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コラム:米マーケット情報

【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

2019.01.08 
【熊野孝文・米マーケット情報】今年最大の課題はコメ消費拡大策一覧へ

 年号が変わる今年は、コメ業界にとっても生産から流通、消費に至るまで大きな変化が予想される。ITやAIによる世の中の変化は、農業分野でも加速度的に大きな変革をもたらすと予測され、それは生産分野だけではなく、流通、消費の分野まで及ぶことになると見られている。ただし、生産されたコメが流通に乗り消費されるという基本構造は変わらない。技術革新はその手法が変わるだけで、本質が変わるわけではない。こうした技術革新が重要なことは言うまでもないが、敢えて最も重要なことを指摘するなら"コメの消費減"をいかに食い止めるかにある。これは自明のことで消費がなくなってしまっては生産する意味がない。
 農水省は昨年11月の食糧部会でコメの消費量を下方修正したが、事態はもっと深刻であると見た方が良い。このコラムで何度か取り上げたが、民間のデータ分析会社の将来予測や米穀機構の将来予測で示されたコメ消費減が予測よりも現実は加速している感がある。 米穀流通業者によると、この業者が最も驚いたことの一つに中食業者が自動しゃり玉機を製造しているメーカーに対して、しゃり玉1個16g以下で作れる機械を製造して欲しいと依頼した話題を上げていたが、24gから20g、最近では18gになったが、それよりも小さいしゃり玉を使いたいというわけだ。食糧部会で大手ベンダーの会長が生産者団体の役員が原価に占めるコメの代金のコストアップは1円、2円でたいしたことではないと言ったのに対して「我々はその1円、2円で生活しているのだ」と反論したが、企業経営とはそうしたものなのだろう。消費者世帯の所得が右肩上がりであればコンビニや外食店で提供されているご飯類が値上げされても抵抗は少ないだろうが現実はそうはなっていない。
 タイミングよく米穀機構が昨年末に「コメの消費動向調査における世帯収入別の動向」をまとめ公表した。大変興味深い調査結果なので詳しくは米穀機構のホームページを見て頂きたいが、まとめのところに以下のような記述がある。「直近10年の可処分所得等の推移を追うと、10年間で実収入が1万352円減少し、非消費支出(税金、社会保険料など)は9330円増加、可処分所得は1万9682円減少している。消費増税は消費者の節約志向を更に強めるものと推察され、米の購入・消費にも大きく影響するものと考えられる。」
 少しこの調査結果に触れると世帯当たりの収入を400万円未満、400万円以上、600万円~800万円、800万円以上の4区分とし、それぞれのコメ消費動向を品種や入手先など複数の項目で調べている。分かりやすいのは全調査世帯の平均コメ消費量を1とした場合、400万円以下が1.037であるのに対して800万円以上は0.966で、この結果を見る限り「所得の低い世帯は穀類の摂取量が多く野菜や肉類の摂取量が少ない」というこれまでの定説通りの結果になっているのだが、もっと範囲を広げればコメの消費にとって深刻なデータが浮かび上がって来る。
 そのデータとは年間200万円以下の世帯(2人以上)から1500万円世帯まで18区分し、それぞれの世帯の年間コメ消費金額を示したもので、基準世帯550万円~600万円の世帯ではコメの支出金額は2万2239円で、年収に占める割合は0.39%になっている。ところが200万円以下の世帯では2万123円で1.34%に跳ね上がる。年収が少ない分比率が上がるのは当たり前だろうと思われるかもしれないが、実態としてこうした低所得世帯ではコメが買えなくなっており、より安い食品を購入するようになっているとしたらどうだろう。同じデータから全く違う風景が見えて来るはずである。
 厚労省の国民生活基礎調査によると100万円~200万円未満の世帯は12.3%、200万円~300万円未満が13.3%、300万円~400万円未満が13.8%であわせて全世帯数の4割を占めている。昔「貧乏人は麦を食え」と言った総理大臣がいたが、本当にそうなってしまって一番困るのはコメ業界ではないのか?
 消費税増税で還付金も良いが、アメリカ並みに低所得者層がコメを食べられるようにフードチケットを配給するような政策を立案してはどうか。その方が飼料用米につぎ込む巨額の税金よりはるかに安上がりで生産者も消費者にとってもハッピーなはずである。

 

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