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【森田実の政治評論】「国政・税金の私物化」で窮地に立つ安倍総理による解散はあるのか?2019年11月29日

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【森田実 / 政治評論家・山東大学名誉教授】

権力は腐敗の傾向がある。
絶対的権力は絶対的に腐敗する。(アクトン)

 「安倍総理による国政私物化」の話は、国民の間に広がっています。
 安倍総理が総理在任期間最長を記録したとき、安倍総理の「国政・税金の私物化」のニュースが広がったことは、偶然とはいえ、独裁的長期政権は腐敗するという歴史法則を見事に証明しました。
 第二次大戦が終わってから75年が経ちました。私は、この間の政治を見つづけてきました。吉田茂、池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三の各内閣が長期政権といわれました。いずれの内閣も、最終段階で腐敗堕落が目立つようになりました。 
 吉田茂総理はワンマン宰相といわれ、独裁的に振舞いました。新聞記者、野党議員を見下し乱暴な態度をとりました。野党議員が国会質問をしているとき「バカヤロー」と呟き、国会は大騒動になりました。
 池田勇人内閣は、他の長期政権に比べると政治権力を抑制的に行使しましたが、後半期には側近の汚職事件が起きました。
 佐藤栄作内閣は、安倍晋三内閣が最長在任記録を記録するまでの最長内閣でしたが、終盤には傲慢になり、新聞記者や野党議員や反主流議員を見下しました。側近の汚職事件も起きました。
 中曽根康弘内閣も最後には言動が乱れ、国民から遊離しました。汚職事件も起きました。
 小泉純一郎政権は最終段階では強権的に振舞い、乱暴な政治に走りました。郵政民営化は日本の国益を傷つけ、米国政府と大企業に奉仕しました。
 安倍晋三政権は最終段階で「国政の私物化」「税金の私物化」という究極の堕落政治を行なってきたことが明らかになりました。
 戦後日本の長期政権には、もう一つ共通の性格があります。それは米国政府に忠実すぎるほど忠実だという性格です。政権末期に米国に奉仕しました。従米に抵抗した政権は短命でした。
 戦後最も従米的政権は岸信介政権でした。岸内閣は中期政権で終わりましたので、長期政権としては扱いませんでしたが、米国政府から最も信頼された政権でした。岸信介氏は総理退陣後も日本政界に隠然たる影響力を持っていました。岸は共和党と強いパイプを持っていました。従米主義の中曽根政権を成立させるため、政界の裏側で工作した中心人物でした。対米追従主義と憲法改正に最も熱心な政治家でした。現在の安倍晋三総理は岸政権の継承者です。
 戦後75年を振り返りますと、長期政権は日本国民のためにならないことがはっきりしています。池田を除く、吉田、佐藤、中曽根、小泉、安倍5代の長期政権の三大特徴は、従米主義、傲慢、腐敗でした。権力者は強大な長期政権を樹立した結果、総理は傲慢になり、腐敗しました。
 安倍政権の「国政の私物化」「税金の私物化」は究極の政治腐敗です。



◆野党は大同小異の結束できるか

 第二次安倍政権の初期に、安倍総理が窮地に立たされたことがありました。「森友・加計学園問題」です。安倍夫人の関与が、世論の関心を高めました。この時は、主として安倍総理と一体化した官僚の力で乗り切りました。
 今回は安倍総理自身で自分を守らなければなりません。安倍夫人の関与についても安倍総理が説明責任を果たさなければなりません。
 それ以上に安倍総理にとってきびしいことがあります。安倍総理の「国政・税金の私物化」は、国民にとってわかりやすい話です。「安倍の国政・税金私物化」という言葉は国民の間に急速に広がっているのです。
 安倍政権のこの窮地を打破する方策として、年末または年始に衆院を解散する可能性がある、との話が永田町で広がっています。自民党内だけでなく政界全体の動きに影響を及ぼし始めています。
 どうなるでしょうか。安倍総理側近たちは野党の動きに目を光らせているそうです。統一野党をつくることができるか否かを注目しているのです。
 今までどおりの分裂状況が変わらなければ、安倍政権の衆院選勝利は固いとみられています。しかし「安倍・国政私物化阻止国民連合」のような大連合が結成されて衆院選にのぞむことができれば、安倍政権にとって脅威となるおそれがあります。
 野党各党が小異を捨てて大同につくことができるか、それとも今までどおりの分裂状況をつづけるかが、安倍総理の解散の決断を左右するかもしれません。年末に向かって政局は緊張感を高めていくと私は予想しています。

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