反省のない自公政権2017年10月16日
先日の新聞各紙は、自民党の総選挙での堅調を伝えていた。その一方で、希望党は失速したという。
選挙運動をみていると、自民・公明の与党は、しきりに国難を訴えている。北朝鮮の脅威と、少子高齢化だという。この国難に立ち向かうには、いまの安保法制が必要だし、教育の無償化が必要だという。そして、この国難に対処するのは、安定した自公政権しかない、と叫んでいる。四分五裂した野党には任せられない、というわけである。
しかし、こうした事態を招いたのは自公政権である。だが、両党とも反省する気配はない。
このように、与党は国難を煽ることで政権の維持を図っている。これほど危険なことはない。そうして、いまのところ、この選挙戦術が成功しているようだ。
北朝鮮の脅威に対する政府の方針は、軍事力を含む圧力を強めることで、北朝鮮を話合いに引き出す、というものである。そういって、話合いを否定している。
◇
この方針は、アメリカの方針に追随したものである。そして、本HPで孫崎亨氏が指摘したように、アメリカは、この方針にしたがって、軍事費を増やして軍事産業をうるおし、いまアメリカ経済は北朝鮮特需に沸いている。つまり、北朝鮮の脅威を強調することは、アメリカの経済的強者の利益に直結している。日本の強者は、そのおこぼれを期待しているようだ。
だから、強者を代弁する自公政権は、話合いという外交努力を否定するし、弱者を戦争の危険にさらして、強者の利益のために、危機感を煽っている。
戦争の犠牲になるのは、いつも99%の弱者なのである。
◇
先日、ロシアの高官は、北朝鮮は草の根を食ってでも、圧力には屈しないだろう、といった。北朝鮮だけではない。誇りある人間なら、誰でもそうするだろう。
にもかかわらず、政府は北朝鮮に圧力をかけて話合いに引き出す方針である。ここには安倍晋三首相の排外的で好戦的な人柄がにじみ出ている。
それに加えて、安倍首相の朝鮮人強制労働の否定、A級戦犯の尊崇という歴史観は、北朝鮮だけでなく南の韓国も受け入れない。だから、話合いには応じないだろう。
それゆえ、北朝鮮の脅威という「国難」を取り除くには、安倍首相が反省するか、それが出来ないなら辞めてもらうしかない。
◇
もう1つの「国難」は、少子高齢化だという。
これは、自然現象でもないし、突発現象でもない。以前から分かっていた人為の社会現象である。それをもたらした責任は、政治にある。長いあいだ放置してきた自公政権に、その根本的な責任がある。この責任を自覚して根本的な解決を目指すのではなく、目先の教育の無償化などで誤魔化すのは、無責任で、不誠実といわざるを得ない。
誤解がないように言っておくが、教育の無償化に反対なのではない。この問題の根本原因に目をそむけて、目先の選挙めあての人気取りに反対なのである。
◇
根本原因は格差の拡大である。自公の市場原理主義政治にその根本原因がある。中間層の貧困化によって、国民の99%の農業者や労働者や中小企業主は、経済的弱者に落とされ、経済的理由で、子供たちを充分に養育できなくなってしまった。
ここに目を向けて反省し、その上で教育についての政治の責任を果たすべきである。それなら大賛成である。
同じ日の新聞各紙は、立憲党の躍進を伝えている。
総選挙まで、まだ1週間ある。弱者と強者との激しいせめぎ合いがつづく。弱者は、99%の弱者のための3野党の健闘を期待している。そうして、1%の強者のための自民・公明・希望・維新の各党に鉄槌を下すだろう。
(2017.10.16)
孫崎 亨氏の記事は
https://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2017/171012-33813.php
(前回 総選挙の立候補状況にみる希望の党)
(前々回 希望の党に問う格差問題と平和主義)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日