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【小松泰信・地方の眼力】人づくり革命と品格なき派遣2017年8月23日

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【小松 泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 お盆休みの帰省中、98歳の頑固親父と唯一共有できたのは、アベシンゾウ、スガヨシヒデ、イナダトモミらに対する怒り。戦争、原爆を体験し、教員生活を勤め上げ、今は口だけお達者クラブの一員であるが、その眼は節穴ではない。「首相が信頼できない」(51.6%)が安倍内閣不支持の最大の理由、という共同通信社(7月15、16両日実施)の世論調査結果がそのことを教えている。

◆目指すは〝右の革命政権〟に従順な人づくり

 信頼に価しない首相が率いる改造内閣の新しい目玉政策が「人づくり革命」とは、耳目を驚かす不出来なブラックジョーク。


 この首相、「総理、あなたは、どこの国の総理ですか。いまこそ日本が核兵器廃絶の先頭に立つべきです」と、長崎の被爆者団体代表から異例とも言える叱責を受けている(しんぶん赤旗、10日)。その報復か、はたまた恥の上塗りか、毎日新聞(22日)によれば、外務省は毎年8月に開催されるジュネーブ軍縮会議での「高校生平和大使」のスピーチを見送り、代わりに高見沢軍縮会議代表部大使主催の夕食会兼レセプションにおいて意見表明の機会を用意するそうだ。演説の機会は過去3年連続で与えられてきた。核兵器禁止条約が成立したこの年に、議事録にも残らぬ夕食会兼レセプションでの意見表明とは余興扱い。


 西日本新聞(20日)は、「政府が反対している核兵器禁止条約を平和大使が『推進すべきだ』と主張してしまうことを、外務省側が恐れたのではないか」と、関係者の推測を伝えている。〝忖度か官邸の最高レベルのご意向〟が働いたことは容易に想像できる。

 過去最多の署名21万4300筆を集め、英語によるスピーチを準備した高校生の努力と熱意を一顧だにしない連中に、平和な世界や国づくりを担える人材の育成はできない。できるのは、〝右の革命政権〟に従順な人づくりだけ。

 
 
◆グッと来たぜ! 愛媛新聞

 

 〝大仰な名称と思惑に強い違和感〟の見出しで、この革命について鋭く切り込んでいるのが愛媛新聞の社説(20日)である。


 「もう何枚目の『看板』なのかも分からなくなった。しかも、その意味するところは曖昧、空疎で、大仰過ぎる言葉に強い違和感と薄気味悪さを覚える」という書き出し。昭和の妖怪と呼ばれた岸信介(首相の祖父)とダブらせるような、〝薄気味悪さ〟という表現はなかなかのもの。「それにしても『革命』とは、政治の言葉として穏当、的確とは到底思えない」、「...政策の柱は、教育無償化、人材への投資による生産性の向上、多様な企業採用と高齢者雇用、社会人の『学び直し』、社会保障制度改革-の5項目という。何のことはない、既に掲げながらも未達成の政策メニューの焼き直し、寄せ集めにすぎない」と、ボディーに連打。


 担当大臣である茂木氏の「労働生産性の伸びが低い。人材の質を高める人づくり革命や、企業の生産性向上に取り組む」という発言から、「目的は結局『経済のため』であり、政権に都合のいい人材、つまりは文句を言わず生涯働き続けて国の経済に貢献する国民を養成したい、との思惑が露骨に透けよう。前の看板『1億総活躍』にも通じる政権の思想を強く危惧する」と、祖父譲りの頬袋にパンチ炸裂。「しかも首相は『これまで通り経済最優先』と訴えるが、少なくともこれまでは、多くの国民が望んでもいない特定秘密保護法や安全保障関連法、『共謀罪』法の成立強行に力を費やしてきたことを忘れてはならない。教育無償化も、首相が固執する『改憲の具』に使われる疑念が募る。必要ならば財源の議論を詰め、憲法と関係なく直ちに実現してもらいたい」と、テンプルに痛打(ここでセコンドからタオルのはずだが、アソーと半笑い)。とどめの一撃は、「...人を大切に育てることは最も重要な、だが最も困難な政治課題。問われるのは『つくる側』の資質である」と、格好いいことこの上なし。

