【読書の楽しみ】第25回 2018年4月15日
◎マイケル・ウォルフ
『炎と怒り』
(早川書房、1944円)
欧米で大ベストセラーになったトランプ政権の内幕本が邦訳されたのでご紹介しましょう。トランプの寝室にはテレビが3台あるとか、あの奇妙な髪型の秘密とか、細部の情報もなかなかですが、ホワイトハウスの人間関係も瑣末な事実の積み重ねが多く、テレビ、髪型と大同小異です。
実際、トランプ政権の実態は混乱の連続で「混迷と戦い」のほうが書名にふさわしいのでは。トランプ対政権スタッフ、娘夫婦対バノン、政権対メディア、スタッフ同士などの戦い(というより策謀、告げ口、感情論)の連続で超大国の政権としてはひどすぎます。
主な政権関係者22人のうちすでに13人が辞めていますが、これほど政権が混迷しているのは大統領本人、夫人、娘夫婦、側近の誰一人としてトランプ当選を夢にも思っていなかった、その後遺症が続いているということのようです。
それにしてもまともに本を読んだこともない、新聞すら読み込んでいるか疑わしい大統領が、核や移民や医療の問題を決定する国って大丈夫なのか。
安倍外交も蜜月だけで心配はないのでしょうか。そして安倍首相は本書を読んだのでしょうか。ホワイトハウスの惨状を知って日本はまだましなどと思っては困りますけれど。
◎佐藤優
『ファシズムの正体』
(インターナショナル新書、756円)
ファシズムといえばヒトラー、ムッソリーニ、東條英機をすぐ連想しますが、著者は真のファシストはムッソリーニだけだと断言しています。ちょっと意外ですね。
ファシズムの語源であるファッショはイタリア語辞書には結束とか束ねるとかあり、ムッソリーニが1919年にミラノで「戦闘ファッショ」を結成したのがファシズムの最初の動きなのだとか。
ムッソリーニは階級闘争を否定し労使協調を主張しました。社会党が政府と妥協したため労働者の失望を買い漁夫の利で政権を握ったファシスト党は、資本主義も社会主義も否定して第三の道を追求します。最終的にナチスと手を握りますが、ナチスのような民族差別政策は取りません。黄禍論にはくみせず親日家だったそうです。
そして今、排外主義とグローバリズムが猛威を振るっています。これはファシズムの温床、前兆だと著者は警告します。日本も例外ではない。憲法や安保だけ警戒すればファシズムが防げるわけでないことがわかります。
◎吉野源三郎原作・羽賀翔一
漫画 『漫画 君たちはどう生きるか』
(マガジンハウス、1404円)
半年で200万部というのは驚きです。『窓際のトットちゃん』以来の快事かもしれません。吉野源三郎の著書は岩波文庫でロングセラーとなっており、改めて漫画本を買うまでもないと思っていたのですが、あまりの勢いに押されて初版から半年も経ってしまったものの思い切って購入してしまいました。
漫画そのものは大人が大いに楽しむというほどのものではない感じですが、中高生には自然に原作の世界に入っていくには格好かと思われました。
問題は叔父さんがコペル君(叔父さんがコペルニクスにちなんで付けたニックネーム)に人生の生き方についていろいろ助言するところを漫画でどう描くかだと思っていましたが、この部分は漫画でなく文章を連ねて構成されています(漫画8、文章2の割合です)。
で、中高生にはせっかくの文章部分を読み飛ばさないでほしい。書店では子や孫のために買い求めていく大人が目立ったそうです。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(164)-食料・農業・農村基本計画(6)-2025年10月18日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(81)【防除学習帖】第320回2025年10月18日
-
農薬の正しい使い方(54)【今さら聞けない営農情報】第320回2025年10月18日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第114回2025年10月18日
-
【注意報】カンキツ類に果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(1)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(2)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(3)2025年10月17日
-
25年度上期販売乳量 生産1.3%増も、受託戸数9500割れ2025年10月17日
-
(457)「人間は『入力する』葦か?」という教育現場からの問い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月17日
-
みのりカフェ 元気市広島店「季節野菜のグリーンスムージー」特別価格で提供 JA全農2025年10月17日
-
JA全農主催「WCBF少年野球教室」群馬県太田市で25日に開催2025年10月17日
-
【地域を診る】統計調査はどこまで地域の姿を明らかにできるのか 国勢調査と農林業センサス 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年10月17日
-
岐阜の飛騨牛や柿・栗など「飛騨・美濃うまいもん広場」で販売 JAタウン2025年10月17日
-
JA佐渡と連携したツアー「おけさ柿 収穫体験プラン」発売 佐渡汽船2025年10月17日
-
「乃木坂46と国消国産を学ぼう!」 クイズキャンペーン開始 JAグループ2025年10月17日
-
大阪・関西万博からGREEN×EXPO 2027へバトンタッチ 「次の万博は、横浜で」 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月17日
-
農薬出荷数量は0.5%増、農薬出荷金額は3.5%増 2025年農薬年度8月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年10月17日
-
鳥取県で一緒に農業をしよう!「第3回とっとり農業人フェア」開催2025年10月17日
-
ふるさと納税でこどもたちに食・体験を届ける「こどもふるさと便」 IMPACT STARTUP SUMMIT 2025で紹介 ネッスー2025年10月17日