【城山のぶお・リメイクJA】第18回 農業振興クラブ(仮称)の結成2018年12月21日
農協改革は、平成31年5月の改革集中推進期間を前に、准組合員の事業利用規制問題が残された最大の課題となっている。
准組合員の事業利用規制について、JA内には、准組合員制度を既得権益として政治的解決を期待する向きがあるが、それでは事態を見誤ることになる。
それはこの問題が、総体として准組合員の数が正組合員の数を上回るという状況の中で、JAとはそもそもどのような存在かという組織の根本問題を問われているからである。
このような状況のもとで、いまわれわれに必要なことは新たな准組合員対策の確立であるが、さしあたって次のことに留意する必要がある。
一つは、JAが自己改革として進めている従来踏襲路線(JAは職能組合であると同時に地域組合であるという二軸論)は、政府・与党および農協法改正に関する国会審議を通じて退けられており、地域組合論からの准組合員対策を進めることができないということである。
これをもう少し具体的にいえば、従来のように信用・共済事業について員外利用規制を逃れるために准組合員加入を勧めることは、この問題に関する矛盾を拡大するだけで困難になってきたということである。
さらに関連して言えば、准組合員対策を考えるにあたって従来の地域インフラ論からの脱却が求められている。インフラ論とは、インフラが整っていない地域ではJAがその役割を果たしており、農家でない人も准組合員としてJAに抱え込む必要があるというものだ。
このインフラ論では、銀行・証券会社・コンビニ等がない余程の山間へき地でない限り、JAの准組合員に利用規制をかけてもよいということになりかねない。いまのところ、政府はJAが主張するこのインフラ論を逆手にとって対策を講ずべく、調査・検討を進めているように思える。
このように考えると、准組合員対策について、次のような発想の転換が必要になってくる。政府はJAの存在意義は農業振興にあるといっており、農協法第1条もそのことを明確にしている。
一方、現実には、農業振興は農業者・農家だけでなく食の面からも支えられている。農業振興にとって農と食はコインの裏表の関係にあり、これを分断して農業振興はかなわない。食の面から農業振興を支えているのは准組合員である。
つまり、従来のように員外利用制限から逃れるために主に信用・共済事業利用について准組合員加入を勧めるという発想から、准組合員は食の面から農業振興を支える者と位置付けることに発想を転換することである。
このように考えることで、農業振興に食をはじめとする様々なことで貢献する准組合員に事業利用規制をかけるのはいかがなものかという主張を展開していくことが可能になる。
この主張に沿った対策の一つとして、全国の600万人の准組合員を組織化し、会員制の「農業振興クラブ(仮称)」をつくることが有効な対策となるのではないか。
会員には月額100円程度の会費を納めてもらい、その見返りとして地元の安全・安心な農産品の継続的な購入、あるいは優先的な農産物直売所・体験農園の利用や食農教育などの機会の確保、食についての意見の主張を行うなどのビジネスモデルを構想することは、その気になれば可能のように思える。
こうした取り組みが成功すれば正組合員よし、准組合員よし、JAよし、国民的理解よしの四方一両得の対策になる。准組合員は制度として保障されているのだからこれに制限をかけるのはけしからんとして、その実、信用・共済事業の推進を正当化するだけの地域組合論ではこの戦いに負ける。
また、准組合員が利用する信用・共済事業の収益で営農・経済事業の赤字を補填しているからという理由で准組合員の存在を正当化するのにも限界があり、もう一歩進めた対策が求められている。
この問題を仕掛けた農水省自体も、JAからの提案を求めており、政治力に頼るとしても既得権益を守るだけで、こちらに打開案がなければ話にならない。
准組合員問題を前向きにとらえることで、このことを契機として正・准1000万人を核にした、農と食の両面からの食料主権の国民運動につなげていくことが重要ではないのか。
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