【浅野純次・読書の楽しみ】第48回2020年3月16日
◎中山秀紀 『スマホ依存から脳を守る』(朝日新聞出版、869円)
毎日、深夜までスマホでゲームに没頭する子どもが激増しているようです。WHOはゲーム依存症を「ゲーム障害」という名の疾患と認定しました。治療を受けないと治らない重篤な病気だというのです。
著者は久里浜医療センターの精神科医長で、麻薬、酒、タバコ、ギャンブルへの依存症とスマホゲーム依存は全く同じことであると、「依存」の実態を詳細に説明します。
依存物はなぜやめられないのか、スマホ依存症の実態、対策に立ちはだかる壁など、依存症の怖さがこれでもかこれでもかと実例をもって示されて、ひとごととは思えません。
読むほどに子どもがスマホにはまってしまってからでは遅いという気がしてきます。抜け出すことは不可能ではないにせよ、最初が肝心というのは、他の依存症と同じことなのでしょう。
快楽の一方で不快度も増す一方だという依存症の本質には驚かされました。例えば1日15時間スマホをやっている子どもの残り数時間の不快感は強烈なものなのだとか。禁断症状でしょうか。
家庭、学校はもちろん、社会全体で取り組むべき課題だと痛感しました。一斉休校でスマホ中毒の子どもがさらに増えないよう、祈るばかりです。
◎石井一 『冤罪』 (産経NF文庫、902円)
副題「田中角栄とロッキード事件の真相」そのままに、日米を結ぶ陰謀の中で無実の罪を問われた角栄の悲劇を追究して迫力十分です。著者は若くして国会議員となり角栄の最側近として活躍し、その無実を信じて検察と対峙し続けました。
「オヤジ」の冤罪を晴らそうとする執念によって、知られざる事実を収集し、組み立てることによって著者は事件の真相に迫ります。
文庫化するにあたっての収録文も読み応えがあり、奥深い陰謀事件を解明しようとする努力は十分報われていると感じました。要するに米国(特にキッシンジャー)にとって角栄は不愉快かつ目障りな存在であり、日本側にも本丸のP3Cにからむ動き(特に中曽根、児玉)があって事件は成立したのです。
当時の検察と最高裁はとんでもない間違いを犯して角栄を失脚させました。43年後の今、黒川東京高検検事長の人事を見るとき、政治家にとって検察がいかに怖い存在か、ロッキード事件から今回の人事の裏側をうかがうこともできるでしょう。
◎黒澤はゆま 『戦国、まずい飯!』 (インターナショナル新書、924円)
戦国時代からの伝統食の中でもまずそうなものを拾い出して、その調理法を探り、それに絡んだ史実を追ったユニークな本です。
対象食品を並べてみると、赤米、糠味噌汁、芋がら縄、干し飯、スギナ、粕取焼酎、牛肉、ほうとう、味噌。最初の6つは誰も食欲をそそられないでしょう。
著者は単に紙の上の知識だけでなく、素材を苦労して手に入れ、それを古文書などを頼りにいろいろ調理してみて、味見比べを試みます。これだけこだわれるのは立派です。
とても食べられたものではなかったり、煮直したり日干しの仕方を変えたり、塩を増やしてみたり、いろいろやっていくうちに結構いけたりする。その挑戦ぶりには敬意を表したいと思います。
戦場での非常食、信玄や家康など歴史上の人物たちの絡みも面白い。食の歴史を探ることは農と食を考えるうえでも意味あることではないか。そんなことを感じつつ戦国の世に思いを馳せました。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
浅野純次・石橋湛山記念財団理事の【読書の楽しみ】
重要な記事
最新の記事
-
第21回イタリア外国人記者協会グルメグループ(Gruppo del Gusto)賞授賞式【イタリア通信】2025年7月19日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「政見放送の中に溢れる排外主義の空恐ろしさ」2025年7月18日
-
【特殊報】クビアカツヤカミキリ 県内で初めて確認 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年7月18日
-
『令和の米騒動』とその狙い 一般財団法人食料安全保障推進財団専務理事 久保田治己氏2025年7月18日
-
主食用10万ha増 過去5年で最大に 飼料用米は半減 水田作付意向6月末2025年7月18日
-
全農 備蓄米の出荷済数量84% 7月17日現在2025年7月18日
-
令和6年度JA共済優績LA 総合優績・特別・通算の表彰対象者 JA共済連2025年7月18日
-
「農山漁村」インパクト創出ソリューション選定 マッチング希望の自治体を募集 農水省2025年7月18日
-
(444)農業機械の「スマホ化」が引き起こす懸念【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月18日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲害虫の防ぎ方「育苗箱処理と兼ねて」2025年7月18日
-
最新農機と実演を一堂に 農機展「パワフルアグリフェア」開催 JAグループ栃木2025年7月18日
-
倉敷アイビースクエアとコラボ ビアガーデンで県産夏野菜と桃太郎トマトのフェア JA全農おかやま2025年7月18日
-
「田んぼのがっこう」2025年度おむすびレンジャー茨城町会場を開催 いばらきコープとJA全農いばらき2025年7月18日
-
全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞を目指す 大分県推進協議会が総会 JA全農おおいた2025年7月18日
-
新潟市内の小学校と保育園でスイカの食育出前授業 JA新潟かがやきなど2025年7月18日
-
令和7年度「愛情福島」夏秋青果物販売対策会議を開催 JA全農福島2025年7月18日
-
「国産ももフェア」全農直営飲食店舗で18日から開催 JA全農2025年7月18日
-
果樹営農指導担当者情報交換会を開催 三重県園芸振興協会2025年7月18日