【城山のぶお・リメイクJA】第6回 新生JAのカタチ2018年9月21日
これからの新たなJAの姿を考える場合、問題の切り口を従来のように職能か地域かで論ずることは意味がないことが分かった。職能をことさらに強調すれば、JAは専門農協が良いということになり、総合JAは解体すべきということになる。
また、JAにおける農家以外の組合員の存在を認め、ことさらに地域性を強調すれば、その部分はJA以外の信用組合や生協に組織替えすべきということになり、これまた総合JAは解体の道を辿ることになる。
このように考えると、これからのJAのあり方を論ずるためには、職能組合論や地域組合論に代わる新たな切り口が必要になるが、その場合、JAの存在目的が、農協法第1条によって農業振興となっていることに着目すべきであろう。
農業振興はJAの原点であり、この点を切り口に新しいJAのあり方を考えることについて異論のある者は少ないと思われる。そこで、農業振興を切り口にして、新しいJAの姿を考えてみることにしたい。
ここで問題になるのが、農業のとらえ方である。これからのJAを考える場合、農業をどのようにとらえるかで、その姿は大きく変わってくる。農業振興や農業の担い手は農業者・農家だけであり、その人たちのみによって農業は支えられているという考えに立てば、JAは専門農協になればいいという結論になる。
他方、農業は農業者・農家だけでなく、食や地域活動によって支えられる存在だという考えに立てば、JAのあり方はよほど変わったものになる。
ここで参考とすべきは、「農業基本法」に代わって1999年に制定された「食料・農業・農村基本法」である。この法律は、「食料の安定供給の確保」「多面的機能の発揮」「農業の持続的発展」「農村の振興」などを基本理念とするものだが、法律名にあるように、農業振興には農業生産に加え、食料および地域の観点が重要なことを示している。
そもそも農業はその特性から、産業ばかりではなく生業の性格を併せ持つものとしてとらえられる。このことから、農業政策も産業政策とともに地域政策の両方が位置づけられてきた。このように考えれば、農協政策も農業生産面と地域活動面、また食の面からのアプローチが必要ということになる。
だとすれば、今後のJA運営において、准組合員はJAにとって正組合員と異質な存在ではなく、農業振興の同志・准主役として位置付けることこそが重要ということになる。
農業を食料および地域と一体とものと考えれば、それはJAにおいて、正組合員だけでなく准組合員を抜きにして考えることはできないからだ。
准組合員は、これまでの地域組合論で説明されるような、JAにとって正組合員とは異質な存在であるという理解からは、新しいJAの姿を構想することはできない。
JAは農業振興を旨とする協同組合であるが、その役割を果たすためには、一人農業者・農家だけではなく、食や地域活動の面から准組合員の存在が必要であると主張することによってはじめて、JAの社会的意義を国民に対して説明できるのではないだろうか。
一方で、農業を支えるのは農業者・農家であり、したがってJAの運営も農業者・農家で行うべきで准組合員は主役たりえないという考え方は、実は農水省もJAグループも同様であり、こうした、これまでの言わば伝統的・常識的とも言える考え方を転換していくのは容易ではない。
ここに、今次JA改革の難しさがあると言ってよく、農業に対する意識転換こそが、今時JA改革の基本課題である。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(158)-改正食料・農業・農村基本法(44)-2025年9月6日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(75)【防除学習帖】第314回2025年9月6日
-
農薬の正しい使い方(48)【今さら聞けない営農情報】第314回2025年9月6日
-
【注意報】普通期水稲に紋枯病 県内全域で多発のおそれ 長崎県2025年9月5日
-
「適正な価格」の重要性 消費者に訴える 山野全中会長2025年9月5日
-
米価暴落防ぐ対策を 小泉農相に小松JA秋田中央会会長2025年9月5日
-
(451)空白の10年を作らないために-団塊世代完全引退後の「技術継承」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月5日
-
【統計】令和7年産一番茶の荒茶生産量 鹿児島県が初の全国一位 農水省調査2025年9月5日
-
【統計】大豆生産費(組織法人)10a当たり0.7%増 60kg当たり1.6%増 農水省調査2025年9月5日
-
【統計】大豆生産費(個別)10a当たり0.8%増 60kg当たり10.7%減 農水省調査2025年9月5日
-
【統計】冬キャベツ、冬にんじんの収穫量 前年比2割減 農水省調査2025年9月5日
-
長野県産ナガノパープルのスイーツ「いっちょう」「萬家」全店で提供 JA全農2025年9月5日
-
『畜産酪農サステナビリティアクション2025』発行 JA全農2025年9月5日
-
「国産シャインマスカット」全国のファミリーマートで販売 JA全農2025年9月5日
-
「わたSHIGA輝く国スポ2025」参加の広島県選手団へ清涼飲料水贈呈 JA共済連広島2025年9月5日
-
「いちはら梨」が当たるSNS投稿キャンペーン実施中 千葉県市原市2025年9月5日
-
猛暑対策に高性能遮熱材「Eeeサーモ」無料サンプルも受付 遮熱.com2025年9月5日
-
農機具王とアグリスイッチ 構造再編をチャンスに「週末農業プロジェクト」始動2025年9月5日
-
鳥インフル ハンガリーからの生きた家きん、家きん肉等の一時輸入停止措置を解除 農水省2025年9月5日
-
旬の巨峰を贅沢に「セブンプレミアム ワッフルコーン 巨峰ミルク」新発売2025年9月5日