(050)アフリカは本当に雇用を創出できるのか?2017年9月29日
2017年9月17日、FAO(国連食糧農業機関)は、「農業および農村地域の非農業活動はアフリカで増加する若者の失業の解決策となることが可能」(注1)と題する簡単な声明を出している。これは、現在行われている国連総会の周辺で行われている各種フォーラムの中のひとつで出されたものである。
その中で、アフリカの人口増加に関連した興味深い内容を紹介しておきたい。昨年10月28日の本コラム(004号)においてアフリカを取り上げた際、「今後、人口1億人市場が複数誕生する」と記しておいたが、その現実的な状況を示す内容が出されている。私が最も印象に残った文章は以下の部分である。
"Although ten to 12 million young people join the labor force in Africa each year, only around three million jobs are created annually."
「現在のアフリカでは毎年、1000~1200万人の若年労働力が誕生しているが、毎年新たに創出される雇用はわずか300万人程度にすぎない。」(拙訳)
これは農業関係者だけでなく、全ての企業経営者にとって目を背けてはいけない非常に重要なポイントである。国連の見通しによれば、2016年時点でのアフリカの人口は約12億人だが、これが2050年には約25億人と倍増する。2100年までにはアジアの総人口約48億人と同水準の約45億人に到達する見込みである。ここまでは筆者も様々な機会を通じて述べてきた。
※ ※ ※
今回のFAOの声明は、食料をどうするか、という問題と同時に、実は増加する人口に対し、いかにして雇用を創出するか、という大問題に我々は直面していることを示している。その意味で、農業および農村に関わりを持とうとする農業「以外」の各種産業や政策当局には大きな可能性と、恐らくは「大きな責任」があるというのがFAOの言いたいことではないかと推察する。
例えば、生産施設だけでなく、輸送施設や保管施設などへの投資、金融機関の充実、人材養成、そして効率的なマネジメントなどを合わせて行えば、恐らく将来のアフリカが直面する大問題に対し、農業部門からも一定の貢献は可能であろう。
一方で、近年および今後の各種技術の進歩を想定すれば、より少ない人数でより大きな農場を管理し、大量の農産物を生産、加工、保管、輸送することも可能になるであろう。
その場合、増加した人々はどのような仕事に就くことができるのであろうか? 一般的には生活水準の向上とともに教育水準も向上し、労働力の主体はいわゆる第1次産業から第2次産業、そして第3次産業へとシフトしていく。
※ ※ ※
日本の場合を振り返ってみよう。1920年には就業者総数は約2726万人であり、産業の3部門別就業人口割合は第1次産業54%、第2次産業21%、第3次産業24%であった。
これが、1960年になると、約4400万人のうち順に33%、29%、38%となる。1970年には5259万人が19%、34%、47%となり、1975年には総就業者数5314万人のうち52%が第3次産業に従事している形となっている。1985年にはついに第1次産業の割合が9%と1割を下回り、2000年には5%、2010年の3部門別就業人口割合は各々4%、24%、67%となっている。
具体的な数字の推移については、以下の頁を参照して頂きたい。
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2014.asp?fname=T08-07.htm
※ ※ ※
これを見た素直な感想は、まず、「日本の農家と農業は物凄く頑張っている!」ということである。今や全就業者数の9割以上が第2次、第3次産業に従事している中で、日本の食料は、本当にわずかな人々により支えられている現実をよく踏まえる必要がある。
同じ視点で考えた場合、将来のアフリカはどうなるのだろうか? 現在のアフリカでいわゆる第1次産業に従事している人の割合が何割位かは残念ながら筆者もよくわからない。農水省の古い資料を見ると、サハラ砂漠以南の地域では「農業のGDPに占める割合は平均で16%(2005)に達し、農業就業人口も58%(2004)と非常に高い」などという記述を見つけることが出来たが詳細な数値は不明である。恐らくは農村人口が依然として6~7割程度ではないかと推測するレベルである。
さて、日本は第1次産業の従事者が10分の1になるまでに約80年という時間を必要としたが、今後、アフリカはどうなるのだろうか? そして、アフリカの第2次、第3次産業は今後、急速に増加する労働力を受入れ可能な雇用を創出することが出来るのだろうか?
事は食料、人の生命に直結する以上、OA化とペーパーレス化を進めた結果、コピー数が増えたような事態に陥らないことを切に望む次第である。
注1:FAO,"Farming and rural non-farm activities can provide solutions to rising youth unemployment in Africa".
アドレスは、
http://www.fao.org/news/story/en/item/1038681/icode/
(閲覧日:2017年9月22日)
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
【年頭あいさつ 2026】食料安全保障の確立に全力 鈴木憲和農林水産大臣2026年1月1日 -
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日


































