【森田実の政治評論】情況変化に柔軟に対応せず憲法改正を叫ぶ安倍総理に猛省をうながす2019年8月23日
木に縁って魚を求む(孟子)
◆安倍総理の独善的改憲論
最近の安倍総理の憲法をめぐる発言の非常識は目にあまると思います。去る7月の参院選後、総理は憲法改正を叫びつづけていますが、国民から浮いてしまっています。総理の発言があまりにもひとりよがりだからです。総理の発言を分解してみましょう。
(1)総理発言「参院選で『憲法の議論を行うこと』が支持を得た」は非常識です。「憲法議論をするかしないか」は参院選の争点にはなりませんでした。「憲法議論をすること」自体に反対する政党は存在しないからです。総理は意味のないことを言っているのです。
(2)総理は現情勢において憲法改正を最優先課題と考えているようですが、これは国民の考えから遊離しています。国民にとって憲法改正は緊急課題ではありません。
(3)去る7月の参院選の結果、いわゆる改憲政党の議員数は減少し、三分の二以下になりました。これは参院選において憲法改正が否定されたことを意味しています。選挙結果を尊重して憲法改正を断念するのが総理がとるべき態度です。
(4)自民党は議席を減らし、過半数を下回りました。自民党が敗北したことを安倍総理は認めるべきです。
(5)政界ではマスコミも含めて自民党、公明党、維新の三党を「改憲三党」としていますが、これは間違っています。少なくとも公明党は改憲政党ではありません。正確にいえば公明党は「加憲政党」です。公明党の国会議員全員が自民党に同調して憲法改正に進むことは考えられません。少なくとも現段階では憲法改正案の国会発議に必要な三分の二をとることは困難なのです。
(6)安倍総理は数の不足を補うため国民民主党に協力を求める意向を示しましたが、国民民主党が「安倍改憲」に賛成すると期待することは政党政治の原則を無視することです。
(7)安倍政権には緊急に取り組むべき課題が山積しています。景気後退は深刻です。格差拡大はこれ以上放置できません。食料自給率減少をとめる対策が必要です。日米関係、日韓関係、日本・イラン関係など外交面での課題も多々あります。憲法改正を最優先課題にするのは間違っています。総理は方向転換すべきです。
◆経済政策と外交政策の転換が必要
いま国際情勢は激変しています。米中対立は深刻な経済不況をもたらすおそれがあります。米中対立は貿易戦争に通貨戦争が加わりました。その上軍事的緊張も高まっています。
「二頭の象が戦う時傷つくのは草だ」という諺があります。米中対立激化の中で日本は「傷つく草」にされるおそれがあります。すでに円高が進行し、安倍内閣の中心政策のアベノミクスの前に立ち塞がっています。ごく近い将来経済政策の根本的転換が必要になると思います。
景気後退局面で、消費税の10%への引き上げが実施されます。消費増税による景気後退を防ぐために、消費増税分を上回る景気対策を講じますが、景気後退についての国民の不安は消えません。新たな対策が求められる時は遠くないと思います。今から検討すべきことです。
外交関係の改善は急務です。日米関係は安倍総理とトランプ大統領との友情だけで解決できるほど甘いものではありません。安倍総理のワンマン外交から国民外交への転換が求められています。
米国とイランとの対立のなかで、日本は米国側への参加を求められていますが、中立を堅持すべきです。
日本にとって最も緊急な外交課題は日韓関係の改善です。総理はじめ政府関係者は韓国政府に対してきびしい姿勢をとっています。韓国政府もはじめは対抗的な固い態度をとっていましたが、8月15日の光復節 において文大統領は柔軟な姿勢を示しました。日本も柔軟に対応して日韓両国政府間の対話をはじめるべきです。
対立と紛争は日韓両国に不利益をもたらします。友好と協力は両国に利益をもたらします。
外交には寛容と忍耐が必要です。両国政府首脳が相互に寛容と忍耐を発揮すれば、日韓両国政府間の難問を解決することは可能だと思います。
いまとくに注意すべきことは、総理ら政府要人が非寛容で感情的な対応をすれば、国民の間に非寛容な排外主義が広まっていくという現実です。
韓国は永遠の隣国です。平和友好関係が必要です。日本は日韓関係の歴史を忘れることなく、謙虚な態度をとるべきです。とくに政治家は理性を失ってはなりません。
最近の政治家と官庁幹部から礼節と品格が薄れています。反省し自己を磨く努力をして頂きたいと思います。
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