【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(138)米国の農産物「輸入」:半分が園芸品?2019年7月5日
日本が大量の農産物を輸入しているからか、あるいは米国が大量の農産物を輸出しているからなのか、米国と言えば農産物の「輸出」大国であり、「輸入」大国である面は余り注目されていない。2018年の金額ベースで見た場合、米国は1396億ドルの農産物を「輸出」しているが、同時に1288億ドルの農産物を「輸入」している。少なくとも金額ベースで見る限り、米国は農産物「輸入」大国でもある。
一般的に米国の農産物輸出と言えば、穀物・油糧種子が中心である。中でも大豆とトウモロコシの2品目は単一品目としては米国の農産物輸出金額で第1位と第2位にある。
これに対し、米国の農産物輸入について言及した論稿は比較的少ない。実は輸入総額1288億ドルの50%、644億ドルは園芸品(Horticultural Products)である。この内容を少し詳しく見てみよう。
米国農務省の統計では園芸品を「果樹及びその調整品」「野菜及びその調整品」「ナッツ類及びその調整品」、そして「その他園芸品」という4つに分類している。2018年の園芸品輸入金額は以下のとおりである。
果樹及びその調整品 190 億ドル
野菜及びその調整品 139 億ドル
ナッツ類及びその調整品 34 億ドル
その他園芸品 281 億ドル
園芸品合計 644億ドル
さて、参考までに、2018年の農産物「輸出」における単品の最大金額は大豆の171億ドルであり、次がトウモロコシの125億ドルであることを踏まえた上で、以下を読んで頂きたい。
農産物の輸出入統計は親切なようで意外に不親切なところもあるが、米国農務省の統計は極めて良い。少なくとも現在ではインターネット上で様々な数字を確認できる。
それでも、検索を進めると金額が最大の「その他(other)園芸品」281億ドルのうち、最大項目は「雑多な(miscellaneous)園芸品」152億ドルという何とも言えない結果に遭遇する。これは、どこかで聞いたような話だが、「その他」の中のまた「その他」のようなものである。
ただし、興味深い点は、第2位と第3位に、「ワイン及びワイン製品」65億ドルと、「エッセンシャル・オイル」43億ドル、があることだ。ジャガイモを除く生鮮野菜も82億ドルと大きいが、これは複数野菜の合計である。また、「その他生鮮果樹」91億ドルとあるが、これも複数品目の合計である。
こうして見ると、現在の米国の農産物輸入における最大のものは生鮮果樹や生鮮野菜であるとはいうものの、目につきやすい個別品目に落とし込んだ場合には「ワイン及びワイン製品」や「エッセンシャル・オイル」になることがわかる。なお、今回は時間がかかる生鮮野菜や生鮮果樹の個別品目別統計のより詳細な検索は実施していない。
いかにも米国らしい(?)点としては、65億ドルの「ワイン及びワイン製品」輸入のうち、フランス、イタリアからの輸入が各々21億ドル相当と最も多い点である。ワインはやはり、フランスかイタリアということであろう。これに続くのは、金額は随分少なくなるがニュージーランドとスペインの各4億ドル、そしてオーストラリアの3.6億ドルである。以下、アルゼンチン、チリ、ポルトガル、ドイツと続き、ここまでが1億ドル水準である。
これらの後にようやくカナダと日本が登場する。第11位の日本からの輸入金額は6352万ドルである。内訳においてワインと日本酒がどうなっているのかはもう少し内容を確認してみないと不明だが、先に上げた国々を見ると、日本産はかなり健闘していると思う。
かつて、「米国は穀物と食肉を輸出してワインを輸入している」と言われたことがあったが、その意味では今でも傾向は変わっていないのかもしれない。下の表は、米国農務省のホームページに紹介されていたものである。過去20年にわたる米国の農産物輸入」の中で園芸品、つまり緑の部分がいかに拡大しているかがわかる。それにしても、農産物輸入の対象としてワインは思い浮かんでも、それを園芸品のカテゴリーに結びつけるのは意外と大変なのではないだろうか。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】とうもろこしにアワノメイガが多誘殺 早めの防除を 北海道2025年7月1日
-
【人事異動】農水省(7月1日、6月30日付)2025年7月1日
-
農水省 熱中症対策を強化 大塚製薬と連携し、コメリのデジタルサイネージで啓発2025年7月1日
-
作況指数公表廃止よりもコメ需給全体の見直しが必要【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月1日
-
【JA人事】JA岡山(岡山県)新会長に三宅雅之氏(6月27日)2025年7月1日
-
【JA人事】JAセレサ川崎(神奈川県)梶稔組合長を再任(6月24日)2025年7月1日
-
【JA人事】JA伊勢(三重県) 新組合長に酒徳雅明氏(6月25日)2025年7月1日
-
米穀の「航空輸送」ANAと実証試験 遠隔地への迅速な輸送体制構築を検証 JA全農2025年7月1日
-
JA全農「国産大豆商品発見コンテスト」開催 国産大豆を見つけて新商品をゲット2025年7月1日
-
産地直送通販サイト「JAタウン」新規会員登録キャンペーン実施2025年7月1日
-
7月の飲食料品値上げ2105品目 前年比5倍 価格改定動向調査 帝国データバンク2025年7月1日
-
買い物困難地域を支える移動販売車「EV元気カー」宮崎県内で運用開始 グリーンコープ2025年7月1日
-
コイン精米機が農業食料工学会「2025年度開発賞」を受賞 井関農機2025年7月1日
-
「大きなおむすび 僕の梅おかか」大谷翔平選手パッケージで発売 ファミリーマート2025年7月1日
-
北海道産の生乳使用「Café au Laitカフェオレ」新発売 北海道乳業2025年7月1日
-
非常事態下に官民連携でコメ販売「金芽米」市民へ特別販売 大阪府泉大津市2025年7月1日
-
農作物を鳥被害から守る畑の番人「BICROP キラキラ鳥追いカイト鷹」新発売 コメリ2025年7月1日
-
鳥取県産きくらげの魅力発信「とっとりきくらげフェア」開催 日本きのこセンター2025年7月1日
-
鳥インフル 英国チェシャ―州など14州からの生きた家きん、家きん肉等 一時輸入停止措置を解除 農水省2025年7月1日
-
新潟県長岡市から産地直送 フルーツトマト「これトマ」直送開始 小海工房2025年7月1日