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コラム:正義派の農政論

【森島賢】

2019.10.21 
【森島 賢・正義派の農政論】シラケる中国の若者たち一覧へ

 香港で、若者を中心にした反政府デモが大規模に、そして長期間つづいている。中国では、30年前に天安門事件があったが、それ以来の大きなデモである。
 こんどの香港デモを天安門事件と比べると、大きな違いがある。これは、中国社会の大きな変化に起因している。また、中国国民の社会感や社会行動も、大きく変わった。
 若者を中心に据えて、みてみよう。

 天安門事件のときから30年間、中国は目ざましい経済発展をとげた。それにつれて、国民の政治行動が大きく変わった。

 デモの参加者をみてみよう。天安門事件のときは、若者だけでなく、大勢の北京市民も加わった。また、デモは天安門広場だけではなく、地方の各地へ広がった。
 これと比べて香港デモはどうか。香港市民の中には、デモに反対する人も少なくない。また、デモが全国に広がらない。
 このように、香港デモの広がりには、限界がある。

 さて、先日、NHKテレビで「巨龍 中国の"素顔"を探して」というドキュメンタリー番組の再放送を見た。キャスターは、鎌倉千秋と関則夫の両氏で、初回は6月9日に放送したものである。
 香港デモについての報道の多くは、デモ側と政府側のどちらに正義があるか、という浅薄なものである。しかし、このドキュメンタリー番組は違っていた。中国社会の深部を見つめ、若者の心の中にまで立ち入って報じていた。だから、香港を通じて中国社会の変化を、その根底から抉り出すことができた。
 その中で、ある北京の若者は、「政治のようなセンシティブな話題でも話すことはできる。しかし、ネット上で公にはしない」といっていた。
 ネット上で政府批判をすれば、政府に傍受され、それが政府を転覆するための政治活動と曲解されて、罪を問われるという状況が、いまの中国にある。ここには、言論の自由はない。北京の若者は、このことを、いいたかったようだ。

 中国政府はいま、ネットの傍受だけではなく、国民の日常的な行動をカメラで監視できる。そうして集めたビッグデータを、人工知能で瞬時に分析できる。
 つまり政府は、いつ、誰が、何処で、どんな反政府運動を行ったか、がすぐに分かる。そうした陰湿な監視社会になろうとしている。
 こうした状況のなかで、中国の若者の多くは政治から離れつつある。だから、香港デモが中国全土へ広がらない。

 天安門事件までは、中国全土で若者が政治の中心部にいた。しかし、それ以後、政治から去ったようだ。
 このことは、日本でもみられる。安保闘争までは、若者が政治の中心部にいて、政治を動かす原動力になっていた。それに労働者や農業者の分厚い支持があった。しかし、安保以後、若者は政治から去った。
 中国の若者も、日本の若者の後を追うようにして、政治に対して、シラケテいくのだろうか。
 もしも、そうなったとしたら、日本にも中国にも未来はない。
 こうした状況の中で、中国の多くの若者は、いったい、どうするのか。シラケつづけるのか。
 中国政府は、言論の自由を制限する理由を、「核心的利益」などいう一言ですませるのではなく、論理的に説明すべきではないか。若者を信じ、膝を交え、腹を割って議論し、たがいに理解しあうべきではないか。
 そうすれば、中華民族の偉大なる復興へ向かう、大きな一歩になるだろう。
(2019.10.21)

(前回 野党の国会戦略

(前回 香港が問う自由と民主主義

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