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コラム:地方の眼力

【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

2020.01.08 
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 年は明けたというのに、「まだ2019年は終わっていない」とでも言いたげに、ゴーンゴーンと五月蠅きこと限りなし。

◆人口減少問題は平成の積み残した課題

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生) 2019年どころか平成からの積み残した課題がまだ残っている。その最たるものが加速する人口減少問題と指摘するのが、愛媛新聞(1月1日付)の社説。「税収の落ち込みや社会保障制度の崩壊、働き手の減少、市場の縮小...。長期間、各方面で影響が出ることは確実だ」とする。そして「もちろん国も、手をこまぬいていたわけではない」と一呼吸置き、「それでも若い世代が結婚し、子どもを産み育てようとする機運につながらないのはなぜか。それは若者の不安・不信が解消されないからだ。......若者のニーズに応じた具体的な仕組みづくりを急がなければならない」と訴える。
 「人口減に歯止めをかけるには長い年月が必要」としたうえで、「安心して豊かに暮らせる地域社会を築き上げていくこと」を提案する。そして、愛媛県において「住民主体の挑戦が芽吹き始めた地域」の事例を紹介し、「この芽をさらに大きく太く育て、広げていきたい。地域の特性を生かし、住民の力を発揮すれば、人口が減っても幸せに生活することは可能なはずだ」として、愛媛で人口減を克服するモデルケースをつくり、全国へ発信することを提案している。
 「地方は人口減、少子高齢化にあえいでいる」と危機感を隠さない秋田魁新報(1月1日付)の社説は、地方創生の羅針盤となる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が第2期(2020~24年度)を迎えるにあたって、政府が力を入れている「関係人口」の拡大に、「すぐに地方の人口増に結び付くわけではないが、大都市圏からの『応援団』が増えることは地方の活性化にもつながる。関係人口を増やすために地道な努力を続けていく必要がある」と、期待を寄せる。
 さらに、「人口減により社会が縮小する中にあって、持続へのキーワードの一つに挙げられるのが『共助』」とし、「地域でできることは住民が協力し合って解決することが重要」とする。
 このように愛媛新聞と秋田魁新報は、地域住民の主体的な取り組みを強調している。
 
◆政府の責任を問う高知新聞

 「安倍政権が『最大の課題』として2014年に打ち出した地方創生の成果を地域に暮らす私たちは実感できているだろうか」ではじまる高知新聞(1月6日付)の社説は、「人口減や活力低下の状況はむしろ加速している。新年に当たり、地域の切実な思いを受け止め、『対等・平等』の立場で的確に地方をサポートするよう国に求めたい」と、政府の責任を強く求める内容である。前述した地方創生戦略の第2期の取り組みに対して、「政府が強調する『関係人口』もよく分からない」とし、「都市部に住み、祭りへの参加や週末の副業などで地域と関わる人のことを指すというが、どのくらいが移住につながるのだろう。できた関係性を移住を含めた地域活性化にどう生かすのか。具体策が見えない」と、率直な疑問を呈している。
 そして、2019年に選出された新知事に対しては、「地域の窮状や思いを......率直に政府へぶつけてほしい」とする。なぜなら、「伝え続けねば、霞が関は『机上の空論』に気づかない可能性がある」からとは頂門の一針。
 さらに、「そうした施策を実行するには財源移譲が重要になる。国と地方の関係を『対等・平等』とした地方分権一括法の制定から約20年。権限の移譲は一定進んだが、肝心な財源移譲の歩みは遅い。政府は『対等』の意味を深く肝に銘ずる必要がある」と、踏み込んだ提案と苦言を呈している。

◆長期的視点が不可欠な移住から定住 

 信濃毎日新聞(1月1日付)の社説は、「東京圏に集中し続ける人の流れを理想的に変えることなどできるのだろうか」との問題意識から、愛知県東栄町において過疎化が深刻な東薗目(ひがしそのめ)区に30年前に移住したプロ和太鼓集団「志多(しだ)ら」が、いかにして地域に認知され、定住を果たしたかを取材し、そこからの教訓を紹介している。
 19歳で入団し現在45歳となった団員によれば、「公演で留守にしがちで、暮らしがあるとは言えなかった」ことから、「最初は移住というより、けいこ場の移動でした」とのこと。ほどなく志多らが倒産し、団員たちは「地域に根差す芸能集団」を目標に据える。練習拠点が廃校であったことから、ゲートボールのために校庭に毎日集まる高齢者たちと茶飲み話が始まる。それを契機に情況は変わり始める。そのうち、地域の祭りの手伝いを頼まれるが、自分たちの舞を奉納したことが裏目に出て、他地区の人たちから反感を買うことに。「雑音は気にするな」と言う、東薗目の人たちに励まされ、その後も参加。町内の見る目が和らいだのは、団員が結婚し、子どもが生まれたころ、とのこと。2010年、NPO法人「てほへ」を発足させた。てほへは住民の交流の場、町の魅力発信の拠点として根を張っているそうだ。
 そして、「東薗目はいま、町内で子どもが最も多い区となった。特異な例に映る志多らの定着も、茶飲み話に始まっている。......そんな当たり前のこと―を、山登りの途中でずいぶん置き去りにしてきたのではないだろうか」として、「人と人との日常の交流を重ね、まちづくりを動かしたい」と、そのあり方を示唆している。

◆田園回帰を喜びたいが喜べない 

日本農業新聞(1月5日付)の1面には、「『田園回帰』着々と」という大見出しで、同紙の独自調査から28府県の移住受入数が過去最高を更新したことを伝えている。例えば長崎県は、移住者を「県と市町村の相談窓口を通じて県外から移住した人」として調べ、2018年度にはじめて1000人を突破したとのこと。県は、16年度に「ながさき移住サポートセンター」を発足させたことなどを、飛躍的な伸びの要因と分析している。
 その長崎県の五島市において、2004年の旧1市5町による合併後はじめて、転入者が転出者を上回ったことを西日本新聞(1月8日付、長崎北版)が伝えている。市があげるその要因は次の2点に整理される。ひとつは、2017年施行の国境離島新法によって、個人事業者や企業が、創業や事業拡大する際に補助金を活用することが可能になり、これが雇用創出となり、転出抑制、転入促進につながったこと。もうひとつが、市独自施策として保育料負担軽減や子ども医療費の助成を行っていること。
 市長が仕事始め式で「まずはこの社会増を定着させたい」と語ったことも紹介されている。
 「こいつぁ春から 縁起がいいわえ」と言いたくなりそうだが、中東情勢がそれを許さない。安倍首相は仲介役などと身の程知らぬ発言をしていたが、中東情勢の緊迫化を受け、中東歴訪の延期を決めたそうだ。じゃぁ、自衛隊の派兵もやめるべし。
 安倍族には人びとや地方が積み上げてきた小さな幸せなど眼中にない。そのことを肝に銘じて、これからも生き抜くしかない。
 「地方の眼力」なめんなよ


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