自民党の第2党化が民意2017年11月27日
衆議院選挙の結果を、当選者数だけでみると、自民党が全議席の61%を占めたのだから、自民党の圧勝のようにみえる。
しかし、以下で述べるように、この結果は、見せかけの圧勝だった。国民の意志に基づき、それを忠実に反映した圧勝ではなかった。
民意を忠実に反映する比例区の得票数をみると、とうてい圧勝とはいえない。自民は1856万票しか得票していないのに、前民進の立憲の1108万票と希望の968万票を足し算すると、2076万票になって、自民より多くなる。だから、民意に基づけば、前民進の勝ちで、自民は惜敗だった。
つまり、民意は民進が分裂しないで、第1党になり、自民が第2党に転落することを求めたのである。そうすれば、農業者などの弱者を痛めつける自民一強政治から脱出できる。
また、自民に公明を足した得票数は2554万票だが、前民進に共産と社民を加えた4野党の得票数は2610万票になって、自公より多くなる。
つまり、民意は政権交代を求めたのである。
上の表は、2つに分かれている。
1-3列は、実際の結果である。ここで注目すべきは、民意を忠実に表す2列の比例区の結果である。比例区では、自民は66議席だが、前民進の立憲と希望を足すと69議席になる。つまり、自民は、比例区では前民進に負けていた。しかし、小選挙区での偽りの圧勝が全体の圧勝をもたらした。
4、5列は、比例区の得票数が民意と考えて、その民意をみたものである。4列は、5577万人の国民が投票所へ行って、自分の手で実際に〇〇党と書いたものを、総務省が集計したものである。5列は、この得票数に忠実に議席を配分したときの、党派別の議席数である。
◇
この表から分かることが、大きく2つある。1つは、小選挙区制の民意からの歪みである。もう1つは、民進党の分裂がこの歪みを大きくしたことである。この2つが重なって、結果を民意から大きく乖離させ、自民を圧勝させたのである。
もしも民進が分裂しないで、かつ、民意に忠実な選挙制度だったらどうなったか。それが5列である。
5列で示したように、民意に忠実な選挙制度だったら、前民進の立憲の92議席と希望の81議席を足すと173議席になる。だから、自民党の155議席よりも多くなる。つまり、民進が分裂しなかったら、民進が第1党になり、自民は第2党に転落する。そして第1党の党首が首相に指名される。また、4野党の議席は218議席になり、自公の213議席より多くなる。つまり、政権が交代する。
民意は、こうなることを期待していたのである。
◇
しかし、自民党が第1党になった。この事実は否定できない。だからといって、つぎの選挙まで手をこまねいていることは出来ない。その間、農業者など弱者の苦難が続くからである。
野党ができることは、つぎの選挙を見据えた選挙協力のための協議である。協議がまとまり、選挙協力が成功すれば、野党が圧勝することは、充分に可能である。上の表でみたように、民意はそのことを示している。
そのために、野党がなすべきことは、今すぐにつぎの選挙協力のための協議を始めることである。選挙が近づいてからでは遅い。また、そのために、なすべきことは、選挙協力のための政策協議である。
新聞報道によれば、先週、野党系の農政懇話会が発足した(日本農業11.23)。こうした野党の動きが、つぎの選挙協力のための政策協議の農政版作りの機会になるだろう。そのためにも、この懇話会が国会議員だけの会ではなく、各政党の地方支部や地方の支持者など、農村の現場に根ざした会になることを期待したい。
こうした動きが圧勝した自民一強の農政を牽制して、農業者の苦難を和らげるだろう。
歓迎し、期待を込めて注目したい。
◇
最後に、もういちど言っておかねばならない。
初めに言ったように、自民に投票した人は1856万人だった。この人たちが日本の1億2672万人の、今後4年間の命運を決めたことになる。1人で7人の命運を決めたのである。
これは民主主義ではない。日本の小選挙区制を主にした選挙制度を改革して、民主主義をとり戻さねばならない。急ぐ。
(2017.11.27)
(前回 6野党の勝利方程式)
(前々回 自民党の農村離れ)
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