秋田おばこの教訓2018年3月26日
本紙の3月10日号で秋田おばこ農協のコメの販売問題が紹介された。この問題は農協の販売事業に共通な教訓でもある。理事会の審議のあり方、共同計算や会計に関する事務処理などの指摘もされているがコメの販売による未収金の問題に焦点を絞って問題点を見てみる。
販売事業のイロハは販売代金の回収である。代金を回収して始めて「販売が完了」する。高値でたくさん売ってもそれだけでは「販売をしたつもり」であり、代金が入らなければプレゼントをしたか詐欺に引っかかったかである。
新規に取引をする場合は専門の調査機関を使って信用調査をして売掛金の残高はいくらまでとする「信用限度額」を設定する。販売先からは信用限度額に応じた担保を預かる。担保物件が取れなければ経営者の個人保証をしてもらう。担保や個人保証は相手が一部上場の大企業の場合も要求する。販売事業は先ずこのような交渉から始める。
販売をして代金の回収が遅れて売掛債権が信用限度額を超えたら販売をストップするか、追加の担保を交渉する。これが与信管理である。一般的に売り手は買い手よりも立場が弱く、他の業者、商社などとの競争も厳しいのでこのような与信管理をしながらの販売はしんどい仕事であるがここをしっかりやる仕組みにしないと回収不能な債権を背負うことになる。
現在の販売事業は「作ったものを売る」から「売れるものを作る、マーケット・イン」の時代となり、インターネットによる実需者への直接販売など多種多様な販売先への対応があるが、代金の回収については上記の与信管理の原則は同じとする。コメ以外の野菜、果実、花卉、畜産物も同じルールで行う。
地域の農産物は先ず個々の単協が責任をもって販売をする。単協だけでは出荷時期、数量に限界があるので県連や全農がサポートをする。
農協の販売事業はこの様な仕事が出来る担当者が不可欠である。多様な販売の現場を経験することでベテランとなる。農家の負託に応えて業者に負けない販売事業の出来る人材を育てることである。
これが組合長と理事会の役割。
(関連記事)
・優越的地位の実態調査結果 フード連合(18.03.26)
・揺れる米生産の現場 JA秋田おばこ問題(18.03.08)
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日