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【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】食品流通業の持続性-「農業なくして流通なし」2019年9月5日

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【鈴木宣弘・東京大学教授】

◆みんなが泥船に乗って沈んでいく

 食品流通は、最も川上の農産物の生産農家から、JAなどの協同組合・出荷組合、卸売業者、仲介業者、加工業者、小売業者、そして、最も川下の消費者まで、様々な事業者がかかわって成立している。
 食品流通業界が全体として持続的に発展するためには、当然ながら、関わる事業者の、それぞれが適正な利益を得て持続的に発展できることが不可欠である。つまり、各ステージでの利益の分配が適正である必要がある。まさに、基本は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「3方よし」である。
 これが、「いかに安く買いたたいて、それをいかに高く売るか」という「今だけ、金だけ、自分だけ」の「3だけ主義」に陥ると、目先の自己利益だけにとらわれ、一部の事業者が利益を増やす一方で、苦しむ事業者が発生して、長期的には誰も持続できなくなる。
 特に、小売業者の取引交渉力が大きく、「買いたたきビジネス」が展開され、消費者も安けりゃいいとしか考えないと、川上が苦しみ、最も川上の農家が疲弊すれば、一時的には利益が増えたとしても、最終的には、農水産物を生産してくれる人がいなくなったら、流通業者も加工業者も小売業者もビジネスはできなくなり、消費者も国産の食料が食べられなくなる。
 しかも、「安さ」の追求が、安全性への配慮を犠牲にする形で進められるようなことがあったら、国民の健康を犠牲にして、儲けを追求することになってしまう。命と健康に直結する食品流通業の大きな使命は、安全なものを提供することであり、そこにごまかしがあってはならない。そのようなビジネスも長続きするわけはない。
 3だけ主義は、「みんなが泥船に乗って沈んでいく」ことであり、結局、誰も持続できない、という当然のことが、食品流通事業において、本当に実践されているであろうか。このことを、常に念頭に置いて、検証し続けることが、業界全体の発展のために、不可欠と思われる。
 いま、日本の農業の現場はどういう事態に直面しているか、本当に食料産業界全体として、事態の深刻さをわかっているのか、そして、その責任は誰にあるのかが問われる。

◆農業生産構造の脆弱化は過保護農政のせいか

 一層の貿易自由化以前の問題として、現場の農業生産が疲弊しつつあることを改めて深刻に認識する必要がある。では、どうして、ここまで生産現場は疲弊しつつあるのか。その原因を明らかにしないといけない。日本農業が過保護だから自給率が下がった、耕作放棄が増えた、高齢化が進んだ、というのは間違いである。過保護なら、もっと所得が増えて生産が増えているはずだ。
 逆に、米国は競争力があるから輸出国になっているのではない。コストは高くても、自給は当たり前、いかに増産して世界をコントロールするか、という徹底した食料戦略で輸出国になっている。つまり、一般に言われている「日本=過保護で衰退、欧米=競争で発展」というのは、むしろ逆である。
 命を守り、環境を守り、国土・国境を守っている産業を国民みんなで支えるのは欧米では当たり前なのである。それが当たり前でないのが日本である。過保護どころか、欧米諸国に比べて政策支援が手薄であることが農業所得低迷の大きな要因であるといえよう。つまり、農業生産構造の趨勢的脆弱化の要因の一つは政策のあり方にあるということは間違いない。

◆食品流通業の未来~農業なくして流通なし

 しかし、より根本的な問題は、このように農業所得が低いということは、食品流通業界において、川上サイドに適正な利益の分配が行われてない構造があるのではないかということだ。
 「今だけ、金だけ、自分だけ」に陥った小売・流通業者が取引交渉力を行使して、農産物を買いたたいて、このような川上の疲弊する構造を積極的に作り上げているとしたら、その責任は重大である。川上がこれ以上疲弊してしまったら、自分たちもビジネスができなくなる。まさに、「農業なくして流通なし」、その当たり前のことを改めて肝に銘じるべき瀬戸際に来ている。

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