【森島 賢・正義派の農政論】立憲、国民は保守政党か2018年10月9日
立憲民主党と国民民主党は、両党首とも、自分は保守主義者だ、と言っている。だから、両党とも保守政党なのだろうか。
いったい保守とは何か。それは古くからの伝統や文化、つまり、和をもって尊しとなす、とか、お互いに助け合う、などの社会生活の規範だという。
政治家から社会的規範についての説教を聞くのもいい。しかし、政治家から聞きたいのは政治信条である。つまり、いまの政治体制と、その基盤になっている経済体制をどうするのか、を聞きたい。
いまの政治・経済体制の根幹を保守するのか、革新するのか。
政治家にとって言葉は重い。政治家が保守と言うばあい、それは、いまの政治・経済体制の根幹の部分を、そのまま続けるという政治信条である。和も大事だし、助け合いも大事だが、あえていえば、それは政治家にとって、枝葉の問題といっていい。聞きたいのは根幹である。
立憲、国民は、保守政党として、いまの政治の根幹になっている野放図な自由貿易体制と規制緩和、ことに労働市場の規制緩和を、つまり、市場原理主義の政治を、そのまま続けるというのだろうか。市場原理主義がもたらした半失業的な非正規雇用と深刻な格差を放置し、弱者に対して、相互扶助で低賃金と格差に耐え忍ぶことを要求する政治を、政治の根幹に据える、というのだろうか。
そうではないだろう。
◇
立憲と国民が、支持率の低迷するなかで、保守層にまで支持を広げたいと考えていることは分かる。しかし、だからといって、わが党も保守だ、などということには賛成できない。
そこまでして保守にすり寄り、財界にとって心地よい嬌語を発し、政治家としての節操を売るのは見苦しい。それなら、自民と合併して、そのなかの1つの派閥になればいい。
自民が歓迎するかどうかは、疑わしいが。
◇
立憲の綱領的文書をみると、その中には「保守」の文字が1つもない。それなのに党首は、保守だ、といっている。綱領は政党の憲法である。立憲とは憲法を守る、という意味だろう。それなのに、党首が党の憲法である綱領から逸脱している。これでは立憲民主党という名前の中の「立憲」の文字が泣くだろう。
また、国民の綱領的文書をみると、「穏健保守」を含む「改革中道政党」だ、といっている。しかし「穏健」の説明がない。そうして党首は、「穏健」を省略して「保守」だ、といっている。この党首は綱領にそって、民主的に選ばれたのだろうか。国民民主党という名前の中の「民主」の文字が泣くだろう。
◇
両党の立党の精神は、市場原理主義政治に呻吟している農業者や労働者や中小企業者などの弱者の側に立って、低賃金と低所得と、それによる中間層の没落、つまり、深刻な格差社会の拡大を否定することではなかったか。巨大資本家の側に立って、市場原理主義政治を押し進める自民に対峙することではなかったか。
それは、日本の政治・経済体制を根幹から革新することである。だから保守ではない。保守の対極にある。
政治家が保守というばあい、それは、今の政治・経済体制の根幹を、つまり、市場原理主義の政治体制を、今まで通りに維持しようとするものである。
◇
両党が、もしも心の底から保守だ、といって今の政治・経済体制を維持しようと考えているのなら、自民の1つの派閥にしてもらえばいい。
また、もしも口先だけで保守だ、というのなら、それは国民を愚弄するものである。保守派からも批判されるし、革新派からも非難される。そうして支持率は、ますます先細りになるだろう。
自民のなかの一部の政治家を両党に取り込みたい、などと考えているようだが、そうした政治家は自民にはいない。そんなことをしたら、自民から軽蔑されるだろう。
もちろん、自民の中には具体的な政策で両党に同調する人がいるだろう。それは個別の政策ごとに共同すればいい。両党は革新の考えを堅持しながら、また自民は保守の考えを堅持しながら、具体的な政策で互いに共同しあえばいい。
そうした場面は、いくつもあるだろう。そうした場面で革新と保守が互いに切磋琢磨しあえばいい。
◇
いまの若者は保守化しているという。先日の沖縄知事選で、若者の多くは自公維希が推薦した保守系候補に投票したという。
だから、両党が保守だ、といって支持を若者に広げたいと考えているのかもしれない。それは分からぬでもない。しかし、これも邪道である。
正道は、革新の考えを若者の間に広げることである。
いまの若者の困窮、つまり、非正規労働の横行と格差の拡大は、市場原理主義政治がもたらしたもので、この政治の根幹を断ち切ることは、いままでの政治の根幹を維持しようとする保守派にはできないことで、革新派しかできないことを、宣明すべきである。そうして若者の支持を求めるべきである。
そうすれば、多くの若者は、それに応えて両党を支持するにちがいない。
(2018.10.09)
(前回 沖縄で政権与党が全層崩落)
(前々回 石破氏の善戦)
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