(059)バリュー・チェーン:1ドルを分解すると...2017年12月1日
米国農務省の機関紙『Amber Waves』、2017年10月号に「Follow the Food Dollars」(注1)という記事が掲載されている。本文は注で示したウェブサイトで読めるが、ここでは内容を簡単に紹介する。
要は、米国人1人が1ドルを農業・食品産業に支払うとすると、その中身は分野別にどの位のウエイトになるかという内訳を示したものである。
見出しの主張は、「2015年に米国人が食品店舗や外食等で支出した金額が1.6兆ドル!そのうち、2000億ドルがスペインのワインやチリのブドウなどの輸入食品・飲料で、1.4兆ドルが米国内で生産された食品・飲料」である。
内容を細かく見ると、米国内で生産された食品・飲料には、完全に米国内で生産されたものと、原材料自体は外国産でも、それを米国内の食品加工工場で加工したものがある。
ざっくり言うと、総支出金額のうち、米国産への支出が87%、輸入品への支出が13%であり、米国産の87%は完全な米国産が82%、外国産の原材料を米国内で加工したものが5%という構成である。例えば、カナダから輸入したクランベリーを米国内の工場でジュースにした場合、製品としては米国産になるからだ。
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さて、仮に食品のフードシステムを農場から小売りまで(本来は家庭における消費とリサイクルや廃棄までが必要であろうが)とした場合、1ドル(示されている表では0.995ドル)の支出はどの位の割合で各分野に行き渡るかの分析が興味深い。簡単に言えば、これがバリュー・チェーン(価値連鎖)の表である。どの部門にどれだけのコストがかかり、どれだけの付加価値を生みだしているかがわかる。以下がその内容である。

これを見ると、約3分の1がフードサービスであることがわかる。その内訳で最も多いものは従業員の人件費で¢20.1、フードサービス全体が生み出している付加価値の62%に達している。フードサービスの内訳のその他は、税引き前利益が¢8.7、輸入および税金が¢3.7である。
これに対し、農場・アグリビジネスの合計¢8.7の内訳は、利益が¢6.0、輸入および税金が¢0.9、人件費が¢1.8であり、人件費の割合は21%と、フードサービスの3分の1である。少し硬い表現を用いれば、フードサービスは労働集約的な仕事、農場・アグリビジネスは資本集約的な仕事ということになる。
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日本におけるこれと同じようなわかりやすい図は、本年度の『食料・農業・農村白書』に掲載されている。こちらは「農産物の流通形態による生産者受取額等の違い(試算)」と題され、市場流通と直売流通の双方において、キャベツ1玉を事例にして生産経費、生産者利益、流通経費が項目別にどの位になるのかを比較している(注2)。
この手の比較は、ある瞬間を切り取ったスナップショットのようなものがわかりやすいが、本来は時系列の比較と、諸外国との比較という異なる比較軸をいくつか設定した上で多角的かつ包括的に検討することが望ましい。
また、外国との比較が必要とは言え、昨年秋以降の農協改革の議論の中で散々示されたように何でもかんでも特定の国と比較すれば良いというものでもない。まして対象国の産業分野の全てが我が国に比べて規範とすべきかどうかの議論すら無い状況で、都合の良い時に都合の良いデータだけを持ちだして高いとか安いとかいうことを繰り返していては長期的な戦略を描くどころの話ではなくなり目の前の対応に終始することになる。切り取ったバリュー・チェーンの背景の構造を見抜き、それを中長期的に競争力ある仕組みに修正していくには大胆で慎重かつ緻密な議論と作業が必要である。
注1:Canning, P., "Follow the Food Dollars", Amber Waves, USDA, October 2017.
注2:農林水産省「平成28年度 食料・農業・農村白書(平成29年5月23日公表)」の概要、3頁。
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