【JCA週報】松岡公明「プラットフォームと協同組合」2020年2月25日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 本田英一日本生協連代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、2014年春号の巻頭オピニオン「プラットフォームと協同組合」です。
JCAの協同組合研究誌「にじ」は当時JCAの前身である協同組合経営研究所で発行していました。本稿は常務理事であった故松岡公明氏が書いたものです。
協同組合研究誌「にじ」2014年春号「プラットフォームと協同組合」
協同組合経営研究所 常務理事(当時)松岡公明
近年、JA合併、市町村合併による組合員、住民サービス機能の低下問題が指摘されている。一方「私助」「公助」の限界と課題が明らかになるなかで「住民自治」による地域づくりが注目されている。そこでは保健・福祉・医療・子育て・教育・労働・防災・環境・ごみ問題などを切り口にした住民自治の総合的なデザインが課題となっている。今まさに地方自治体、企業、大学、協同組合、NPO、市民が多様に参加、協働する時代へのパラダイム転換が求められているのである。
「無縁社会」「生きにくい社会」の問題が取り沙汰されるなかで、生活現場では地域コミュニティ力の向上が課題である。コミュニティの語源はラテン語の「コム」(一緒に、共通の)と「ムヌス」(任務・義務・贈物)からなる。コミュニティは「一緒に任務・義務を遂行する人の集まり」といえる。コミュニティのデザインは人のつながりや関係性のデザインでもある。関係性を結びなおすことは眠っている「ご近所の底力」を再生することに他ならない。
プラットフォームとは「誰でも入れる『公』の空間の中に信頼しあい、共通のテーマ、目的を持った人間同士がつながれる『共』の空間をつくる場所」と定義される。プラットフォームは従来にないコミュニケーション活動を通じて、今までにはなかった人間関係の相互作用をつくり出し、そこから新たな付加価値を生み出す「創発現象」を引き起こす。いかなる活動・経路をつくればどんな相互作用が生まれるのか、といったことが設計上の課題となる。國領二郎慶応大学教授はプラットフォームの基本的機能として、(1)多様な人間がつながりあうマッチング機能、(2)コミュニケーションによる信用・信頼機能、(3)資源・能力の再編集機能、(4)協働のインセンティブ機能の4点を指摘している。
JAは地域社会の一つの「器」である。地域農業の振興はもとより地域づくりのプラットフォームとしての機能を自ら持ち合わせていると言えよう。協同組合はメンバーシップと組織力によって支えられる。組合員はもとより地域社会とのネットワークを通じて多様な人々・組織との接点をつくり、「次の世代」への支持や共感・共鳴を広げ、メンバーシップと組織力を再構築していくことが「次代へつなぐ協同」の到達点である。協同組合運動による人のつながりや協同の関係性が地域コミュニティの新たなデザイン力となっていくだろう。それこそJAの社会的「器」=プラットフォームとしての役割である。旧JA単位の支店・支所を協同活動でデザインすることは、JAの組織基盤をデザインすることでもある。
組合員による協同活動はJA内部に留まることなく、地域住民・社会との多様な接点をつくりながら協同活動を社会的共通価値とすべく進化、発展させていかなければならない。JAだけでなく地域社会にとっても、相互扶助に基づく協同活動は「戦略」となるからである。協同組合の公器としての機能発揮が将来の組織的、経営的発展を左右する。
協同組合研究誌「にじ」 2014年春号より
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https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
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