【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(095)2018年産の米国トウモロコシ2018年8月24日
かつて全農に勤務していた頃、トウモロコシやマイロ(コウリャン)の購買を担当していたことがあり、日本のコメの作柄以上に米国産トウモロコシの作柄を連日気にしていた時代があった。
トウモロコシの作付けから収穫までの段階を、我々国際穀物取引に従事していた人間は概ね7つに分けていた。
作付け(Planted)、発芽(Emerged)、シルキング(Silking)、ドウ(Doughing)、デント(Dented)、完熟(Mature)、収穫(Harvested)、である。厳密に言えば、前半2つと、後半は植物として育つ段階と、再生産のための段階という意味では異なるが、ここではわかりやすく7段階で話を進めることとする。
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漢字の部分は想像がつくと思うので片かなで記した部分のみを簡単に述べれば、シルキングとはトウモロコシの種実の先から細い絹のような毛が出ることであり、これは受粉の準備段階である。花で言えば、雌しべ(silk)が出てくる段階だ。ちなみに、雄しべに相当するものはタッセル(tassel)と言い、これが穂を出すことをタッセリングという。受粉期にはまず、タッセリング、そしてシルキングと続き、タッセルから飛散した花粉(pollen)がシルクに付着して受粉(pollination)となる。
この時期には適度な湿り気が必要なため、毎年6月下旬から7月中旬頃の気温や降水状況については関係者の多くが神経質になり、「天候相場」といわれる状況が出現し、毎日の天気予報に一喜一憂することになる。雑談だが、文系の筆者は高校時代に地学I・IIを履修している。後年、穀物取引に従事した際、天気図や気象関係資料の見方や分析などで地学の知識が役立ったことが何度もある。何が役立つかは本当にわからない。
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受粉が無事に終了した後は、いくつかの細かい段階、約2週間でブリスター(Blister)、約20日でミルク(Milk)という段階を経て、受粉後25-26日でドウ(Dough)という段階になる。ちなみにブリスターとは英語で「水ぶくれ」の意味で、受粉後、少しずつ穀粒の水分が増加して大きくなる段階である。ミルクとは、穀粒の外側が少しずつ黄色くなるとともに、穀粒内部が乳白色のミルクのように変化し、澱粉や蛋白が形成される。
これらが順調に進展すると先に述べたドウという段階になり、穀粒は段々と固くなる。お菓子作りをしている方は、ドウと言えば小麦粉や砂糖などを加えて捏ねた生地であり、「ドーナツ」が連想されるであろうが、トウモロコシにも固い穀粒になる前の生地のような段階があると理解して頂ければ良いと思う。
次が、デント(Dent)である。デントコーンという名称は良く知られている。英語のdentは凹みとか窪みという意味だ。乾燥して固くなったトウモロコシの穀粒の頭の部分に凹みが出来る段階である。ここまでくればあとは完熟、そして収穫まで一気に進む。なお、ドウの段階で7割程度の穀粒の水分は完熟時には3割位にまで低下して、しっかりとしたトウモロコシが出来上がる。
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さて、今年の米国産トウモロコシの品質はどうか。我々は米国農務省が毎週発表する各州の生育状況を常に見ていたが、久しぶりに覗いてみたところ、8月20日時点で、トウモロコシの主要生産18州平均でドウが85%、デントが44%と記されている。
作柄は5段階で発表され、通常上位2段階(ExcellentとGood)の合計で判断することが多い。今年の場合、先の18州平均で68%である。昨年は同時点で62%であったことを考えると、昨年よりは良いが、先週の70%からはわずかに低下...と、いうことがわかる。いずれにせよ、上位2段階が3分の2というレベルは豊作と考えて良い。
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総じて言えば、8月20日時点での状況を見る限り、近年品質が良かったとされる2014年や2016年ほどではないが、昨年よりははるかに良く、今後、早霜等の被害がなければ2015年レベルの品質が見込まれている...ということであろう。ぐだぐだと述べてきたが、下記に農務省が発表した時系列のグラフを見れば一目瞭然だ。それにしても、秋口を控え、自分自身もブリスター・ステージには要注意だ。
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