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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2018.06.18 
【森島 賢・正義派の農政論】弱者にとっての朝鮮問題一覧へ

 12日の米朝首脳会談は無事に行われ、朝鮮半島に新しい歴史が始まった。
 この会談の直後の米国の世論調査で、トランプ大統領の支持率は半数を超えた。
 この会談に対する体制派の評価が低いことを考えるとき、この支持率の高さは、白人失業者など、主に経済的弱者を主にした反体制派の支持によるものだろう。
 また、翌日の13日には、韓国の統一地方選挙が行われ、米朝首脳会談を仲介した文在寅大統領が率いる与党の史上最大の大勝利になった。
 この大勝利は、格差に苦悩している韓国の経済的弱者の、朝鮮半島の平和に対する熱望がもたらしたものだろう。そうでなければ、これほどの大勝利にはならない。
 わが日本はどうか。政府の無節操に対する野党の批判が、聞こえてこない。

 米朝首脳会談の評価は2つに分かれている。体制派の強者の側に立つ論者やマスコミは、会談後の共同声明について、譲歩しすぎたとか、具体性がないとか言って、難癖をつけている。
 しかし、米国の世論調査をみると、トランプ大統領の支持率は過半数の51%にまで上がった。つまり、難癖をつけているのは、体制派の強者たちだけだろう。
 また、文大統領の支持率も83%という驚異的な高さにまで上がった。そして、13日の地方選挙の結果は、米朝首脳会談を仲介した文大統領が率いる与党の圧勝だった。この結果は、朝鮮民族の悲願である南北和解、朝鮮半島の恒久平和、に対する弱者の圧倒的な支持を示したものだろう。
 もしもいま、両国で大統領選挙が行われれば、弱者に支持されている両大統領の再選は、間違いない。また、両大統領のノーベル平和賞も間違いない。
 いまや、世界の政治は、弱者と強者の対峙の中で動いている。そして、弱者の力が強まり、歴史の流れを大きく変えている。

 

 

 わが日本はどうか。
 政府は、強者の側に立って、北朝鮮に最大限の圧力をかけ続け、完全非核化して謝罪するまで交渉はしない、と言っていた。しかし、トランプ大統領が、最大限の圧力という言葉は使わない、と言ったので、それに倣って、日本もその言葉を使わなくなった。
 それどころか、恥ずかし気もなく前言を翻して、14日には、モンゴルでの国際会議で、日本の政府高官が北朝鮮の政府高官と意見を交換した。そのような接触をして、安倍晋三首相が北朝鮮と直接対話したい、との首相の意向を北朝鮮に伝えたいようだ。北朝鮮から、つい最近まで、不届きな日本は1億年たっても北朝鮮の神聖な土地は踏めない、と非難されていたのに、である。

 

 

 いっぽう、わが日本のマスコミは、政府といっしょになって、この会談を曲解しているようだ。この会談は、戦勝国が敗戦国の武装解除を迫る会談ではない。犯罪者を裁く会合でもない。互いに対等な立場に立って、両国間の険悪な状態を解消するための会談である。
 この基本的な性格を曲解しているようだ。そうして居丈高になり、北朝鮮に対して、譲歩せよ、と主張している。思い違いも甚だしい。

 

 

 日本の野党はどうか。政府の対北朝鮮政策に対する、野党の批判が聞こえてこない。一点の非もない完璧な政策と評価しているのだろうか。
 米国では、与野党が入り乱れて、激しい議論をしているのに、である。
 いま、日本にとって、対北朝鮮政策は外交政策の中心部にある。それだけでなく、安全保障政策の中心部にある死活的な政策である。
 それなのに、野党の多くは、このことが分かっていないようだ。だから、北朝鮮問題で、政府が白といえば白、と考えるし、政府が豹変して黒といえば黒、と考えるようにみえる。
 こんなことでは、野党には政権を持たせられない、と弱者も考えるだろう。そんな野党なら、なくてもいいと考えるだろう。
 学生などの若い人の反応が鈍いことも、気がかりである。

 

 

 さて、共同声明の内容をみてみよう。
 こんどの会談の主題は、北朝鮮の即時非核化だった、と言っている。だが、そうではない。共同声明に書いてあるように、主題は、米朝間の信頼関係に基づく朝鮮半島の平和体制の構築である。平和になれば、核は不用になる。つまり、非核化は平和の結果である。
 しかも、非核化の期限は付けていない。つまり、即時非核化ではなく、段階的非核化である。信頼関係が不確かなままで非核化を急げば、途中で齟齬をもたらす懼れがある。だから、段階ごとに区切って、あせらずに、互いに信頼関係を確かめあいながら、着実に平和体制を積み重ね、その上で非核化を進める、というわけである。

 

 

 非核化に期限をつけて急がせよ、という主張がある。そうしないと、北朝鮮に時間かせぎをさせてしまうし、騙されてしまう、という考えである。
 ここには、北朝鮮に対する抜きがたい不信感がある。こうした不信感を払拭できないのなら、先へは進めない。
 北朝鮮には、時間かせぎをする動機はないのだ。すでに、核攻撃に対する核による抑止体制は完成した、といっている。
 だから、両国の信頼関係が不確かな状態で非核化を急ぎ、途中で破綻する危険を冒すのではなく、両国の国民の大多数を占める弱者の強力な支持のもとで、信頼関係を回復し、着実に、順をおって段階を積み重ね、平和体制の構築と非核化をするほうがいい。

 

 

 実際に、米朝間の信頼関係は回復しつつある。共同声明にそって、平和体制の構築と非核化は、少しずつ実行されはじめている。
 つまり、北朝鮮は、首脳会談の前から、拘束していた3人の米国人を帰国させたし、豊渓里の核実験場を破壊した。さらに、東倉里の長距離ミサイルエンジン実験場も破壊したようだ。
 また、米国はすでに、最大限の圧力、という言葉を使わなくなった。また、米韓合同軍事演習の中止を検討している。即時中止を決められないのは、強大な力をもつ軍産複合体が、反対しているからだろう。だからこそ、時間をかけて、障害を1つずつ排除していかねばならぬ。

 

 

 このように、両国とも平和体制の構築と非核化の第一段階を、すでに走り出している。
 もしも遅滞すれば、米国抜きの南北交流のほうが先行するだろう。それほどまでに機は熟している。南北の軍部の協議は進んでいて、すでに、南北の国境警備のための軍は、一部が撤退している。
 他方で、中国とロシアは、国連安保理の北朝鮮制裁決議の緩和を提案しようと考えている。

 

 

 南北朝鮮と米国の、さらに世界の弱者が願っていることは、この動きを先へ進めることである。その先に期待しているのは、韓国・北朝鮮と米国との間の平和友好条約の締結だろう。そして、朝鮮民族の悲願である南北統一だろう。
 これも拙速でなく、南北間の交流から始め、それを着実に積み重ねることが重要だろう。
 日本の弱者たちは、こうした朝鮮民族の南北和解と、朝鮮半島の平和のゆくえを、熱い友情の目で見守っている。
(2018.06.18)

(前回 隠れ失業者の衝撃

(前々回 米朝首脳会談の議題は朝鮮半島の平和と非核化

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