【リレー談話室・JAの現場から】もう一度、有事の点検を2019年6月10日
◆5月の異常気象
梅雨入り前の5月。日本各地を豪雨と猛暑が襲った。18日には鹿児島県の屋久島で「50年に一度の豪雨(1日で440mm。5月分の雨量)」が記録された。避難勧告が出され、土砂崩れで道路が寸断された。専門家は「多量の雨に鍛えられている屋久島の地形でも、大規模な斜面崩壊が起こるほどの豪雨だった」と指摘する。26日午後2時過ぎには北海道の北に位置する佐呂間町でフェーン現象もともなって39.5℃という5月の国内最高気温が記録された。
気象のもたらす異常災害は事後的には説明がつくが、経験がなくイメージしにくい過去から学んで備えることは容易ではない。それでも過去の記録を見ると、異常災害は繰り返されていることが理解できる。そのような災害の度に、国土は毀損(きそん)し、地域の生活圏もダメージを受けて数多くの人命が奪われてきた。昨今は国も情報を分析・整備して「見える化」し、有事に備える動きをとっている。
◆レベル4は全員避難
大雨のときの5段階の「警戒レベル」に応じた「とるべき行動」が気象庁から示され、5月29日から自治体で運用が始まった。昨年7月の西日本豪雨で逃げ遅れた倉敷市真備町などの悲しい教訓をもとにしている。警戒レベル1は「最新情報に注意」、2は「避難方法を確認」、3は「高齢者などの避難」、4は「全員避難」、5は「命を守って!」という直截な呼びかけである。
レベル4はこれまでの避難指示(緊急)・避難勧告、土砂災害警戒情報・川の氾濫危険とも連動し、レベル5は大雨特別警報(数十年に一度の大雨)、川の氾濫発生とも連動する命にかかわる危険な事態である。レベル3、4の意味を十分に理解しておきたい。
大雨の警戒レベルの発動は常にタイムリーであるとは限らず、運用が始まったばかりで自治体にとっても判断が難しい。各地で梅雨入りした6月7日、大雨により広島県で初の「警戒レベル4」が広域の10万世帯に発動された。避難した住民もあったが、そうでない住民も多かった。避難行動は地域住民の自己責任によるが、犠牲者が出れば自治体の知らせる努力が問われることになる。
同時に住民の「逃げる算段」も問われるだろう。住民の日頃の会話、隣近所の助け合い、地域の自治会ぐるみの避難準備、自治体の示すハザードマップによるイメージ訓練、逃げ場所の確認、見守り高齢者や障害のある人との会話、さらに気象庁の警戒レベル1の情報キャッチも新たなポイントになる。これらを念頭に杞憂(きゆう)をよしとして警報レベルに対応した逃げる行動を再確認しておきたい。
◆巨大地震にも備える
併せて、いつ発生してもおかしくないとされる巨大地震にも気を配りたい。今年も全国各地での地震は震度6弱が2回(熊本地方、北海道胆振地方)、震度5弱が3回(熊本地方、日向灘、千葉県東部)と注視されている地域で発生している。震度4以上は6月9日現在で22回となっている。巨大地震はプレートの強力なぶつかり合いの我慢がはじけたときに地殻の破壊が起きて巨大なエネルギーを放出するという。揺れと津波、火災など複合災害が生じやすい。巨大津波については、命をつなぐために分単位での「逃げる算段」が求められ、大雨のときにもまして緊急を要する。
25年以上も前のこと。JA共済の仕事で全国の被災各地を訪ねていたときに、被災住民の皆さんが「こんな災害は、生まれて初めての経験だ」と異口同音に話していた。一生一度の被災経験や命拾いする災害が毎年全国各地で広域に頻発して、より巨大化している。
協同組合は自治体などとも連携して、組合員や地域住民に「教育」として逃げる算段を教え、それに備えるこころを育てる役割があると思う。組合員・地域住民も「学習」として自らが生きる算段を学び、それに習う日々であってほしい。先ずは命。家族や地域でもう一度、有事の点検をしてほしい。
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