そのものである。換言すれば、自由貿易は自縄自縛に陥っているのである。だとすれば、自由化にブレーキをかけて検証し、修正すべきところは修正するのが常識的対応。ギリギリの保護政策や各種規制に責任を転嫁して自由化を加速させるのは、グローバル企業の延命策以外の何物でもない。世界中の無辜(むこ)の民を巻き込むな。

◆冷静なまなざしの地方紙

 多くの地方紙は、世界経済の危機的状況を冷静に感じ取っている。
 先陣を切った東京新聞の内容は、「グローバル化の恩恵は明らかに富裕層に偏ってきた。もし恩恵が広く行き渡り、日米英など先進国で多くの国民の暮らしが上向いているなら、さらなる自由化は歓迎されるはずだ。先進国はこれまで進めてきたヒト、モノ、カネの自由化、グローバル化の負の側面を検証し、格差や分断を修復する時にきている。...国会で集中審議されるTPPの合意内容は交渉過程の不透明性、輸入米の調整金問題、食の安全など議論すべき課題を抱えている。国民の理解は進んでいない。自由貿易を取り巻く大きな変化も踏まえ、与野党には国民に分かる熟議を求めたい」と、要約される。地方紙の最大公約数的内容である。
 他紙における特徴的な指摘としては、〝甘利明・前担当相の参考人招致〟があげられる(南日本、熊本日日、山陰中央新報、日本海、茨城、新潟日報、神戸)。また〝グローバル企業に有利なルールが各国の規制に影響を与えるとの懸念もある。たとえば、遺伝子組み換え(GM)農産品。国民の健康や環境よりも、貿易上の利益が優先することがあってはならない〟(北海道)、〝日本政府は先に批准することで、米国の批准を促せると期待するが、米国が他国の働き掛けで政策を変更するとは考えにくい〟(新潟日報)など、慎重審議を求める声が多数である。
 
◆求められる岩盤づくり-キーワードは持続力―

 農業・農協問題に引き寄せて、アベノミクスやTPP問題を論じているのが、菊池英博氏の〝英国EU離脱の真意 強まる反・新自由主義〟である(日本農業10月24日)。
 氏によれば、アベノミクスは新自由主義政策そのもの。成長戦略は規制緩和と称して国民生活のセーフティーネットを破壊して国民の富を「1%の富裕層」に集中しようとする政策。農業改革は、米国の要求を忖度(そんたく)して農協と全農の株式会社化、農協の金融部門と経済部門の分離、流通機構の合理化と称して行う農協組織の分断が狙い。しかし、「天変地異の影響を受けやすい農業は資本の利益を優先する株式会社では成り立たない。TPPを米国に先立って批准しようとする日本は『反・新自由主義』の流れに逆らうもの」と、明快である。
 では、われわれはいかなる姿勢で反・新自由主義を貫けばよいのだろうか。
 この問いかけへの一つの回答を、内山節氏が示している(東京10月23日〝持続性のある国づくりを〟)。
 「『強い国家』という言葉を用いるとき、『強い』とは何を意味している言葉なのだろうか。いまの政権にとっては、強い経済力や強い軍事力をもつ国家が、強い国家なのだろう」で始まる論考は、強い経済力と軍事力を追求した結果が、先の敗戦による国家と社会の崩壊。ゆえに、強い国家ではなかった。そこで氏は、風雪にたえて〝持続できること〟が強さ、と結論づける。格差社会は持続的な社会ではない。TPPによって農村社会や医療制度などが大きく損傷したら持続性は後退する。アベノミクスに象徴される今の日本の取り組みを、「いっときの強い経済をつくろうとして、持続性のない経済をつくりだしてしまっている」と斬る。
 だとすれば、求められているのは、新自由主義の走狗たちの巧言にだまされないこと。官僚の恫喝に怯(ひる)まないこと。
 そして、地域に腰を据え、農林水産業を基盤とした持続力みなぎる〝岩盤〟づくり。そのための努力が、どれほど尊くよろこびに満ちたものか、どれほどの果実をもたらしてくれるものか、目に物見せる時が来た。覚悟しろ、安倍ドリル!
 「地方の眼力」なめんなよ

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