世論を歪める世論調査2017年12月18日
最新の政党支持率を、先週NHKが発表した。それによると、自民党は38.1%でダントツである。それに対して、野党第1党の立憲民主党は7.9%で5分の1程度しかない。
こうした世論調査の結果は、NHKだけではない。多くのマスコミも、同じような結果を発表している。マスコミは、こぞって自民一強を強調し、野党の弱さを際立たせている。野党に対して、ムダな抵抗は止めよ、といいたのだろう。そうして、強者の立場に立って、弱者を挫き、弱者をあざ笑っているようだ。
だが、これは真実を表していない。

上の表は、NHKが先々週の8-10日に行った世論調査のうち、政党支持率をみたものである。調査に回答した国民は、僅か1248人だった。
結果をみると、トップは自民の38.1%で、第2党の立憲を大きく引き離している。旧民進の立憲と希望と民進を合わせても10.1%にしかならない。希望はついに1%台になってしまった。
これが、国民の政党支持の実態だろうか。きわめて疑わしい。
◇
表の右側は、10月の衆議院選挙の比例区での政党別の得票率である。5576万人の国民が投票所へ行って、自分の手でOO党と書いて投票したものの集計結果である。これが政党支持の実態とみていい。
この2つの数字をみると、この2か月の間に旧民進党の3党の支持率が37.3%から10.1%へ急に下がったことになる。だが、これほど大な急落が実際にあったとは、とうてい思えない。
無党派の34.1%と無回答の6.9%の人たちが問題である。この合わせて41.0%の人たちが、実際に何党を支持するかで支持率は大きく変わる。トップが代わることもあり得る。
上の表の左側にある、世論調査による政党支持率の推定は、こうした、あやふやな推定なのである。
◇
さて、世論調査をして政党支持率を推計する目的は、いったい何か。
それは、国民の内心にある政党支持を推測するためではないだろう。それをみて、結果の心地よさを味わうためではない。
調査の目的は、国民がどんな政策を望んでいるか。そのためにどんな政治行動を起こして現政権を支持し、または支持しないで打倒するか。そのために、つぎの選挙で何党を支持して、その政党に投票するか。それを知りたいことが調査の目的である。
だから、無党派層が実際に何党に投票するかで結果が大きく変わる、などという世論調査は無意味である。肝心なところから逃げている。だから、せいぜい与党の支持率が大きくなったか、小さくなったか、という程度のことが、しかも不確かにしか分からない。だから、一喜一憂しない、などと陰口を叩かれている。
◇
マスコミの世論調査に求めたいのは、国民がどんな政治を求めているか、そして、どんな政治を目指す政党を支持しているか、である。無党派層の動向で政党支持率が大きく変わる、などいう無責任な言い訳ではない。強者にとって心地よい結果を発表して、強者を満足させることではない。
この点で一歩進めているマスコミがある。ここでは、政党支持に加えて、「仮に今、衆議院選挙の投票をするとしたら、あなたは、比例区ではどの政党に投票したいと思いますか。」という質問をして、いわゆる無党派の数を減らしている(朝日)。このような工夫をして実態に迫ろうとしている。他のマスコミも見習ってはどうか。
マスコミは、強者に媚びて、農業者など弱者の声に目をつむるのではなく、弱者の苦悩の声を正確に伝えねばならない。
(2017.12.18)
(前回 卸売市場法は弱者の砦)
(前々回 野党は統一農業政策を作れ)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【年頭あいさつ 2026】食料安全保障の確立に全力 鈴木憲和農林水産大臣2026年1月1日 -
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日


































