安倍訪米は何をもたらすか?2017年2月23日
◆似た者同士の安倍首相とトランプ大統領
安倍首相の訪米は、帰国後、 "良かった、満点だ、ホットした"など与党は勿論世論調査でも好意的評価・安堵の空気が漂っている。マスコミも経済対話についての懸念を伝えてはいるものの、全体的に好意的な紙面が目立つ。
しかし、日本は何を得たのか? と考えると具体的には何も無い。尖閣諸島への安保条約5条の適用はごく当たり前のことで(文書に載ったことは新しい展開だ)、駐留米軍経費負担の問題も現在75%超と言われる負担割合を増やせば日本のための傭兵化の色彩を強めるだけで得策ではないことは、マティス"将軍"にとっては当然だった。そして安倍首相や稲田防衛相にとっては、米国の"圧力"を利用して、防衛費のGDP対比1%の壁を突破し、防衛協力を拡大するチャンスでもあり、日米は利害を共有している筈だ。しかし、これは、"安保法制"に続く日本の防衛政策の新たな転換の途を進むという重大なことでもある。
そして一方、首相は新たな経済対話の開始というやっかいな問題を持ち帰った。「2国間FTAを回避した」と喜んでいい問題ではない。
2人の首脳は共に、思いこみが強く、威勢のよい掛け声を繰り出して、"やっている感"だけが目立つが、直接国民の安心を身近に実感させる目に見える成果については"やった感"の無いリ-ダ-で、これも共通する。見えるのは日米とも株価上昇だけかも知れない。
◆日米経済対話は譲歩の連鎖、譲歩の歴史
1972年の繊維交渉から始まる、ほぼ途切れの無い日米の経済に関する"対話"は、2016年のTPPでのコメの特別枠や並行する日米合意(両国間の書簡)に至るまで、"要求と圧力"を受けて交渉をし、結局"自主規制"や大幅な要求受け入れで着地するという歴史と言えよう。要求・圧力に対して、"対話"と称して受け身で応じる対話とは、関与の目的も姿勢もそもそも非対称で、国際間の対等な交渉とは言い難い。
米国の本音は2国間FTAで経済的果実を獲得すること、日本は防衛協力での米国の関与を担保する重しを期待するという筋書きだろう。その代償として農産物市場開放などのTPP水準のメリットを、米国に対してTPPによるコスト負担ゼロで提供する可能性が想定される。既に安倍首相は手の内を明かしてしまっている。これが安倍首相の"ウィンウィン"なのだろう。農業に限らず経済対話では、ほとんど日本の"ウィン"は期待出来ない。
◆求心力を失った経済連携、安倍首相は本当に"地球を俯瞰"しているのか?
既に、「TPPを批准することこそ2国間交渉の圧力を回避する最良の方策」という安倍首相の根拠なき思い込みは通用しなくなった。求心力が急速に衰え、どの国も確信を持っているとは思えない。上記の表を眺めて見ると、安倍首相も思い込みで威勢のよい"やっている感"を繰り出すのではなく、冷静に"地球を俯瞰"しつつ、今後の通商政策を考え直すべきではないのだろうか?
次は3月のチリでのTPP参加国などの閣僚会合、4月ペンス副大統領を迎えての日米協議が気になるところだ。
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