 

◆この程度のカネでリスクを迫るとは

 

 もちろん農業やJAにとっても人づくりは重要かつ地道な永遠の課題である。当コラムも、「人材力強化と米百俵の真意」(3月22日)において、『農業競争力強化プログラム』の〝次世代人材投資〟と〝地域の農業経営塾と海外研修等〟に条件付き賛意を示した。


 その具体である青年就農給付金事業改め「農業次世代人材投資事業」は、次世代を担う農業者となることを志向する者を対象に、就農前研修を後押しする資金(準備型)と就農直後の経営確立を支援する資金(経営開始型)からなっている。準備型は年間150万円を最長2年間、経営開始型は年間最大150万円を最長5年間、それぞれ交付する。


 加速する農業従事者数の減少や高齢化のなかで、就農希望者に対する手厚い支援は不可欠である。ただこの制度、旧制度発足時から指摘されていたことではあるが、新規就農者に主眼を置き、親元就農者すなわち農家後継者には敷居の高い制度設計となっている。このため、新規参入者と親元就農者の間に少なからぬ亀裂を生じさせている。準備型では「就農後5年以内に経営を継承するかまたは法人の共同経営者になる」、経営開始型では「新規参入者と同等の経営リスク(新たな作目の導入、経営の多角化等)を負うと市町村長に認められること」などの条件が、親元就農者に課されている。その条件は、家に対しても農業経営の枠組み変更を求めている。敢えて言えば、この程度のカネで〝経営リスク〟をとることを迫っている。しかし、現政権下で就農することそれ自体、極めてリスキーであることから目を背けるべきではない。

 

◆親元就農応援事業による人づくりへの期待

 

 当該制度の問題点を補完すべくJAグループ愛知が、親元就農応援事業として2015、16年度に354人を対象に5億6880万円の助成を行っていることを、日本農業新聞(18日)が伝えている。狙いは、「新規就農者の中で、国の支援制度の対象外となる親元就農者を後押しすることで、産地の維持・発展につなげる」こと。就農時の年齢が45歳未満、親元農家の直系卑属またはその配偶者、中央会主催のセミナーへの参加、そして申請期間終了後から5年間のうちに所得向上に向けた取り組みを行う、などを助成要件に、年間120万円を最長3年間にわたり助成することになっている。


 「親元就農者のサポートに、JAが貢献できるのは良いこと。農家にも喜ばれている。この資金を元手に農業機械を買い替えたり、勉強に使ったり、新規就農者の成長に役立ててほしい」とは、JA豊橋の期待する声である。

 
 
◆スキを見せれば品格なき派遣の餌食

 

 毎日新聞(17日)の一面に自民党が、国内の過疎地で若者雇用確保に取り組む団体を自治体が「地域社会維持発展法人」(仮称)に認定し、政府が財政支援する新しい制度の検討に入ったことを伝えている。「法人が農林水産、建設、福祉などの地元産業に若い人材を派遣して人手不足を補う一方、若者側は各産業にまたがって働くことで一定の水準以上の収入を得られるようにし、定住を促すのが柱」とのこと。要は、過疎地産業若者派遣業の企みである。


 この程度の提案をするくらいなら、ふる里に戻り、長年培われた営農技術を学び、家、地域、そして農業を守り育てようとする親元就農者、さらには郷土愛にあふれた帰郷定住希望者たちをもっと評価し、手厚くサポートすべきであろう。


 さもなくば、人や地域の弱みに付け込む品格なき派遣業者の餌食となる。ヨダレが出てるよ、ヘイゾウ親分。

 「地方の眼力」なめんなよ

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