【リレー談話室・JAの現場から】コロナ禍に思う 農業の価値アピールの機会に2020年4月15日
新型コロナウイルスへの感染(以下、「新型コロナ感染」という)が広まるなか、農業への影響も報じられている。時系列でみると、臨時休校による学校給食の発注キャンセルに伴う「肉・野菜・牛乳余り」に始まり、イベントやセレモニーの縮小や中止に伴う「花余り」、訪日客や宴会(比較的高級なもの)の急減による「和牛余り」、外国人技能実習生の来日困難による生産力不足等へと続いている。
◆余りと不足が同時に
このように「モノ余り」が発生する一方、政治や行政からメッセージが発せられるたびにインターネット上のデマも加わって多くの人がまとめ買いに走り、小売店から食料品が消えるといった「モノ不足」が発生している。そのため、多くの消費者が前記したような「モノ余り」を実感できる機会は少ない。確かに、給食の発注キャンセルが騒動化した直後、行き場を失った食材のセールや無償配布等はあったが、短期間で散発的に過ぎず、そうした動きは、新型コロナ感染のような「クラスター」とはならなかった。
筆者は、約10年にわたり北関東各地で農林水産分野の旬を現場から生中継で伝えるラジオ番組でパーソナリティーを務めている。しかし、新型コロナ感染拡大の影響で1月末から中継を自粛し、スタジオしゃべりを中心としたスタイルに模様替えしている。
もちろん、新型コロナ感染に関連した農林水産分野の話題を中心に話しているが、それだけでなく、休校で在宅となっている子どもたちへの昼食や、外出自粛による巣ごもり消費を意識して、地元産食材を利用した料理のレシピも実演で紹介している。
春の北関東で、いちごやトマト、花きなど施設栽培の生産者や酪畜家には、農作業をしながら聴いているというリスナーも多く、「自らの生産品目を使ったレシピを」とリクエストが寄せられることもある。毎週1品は紹介できるようにしているが、「安くて簡単」なだけでなく、「意外性」や「食育」をはじめ「消費者が産地への理解と共感」を持てるような、いわゆる「オチ」があるような話となるよう心掛けている。
特に、学校給食のキャンセルで大きなダメージを受けた牛乳については、あえて「飲む」ことは避け、より多い消費となるよう、炊飯器だけで調理する洋風炊き込み飯、親子で楽しみながら作れるカッテジチーズ、そのチーズを使ったパスタやオードブルを紹介した。また、栃木県が生産量全国第2位という「土地柄」、冬から春先で乳脂肪分等が比較的多く美味しいという「時節柄」、そして、牛の妊娠や繁殖の仕組で牛乳が生産されているため生産量の増減は容易でないことなどに話題を進めた。これらは、農業界にとって当たり前だが、消費者とその子どもたちには、ほとんど知られていない。
◆将来のサポーターを
新型コロナ感染は、農業にも大きな影響を与えている。前記したように、生産物は「余り」状態で価格も低迷している一方、店頭では「不足」という珍現象となっているが、それらを通して、消費者から農業により多くの注目が寄せられていることも事実だろう。
「ピンチをチャンスに」と言うならば、単純に消費拡大や価格向上といった生産者所得の向上を目指すだけでなく、情報発信など、農業側からのアプローチを通して、消費者、特に、次世代を担う子どもたちから農業への理解を得られるよう目指し、農業に対する「将来のサポーターづくり」に繋げることも必要ではないか。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2025年7月8日
-
なぜ米がないのか? なぜ誰も怒らないのか? 令和の米騒動を考える2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【立憲民主党】「食農支払」で農地と農業者を守る 野田佳彦代表2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【自由民主党】別枠予算で農業を成長産業に 宮下一郎総合農林政策調査会長2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【日本共産党】価格保障・所得補償で家族農業守る 田村貴昭衆議院議員2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【れいわ新選組】農業予算倍増で所得補償・備蓄増を やはた愛議員2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】集落と農地 地域の要 営農事業部門・広島市農協組合長、広島県農協中央会会長 吉川清二氏2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】若者を育てる農協に 営農事業部門・北海道農協中央会前会長、常呂町農協前会長 小野寺俊幸氏2025年7月8日
-
トランプ政権の移民摘発 収穫できず腐る野菜「農家に大きな打撃」2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】常に農協、農家のため 営農事業部門・全農鳥取県本部上席主管 尾崎博章氏2025年7月8日
-
150年間受渡し不履行がなかった堂島米市場【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月8日
-
2025参院選・各党の農政公約まとめ2025年7月8日
-
米価 6週連続低下 3600円台に2025年7月8日
-
【JA人事】JAかながわ西湘(神奈川県)天野信一組合長を再任(6月26日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAえひめ中央(愛媛県)新理事長に武市佳久氏(6月24日)2025年7月8日
-
岡山の農業を楽しく学ぶ 夏休み特別企画「食の学校2025」 JA全農おかやま2025年7月8日
-
農業高校生研修を開催 秋田北鷹高等学校、増田高等学校の生徒が参加 JA全農あきた2025年7月8日
-
「にいがたフルーツプレゼントキャンペーン」 クイズ正解者5人に「新潟県産もも5kg」 にいがた園芸農産物宣伝会2025年7月8日
-
JAたまな管内でハウスミカン「レギュラー」出荷始まる2025年7月8日
-
500円で至福の1時間 7月17日に「国際協同組合デー記念ワンコインコンサート」 三重県協同組合連絡協議会2025年7月8日