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【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(159)「無用之用」と「不便益」2019年12月6日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 老子の言葉として知られているものに、「無用之用」がある。一言で言えば、一見、無用に思えるものが実はかなり役に立つというものだ。似たような言い回しには「無駄の効用」、最近では「不便益」という言葉も知られるようになってきた。

 老子の言葉は『老子道徳経』第11章にある。全文を記すのはかなりマニアックになるのでデフォルメして言うと以下のような内容である。

 自転車の車輪を想像してほしい。中心とそこからいくつも出ているスポークがあり、周りにチューブとタイヤがある。スポークとスポークの間には何もないからこそ、全体として車輪が車輪として成り立っている。(原文の「輻」や「?」などという漢字は現代日本語では使用せずほとんどお目にかからない。ちなみに「輻」は「ふく」でスポーク、「?」は「こく」で車輪の中心にありスポークが集まる部分のことである。)
 また、部屋を想像してほしい。部屋はその中に何も無い空間があるからこそ部屋としての役割を果たす...というような文章が原文である。

 これらを踏まえ、最後の部分で、「故有之以為利 無之以為用」となる。これを書き下し文にすると「故に有の以って利を為すは、無の以って用を為せばなり」となる。現代語に直せば、「つまり、何か(形があるもの)が有ることにより利がもたらされるということは、何も無いところ(形がないもの)に一定の役割があるからである」となる。禅問答のようだが、「あるものや人が目立つのは目立たないものや人のおかげ」ということだ。
 漢文というのはやっかいなものだが、それを現代生活の様々な場面に置き換えると意外と役立つ内容が多い。最近の受験勉強では国語は現代国語と古文のみで良いという主張が強く漢文は存在感が少ないが、実生活の知恵や歴史、哲学のエッセンスを満載していると考えれば、その使い方は無限に広がる。まさに「無用之用」である。
 
 もっとも、老子の「無用之用」という言葉は知らなくても、「無駄の効用」は良く知られているし、最近では「不便益」という言葉も広く使われている。この言葉を広めた研究者は文系ではなく理系の研究者(筆者が知る限り、京都大学の川上浩司教授、『不便益のススメ』などの著作がある工学系研究者、専門はシステムデザイン)である。
 本来なら合理性や効率性を徹底的に追及するはずの工学系研究者があえて「不便益」、つまり「無用の用」を追求しているのも興味深いが、それ以上に、恐らく現代社会には「効率性」や「合理性」に一定の評価を与えつつも、それと真逆な「無用の用」や「不便益」に価値を感じる人も多いということを鋭く感じ取ったのではないだろうか。
 
 「24時間サービス体制からの脱却」という点では企業経営も同じである。いつ顧客が来ても対応可能なように24時間体制で営業しているのは確かに便利だが、実際に運営する方は大変だし、光熱費や人件費など必要経費もバカにならない。全てのコンビニが一斉に24時間営業するのではなく、本当に24時間対応が必要かつ需要のあるところでのみ実施すれば十分である。最近、こうしたことがようやく多くの経営者、そして顧客にも理解されてきたようだ。
 
 社会と我々の生活を維持していくためには、「合理性」「効率性」を徹底的に追及するだけではなく、仕組みの中にあえて不自由さや不便さを残しておいた方が良い。「遊び」と言い換えてもよいかもしれない。そういえば、筆者の古巣の先輩達を見ても「遊び」の幅のある人はどこかで人生の「無駄」を楽しんでいた人が多かったと思う。


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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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