「朕は法なり」に誘惑される安倍首相2018年4月9日
「朕は法なり」はルイ14世の迷言である。安倍晋三首相も「朕は法なり」といいたいようだ。
「朕」は、帝王の第1人称だが、首相は、帝王のように振る舞いたいのだろう。そうして、国民と国会を無視し、邪魔な法を無視し、首相が心の中で思っていることを全て法にして、政治を動かしたいのだろう。そうした誘惑に駆られているようだ。
首相が「朕」ならば、周囲の部下たちは、首相の心の中を忖度して行動する。そうすれば、不法なことも合法になる。首相にとって不都合な議論は避けられる。かくして、忖度政治が横行し、やがて専制政治へ堕ちていく。
だが、専制政治がいつまでも続くはずがない。そうした安倍一強政治の終わりは近い。
森友問題の場合と、日報問題の場合を推察してみよう。
森友問題の場合、首相は、皇国史観で教育する森友学園に国有地をなるべく安く売ってあげたい、と心の中で思っていただろう。できれば、法の目をかいくぐって、そのようにしたかった。それができなければ、法を破ってでも、そのようにしたかった。
そうした首相の心の中を忖度した部下の政治家や官僚たちは、安売りのための悪知恵を絞った。そうして、合法的に安売りする方法がないかと考えた。しかし、悪知恵が出て来ない。だからといって、法をあからさまに破るわけにはいかない。
そこで考えついたのが、事実の捏造である。つまり、ありもしないゴミが地下にあることにして、その撤去費用を売値から差し引いて、タダ同然で安売りした。
これは、紛れもなく不法である。忖度して合法にしようとしたが、ウソが露見して失敗したようだ。
この際、誰が、いつ、どんな方法で、という問題を追及して不法を確定することは重要だが、それで終わってはならない。こうした帝王のもとでの忖度政治を終わらせねばならない。
◇
自衛隊の日報の隠蔽問題の場合はどうか。
首相は心の中で、自衛隊を普通の軍隊にし、海外に派兵して、敵と戦闘させたい、と思っているようだ。だが、それでは憲法違反になる。
そうした首相を忖度して、部下たちが考えついたのが、戦闘地域には派兵しない、というものである。
この「戦闘地域」は、いいかげんなもので、当時の首相(小泉純一郎氏)は「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域...」と言い放っていた。小泉元首相も「朕は法なり」と言いたかったのだろう。
また、とうとう隠蔽しきれなくなった南スーダンの日報問題で、当時の防衛相(稲田朋美氏)は、日報でいう「戦闘」は戦闘ではない、という訳の分からぬ答弁をした。
ここで追及すべきは、公文書の改竄や隠蔽だけではない。首相の心の中を忖度し、文民統制という安全保障上の重大事を犯すまでして得ようとしたものは何か、という点の追及である。
それは、自衛隊の任務を自衛の範囲から広げて通常の軍隊にし、海外での戦争に参加できるようにすることではないか。それは、戦後日本の平和主義を放棄することになる。
この時の自衛隊の役割は、法を無視して独走し、そのあとで内閣に追認させる、というものだろう。つまり、内閣を軍部の傀儡にすることだろう。
首相が唱える「戦後レジームからの脱却」が目指しているのは、こうした戦中・戦前の、暗黒な軍部独裁政治の復活ではないか。
これが先走った杞憂で終わることを、与野党を問わず、心ある政治家とともに、痛切に祈っている。
◇
農政の分野でも忖度政治がはびこっている。
農業の実態を知らない面々を、規制改革推進会議に集め、首相の心の中を忖度させて、現実ばなれした提言をさせる。その提言を、首相官邸をとおして農水省が実施しようとする。
こうした構図のもとで、与野党の農林族は力を失い、現場の実情を無視した農政が横行している。そうして農村の現場を混乱させている。
こうした忖度政治は、一刻も早く終わらせねばならない。忖度ではなく、活発な、民主的な議論を復活して、政治を活性化しなければならない。
(2018.04.09)
(前回 森友問題の中休み後の課題)
(前回 森友問題追及の本丸)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】とうもろこしにアワノメイガが多誘殺 早めの防除を 北海道2025年7月1日
-
【人事異動】農水省(7月1日、6月30日付)2025年7月1日
-
作況指数公表廃止よりもコメ需給全体の見直しが必要【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月1日
-
【JA人事】JAセレサ川崎(神奈川県)梶稔組合長を再任(6月24日)2025年7月1日
-
【JA人事】JA伊勢(三重県) 新組合長に酒徳雅明氏(6月25日)2025年7月1日
-
米穀の「航空輸送」ANAと実証試験 遠隔地への迅速な輸送体制構築を検証 JA全農2025年7月1日
-
JA全農「国産大豆商品発見コンテスト」開催 国産大豆を見つけて新商品をゲット2025年7月1日
-
産地直送通販サイト「JAタウン」新規会員登録キャンペーン実施2025年7月1日
-
7月の飲食料品値上げ2105品目 前年比5倍 価格改定動向調査 帝国データバンク2025年7月1日
-
買い物困難地域を支える移動販売車「EV元気カー」宮崎県内で運用開始 グリーンコープ2025年7月1日
-
コイン精米機が農業食料工学会「2025年度開発賞」を受賞 井関農機2025年7月1日
-
「大きなおむすび 僕の梅おかか」大谷翔平選手パッケージで発売 ファミリーマート2025年7月1日
-
北海道産の生乳使用「Café au Laitカフェオレ」新発売 北海道乳業2025年7月1日
-
非常事態下に官民連携でコメ販売「金芽米」市民へ特別販売 大阪府泉大津市2025年7月1日
-
農作物を鳥被害から守る畑の番人「BICROP キラキラ鳥追いカイト鷹」新発売 コメリ2025年7月1日
-
鳥取県産きくらげの魅力発信「とっとりきくらげフェア」開催 日本きのこセンター2025年7月1日
-
鳥インフル 英国チェシャ―州など14州からの生きた家きん、家きん肉等 一時輸入停止措置を解除 農水省2025年7月1日
-
新潟県長岡市から産地直送 フルーツトマト「これトマ」直送開始 小海工房2025年7月1日
-
埼玉県毛呂山町、JAいるま野と包括連携協定を締結 東洋ライス2025年7月1日
-
空き家をキクラゲ栽培施設に リノベーション&借上げで運用開始 クールコネクト2025年7月1日