"三選"に向ってひた走る安倍総理の危うさ2018年5月27日
「いかに長く生きたかではなく、いかによく生きたかが問題である」(セネカ)
◆長期政権の弊害
第2次安倍政権成立後安倍総理と2度会いました。最初が2014年10月末でした。この時、私は安倍総理に対し「いちばんやりたいことはなんですか」と聴いた。すると「長くやりたい」との答が返ってきました。理由は外交に取り組みたいというものでした。「一年くらいでは海外で氏名を憶えてもらえない、名前を憶えてもらうためには長くやらないとダメだ」と言っていました。
たしかに総理が一年交代では、国際社会で名前すら憶えてもらえません。以前に海外プレスで総理大臣の名前と写真が間違って報道されたことがありました。総理が一年交代では外交ができないことはたしかです。
しかし、だからといって長期政権が国民にとって必ずしもよいということにはなりません。長期政権の弊害は大きいのです。腐敗しやすいし、役人の政権に対する忖度も増えます。権力が強大化すればおごりが拡大します。政治家と高級官僚は傲慢になります。国民の政治不信は深刻化します。今がそういう状況です。
最近の安倍政権にはおごりが目立ちます。麻生太郎副総理・財務大臣のおごりと乱暴な言動は極端すぎます。官僚も腐敗しています。佐川前国税庁長官(前理財局長)の「資料破棄」の虚言、柳瀬経済産業審議官(元総理秘書官)の「記憶にない」の嘘、福田前財務事務次官のセクハラ事件、自衛隊幹部の国会議員への暴言、自衛隊の日報かくしなどは、長期政権のもとでの官僚のたるみ、おごりの結果とみることができます。
長期政権には、より深刻な弊害があります。それは米国政府への過度の従属です。米国の従属国である日本の政権が長期に安定するためには米国政府への過度の従属が必要になります。今日の米国の政権は「アメリカファースト」のトランプ政権です。安倍総理は「日米一体」を繰り返しています。米国政府は日本の農業を支配しようと狙っています。安倍政権の長期化は、日本の農業が米国の餌食にされてしまうおそれが大きいのです。
いま安倍総理は、9月の自民党総裁選での三選に向かって突進しています。自民党内では三選は確実視されています。しかし、安倍総理総裁三選の弊害はきわめて大きいと思います。無意味な憲法改正によって国民は二分されます。トランプ大統領への従属政治により日本の国益は侵されます。とくに日本の農業が破壊されるおそれ大です。安倍総理総裁の三選は百害あって一利なし、です。
◆政治倫理の衰退
安倍政権のもとでわが国の政治家の倫理が衰退しています。
去る5月17日の衆議院内閣委員会で、安倍首相は、めずらしく反省の弁を述べました。この問題についての朝日新聞5月18日の記事を引用します。
《首相は加計氏とのゴルフや食事をした際の費用負担について「ゴルフ代は私が基本的に私の分は持っていた」「食事は私が持ったり、加計氏が持ったりと、いずれにせよポケットマネーの範囲内だった」と述べた。阿部氏(知子、立憲民主党)が国家戦略特区の責任者として不注意だったのではないかと指摘すると首相は「李下に冠を正さずという気持で、注意を払わなければいけなかった」とした》
安倍首相のこのような反省発言はきわめてめずらしい。今までは野党議員の批判に対して感情的に反発し、「具体的事例を示せ」と居直りました。安倍総理は、たとえ疑わしいことがあったとしても具体的証拠がなければ罪にならない、との態度をとりつづけていたのです。野党議員から追及された安倍総理と官僚は、つねに「疑わしきは罰せず」の裁判所の論理を保って逃げました。
しかし、政治倫理の基本は政治指導者は「李下に冠を正さず、瓜田に履を納れず」です。他人から疑われるようなことはしてはならないのです。「疑われても証拠がなければ罰せられない」という裁判の論理では政治は堕落します。安倍総理が今になって反省の弁を述べたことは今まで「李下に冠を正さず」という意識が希薄だったと認めたことを意味しています。
◆安倍政権暴走の危険性
森友学園と加計問題は解明されないままですが政府与党は幕引きをしようとしています。安倍政権のもとで行政がゆがめられたことは明らかですが、安倍政権はこれを正そうとしていません。防衛省、自衛隊の問題も厚生労働省の文書改ざん問題もすべてウヤムヤにされています。
それだけではありません。TPP協定についてほとんど議論もせずに強引に衆院を通過させました。条約ですから、一カ月後には自然成立します。働き方改革法案も野党の主張を無視して強引に成立させようとしています。カジノ法案も含め、政府与党は野党を無視して強引に法案成立を急いでいます。
私たち国民がとくに注意すべきは、日本の農業です。安倍政権は日本の農業をトランプ米大統領の餌食に供しようとしています。安倍政権は取り返しのつかない危険なことをしようとしているのです。今こそ、日本農業を守り抜くため、国民は目を覚ますべきだと思います。
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