【リレー談話室・JAの現場から】これからの中央会(下)中央会への「誇り」と「情熱」を2019年8月9日
◆業務体制に揺らぎも
農協改革により中央会は、本年9月末までに農協法に基づくJAの総合指導機関から(一社)JA全中、連合会JA県中央会に組織移行し、JA決算証明監査は公認会計士が行うこととなった。そして、みのり監査法人が設立され、現状より多くの農協監査士が法人に出向・転籍し、監査業務に従事することとなった。このため、中央会の人員体制は以前より減少している。
多くの県中央会において、経営・教育・暮らし部門などを統合し、JA支援部などの大括り部署を設置し、スタッフの業務範囲を拡大することにより、人員減への対応をはかっている。ただし、支店統廃合や合併によりJAの経営合理化が一段とすすむことから、人員体制のさらなる減少も見込む中央会もある。
こうした状況において、中央会の業務について、安易な業務「外出し」や「さばき仕事」につながらないかなど、中央会の体制に揺らぎもみられる状況にある。
◆教育部門の県域協同
教育部門においては、これまで全中・県中が教育研修の標準プログラム、標準教材を「共同開発」し、各県中が試験・研修を「分散実施」するという役割分担で業務をすすめてきた。主たる業務であるJA職員資格認証試験(年3万人受験)、JA階層別マネジメント研修(同1万人受講)、JA戦略型中核人材育成研修(同400人受講)などで一定の成果をあげている。
中央会をめぐる環境が変わる中で、カリキュラム・教材が共通であるという特徴をふまえれば、各県単独で教育研修事業をすすめる必然はないものと思料されることから、現在、複数県域・ブロックによる「研修会の共同開催」、「JA全中認定インストラクター制度」と「インストラクター相互派遣制度」の創設など、「県域協同の取り組み」の具体化を一歩ずつ進めているところである。
◆オール中央会の視点
組合員の高齢化・世代交代、信用事業の収支悪化、IoT・デジタル化への対応など、JAはかつてない変化に直面しており、中央会の揺らぎとは逆に、役割、機能はより高度化、品質向上が喫緊の課題となっている。
9月末までに法律に基づく組織移行を完了したとしても、組織の内実を真に見直すのはこれからだと思う。教育部門において一層検討を深めることはもちろんのこと、農政・広報・営農・地域・経営・教育・システム等の各部門において、それぞれの業務特性をふまえ、JAの期待に応える業務と体制のあり方を検討・構築していくことが喫緊の課題であり、情勢をふまえれば、現状の体制にとらわれることなく、オール中央会という視点から機能統合や組織統合なども含め、抜本的な検討が必要ではないか。
◆「仏に魂を入れる」
新たな中央会を考えるにあたって、そもそも中央会とはどんな組織であるべきかを確認する必要がある。中央会の法的位置づけがどうあれ、今あるJAを、本来あるべき協同組合としてのJAに一歩ずつ高めていくことが、中央会の本来的な役割、存在意義ではないか。
「運動論で飯が食えるか」という意見もあるであろう。運動論、経営論は二者択一ではない。事業・活動の継続の前提となる経営環境を整えつつ、協同組合であるJAの理念を説き、実践を促す中央会の役割は不変であると思う。
そのためにも、中央会役職員一人ひとりが、厳として存在する協同組合としてのJAの姿を追い続けるJA組合員・役職員リーダーの現場での実践と思いに魅かれ、中央会に属することへの「誇り」持ち、中央会業務への「情熱」を燃やすことが、前回提起した「インテリジェンスを磨く」とともに、新たな中央会を構築していく要諦であると思う。新たな中央会という組織に「誇り」と「情熱」が「仏に魂を入れる」。
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