【コラム・キサクな老話】米は命の源泉 藁も2016年11月10日
天高く馬肥える候、農する者の1年の収穫をする忙しい喜びの季節であり、かつ迎える厳しい冬将軍に備える準備の時でもある。日本人のいのちの根源である水田は黄金が波打ち、里山はそろそろ錦の着物を着る準備に入る。いまのような万能的作業機械のない時代は尽力でこなすことになり、また単なる米だけを求めるのではなく、稲藁(わら)を含めての収穫である。
労働の集中と収量の危険の分散するために、粳(うるち)米、餅(もち)米の早生、中生、晩生と栽培。今と異なり、味によるランク付けもないし只管(ひたすら)病害虫に強い増収品種と藁加工のための草丈と藁の硬軟の改良であった。秋仕事は自然乾燥であるから、杭や稲架(はさ)が準備され田面乾燥する場合もあるが、秋の天候は雨が多いから、よほどのところでなければできない。
一面の田圃でも、一斉に出穂し登熟することはない。水口付近は冷水なのでどうしても遅れてしまう。尻水口をみれば刈り頃と思っても、水口は青いので後で刈ることが多い。毛をみて豊凶を想定するが、最初の鎌入れで、「豊」の時は刈り取るとつかんだ左手がぐらりと傾く。その重い穂の感触で今年はいいぞと仕事が弾むが、「凶」の場合はその感触がなく、重みもなく、落胆しながらの作業となる。
かつて中干しの考えはなく、稲刈りの時も田圃は軟弱であり、骨折り仕事であったが、稲一生がどれだけの水を飲んだかで味が左右されたと思う。水稲を陸稲にしてみればよく分かる。稲架などから稲束を、わが地域では納屋に収納して脱穀を行ったものであるが、藁のすべてを利用するためでもある。だから大きな納屋を持つ。
昔は今より雨空が多かったように思う。いずれにしても空をみながら家族総出での仕事となる。秋仕事は一番嫌いな仕事であった。それはゴミでシクシクと首から体が痒いのである。以前の稲は籾先の棘が長かったように思う。収納した稲を脱穀するが、その際に出る葉やミゴ(わらしべ)などの破片をチリと称し、これは馬の餌にする。
この頃になると青草もなくなるし、藁よりもいいと考えていた。ところが消化も悪く、この時期に食滞による「せん痛馬」がよく出たものだ。藁は大事な資源で、脱穀すると5,6把(ぱ)を束ねる仕事がある。新藁が出るとスペ(葉梢)を木綿袋に入れて藁布団にして、その上に布団を敷き、シーツ(垢とり)でパジャマなどないから裸で寝るが、それは抜群の暖かさで、これを一番待つのは年寄りで、喜んだものである。
藁は納屋に、あるいはニオにして高く積み上げるが、うまく積まないと崩れ、または雨が入り、使い物にならないから技術がいる。高くなると、積む人に、藁を投げてやるのが子どもの役目である。
藁の用途は限りないもので、冬仕事の大事な材料である。用途の主なものは、まず生産材
としての俵(たわら」をはじめ、袋もの、縄、飼料、生活材としての筵(むしろ)や燃料、文化財として注連縄(しめなわ)など、みごとな藁文化が展開されていた。
◇ ◆
江戸時代の鎖国でも立派な日本文化がその原動力は稲作であったからこそである。明治維新後、澎湃(ほうはい)として北九州で発生した改良稲作は、爆発する人口増を支えて近代日本の基礎を築いた。そして昭和初期にかけて、当時の脱穀に使用した脱穀機が、他社のものに比べ、農協組織で生産された脱穀機は頑丈で、学校用の実習田に現役で使用されている。藁仕事も6次産業化であったナー。
(写真)脱穀機
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