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コラム:地方の眼力

【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

2019.11.20 
【小松泰信・地方の眼力】自治からはじめる一覧へ

 「法を犯した芸能人の逮捕に、必要以上に大騒ぎしなくていいです。私たちの暮らしに支障はありません(擁護ではありません)。騒ぐべきは、政治家や特権階級の人たちが法を犯しても逮捕されてない現実にです。私たちや子どもたちの未来に関わってきます」と、ツイッターで発信しているのは東ちづる氏(女優、11月16日)。

◆「大切な県民」とは笑止千万

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生) 西日本新聞(11月18日付)によれば、前回の当コラムで取り上げた「石木ダムを断念させる全国集会in川棚」が17日に700人の参加により行われ、「ダムは治水、利水の両面で全く不要。一日も早く断念させる」という宣言文を採択した。
 翌18日には、反対する住民が同宣言文を携え長崎県庁を訪れ、「河川改修など他の方法をやり尽くしてからダムを検討するべきだ」と訴えたことを、同紙の夕刊が伝えている。
 「行政代執行は選択肢から外さない。ダムで恩恵を受ける川棚町の人たちは大切な県民だ」とは、対応した副知事の弁。
 「そんな態度だから話し合いができない。私たちは県民ではないか」と住民側は反発。会場には怒号が飛び交う。
 根拠喪失のダム建設で、住民の生活とふるさとを平気で破壊する地方自治体のNo.2が「大切な県民」とは、笑止千万。

◆「平成の大合併」がもたらした「心の空洞化」 

 日本弁護士連合会(以下、日弁連)の取り組みが、地方自治のあり方に一石を投じた。
 日弁連は11月6日にシンポジウム「平成の大合併を検証し、地方自治のあり方について考える」を開催し、「合併・非合併市町村の人口動態等の分析」と「現地調査で判明した実態」を報告した。
 朝日新聞(11月7日付)に基づけば、報告の核心部分は次の2点。
(1)合併を選択しなかった人口4000人未満の町村と、それらに隣接し人口規模などが似る合併した旧町村、47組を比較した結果、2005年(3組は00年)と15年の国勢調査に基づく人口の減少率は、43組で合併した町村の方が高かった。
(2)人口に占める65歳以上の高齢者の割合(高齢化率)の上昇幅も41組で合併旧町村の方が高かった。
 日弁連は、合併効果に疑問を抱かせる結果の一因に、「旧町村地域の役場機能の縮小」をあげている。
 合併した旧町村は、和歌山県の旧本宮町(現・田辺市)を除く全てで、役場の職員など公務員人口が減少。合併しなかった旧町村では、18町村しか減少していないからである。
 しかし、65歳以上の高齢者数がほぼピークを迎える40年ごろを見据え、安倍晋三首相の諮問機関「地方制度調査会」(以下、地制調)では、隣接する自治体が連携、補完する「圏域」構想も検討が進んでいる。
 「新たな自治のあり方の議論の前に、平成の大合併の検証をするべきだ」とは、調査を行った日弁連の小島弁護士。
 「仮に国が合併した自治体に検証を求めても、失敗だったと認めにくい。検証は難しいだろう」とは、総務省幹部。
 いずれにせよ、役場の喪失が、住民の「心の空洞化」を加速させたことは間違いない。

◆「圏域」構想への危惧
 
 朝日新聞(11月12日付)の社説は、平成の大合併において、「アメ(合併すれば得られる有利な特例債)とムチ(将来の財政不安の指摘)で、自治体に行財政の効率化を迫った」ことから、「政府には合併の功罪を検証する責任がある」とする。
 そして、「実態はどうなのか。福祉や教育、産業や観光振興、議会、財政指数など幅広く、政府自身の手で検証」し、「その結果に基づいて自治体の将来像を探れば、地方制度づくりに説得力が増す」とする。
 「圏域」構想に関しては、すでに小規模自治体に大合併と同様に、切り捨てられないかとの懸念が広がっていることを指摘し、「自治体の将来像は政府の姿とともに構想すべきだ。その際には地方分権が欠かせない。この視点に乏しい地制調への不信感も各地にある」ことを伝えている。
 信濃毎日新聞(11月8日付)の社説は、「圏域」構想に関して、「事実上の合併に近い。人口減少に合わせて機能や権限を中心部へ集約する発想」とするとともに、「東京一極集中の是正に向けて全国82市を国が重点支援する『中枢中核都市』も、同じ方向を見ている」とする。
 「中心部にモノやカネを集中させても、より大きな中心へ人口が流出する流れは止められない。東京一極集中が解消しないのも、地方行政が合理化、効率化でやせていくことが一因」とした上で、「実情は地域で異なる。『平成の大合併』を教訓にすれば、地域のコミュニティーをできるだけ維持する視点は欠かせない。国は一律的な施策を押しつけるのでなく、自治体と住民が主体的に描く未来像を多面的に支援すべき」ことを強調する。
 高知新聞(11月17日付)の社説も、「平成の大合併」の功罪について、「(国は)きちんとした検証を怠っているのではないか。少なくともデータや現地調査などを用いた、総合的な検証が行われた形跡はない」とし、「検証で得られる教訓なしに、地方自治体の未来図は描けない」とする。にもかかわらず、国が「圏域」構想に進もうとしていることに疑問を呈している。
 「圏域」構想が、自治体側と十分な対話のないまま出されたことから、地方自治体の側には、市町村の独自性が維持できない懸念のほか、国主導で議論が進むことへの警戒感があり、理解は得られていない、とする。さらに、「圏域は地域の中心的な都市と周辺市町村で構成する。中心市はいいが、小さな自治体が衰退」することを危惧している。

◆売国・亡国の2887日
 
 信濃毎日新聞(11月20日付)の社説は、安倍首相の通算在職日数が憲政史上で最長となったことを取り上げ、「超長期政権は安定的に政策を打ち立て、直面する課題を解決できたはずだ」が、実情を見れば「実績を残してきたといえるのか疑問」とする。
 「少数意見に耳を傾け、話し合いで妥結点を探る民主主義の過程は軽視」「説明責任を果たさない姿勢は、現在問題となっている『桜を見る会』に対する自身や事務所の関与でも共通している」と指弾する。
 「このままでは歴史に残るのは、在職日数だけになりかねない」と心配するが、国民を愚弄し、倫理観を喪失させ、政治への諦観を蔓延させ、この国の限りある有形無形の資源を他国に売り渡し、戦争への道までも拓いた、許しがたき売国かつ亡国の首相として、歴史に残ること間違いない。
 だからこそ、「自分たちのことは自分たちで処理する」という「自治」を取り戻す、地道な努力を積み重ねていかねばならない。
 「地方の眼力」なめんなよ


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